#112 管理頭脳はドラゴンの夢を見るか? 2
「おにーさんが変わり者?」
俺自身は変わり者ではないと思っているんだけどなぁ。
ちなみにポーラの端末を通じて俺は件の少女と会話を始める。
「まあいいんじゃない? 類は友を呼ぶっていうよ」
イヤな世の中だな。
まあ先に自己紹介をさせてくれるかな、俺は宇宙船イザヨイの船長をしている日下部晃という。
「初めまして、ボクはレーティア」
12、3歳くらいの真っ赤な髪をしたボクっ娘である。
表情豊かで妙に目に力を感じる。
「というか、おにーさんも遺伝子異常?」
遺伝子……、ああ老化のことか。
まあ似たようなもんだ。
……って「も」っていったか?
「そうだよ。うちのオババも遺伝子異常でさ。なんかそれだけで話が合うんじゃないかな?」
じゃあ合格ということで。
「いやまあ、僕も少しは仕事しておかないと怒られるから変わり者かどうか話させてよ」
なんだろう、こんな認められたくない会話って初めてなんだけど。
「まあそうだろうね。てか素体の人形が欲しいんだって?」
ああ、うちの管理頭脳がゲンとかいう職人が作ったのが欲しいと言い張ってな。
「ゲン爺はいいの作るからねぇ、見る目あるよ」
そりゃどうも。
「スペアも2体になったし、部品取り用の作りかけもあるから1体くらいは持っていってもいいんじゃないかとは思うんだけど」
スペア?
今使ってんのか?
「ああ、気が付かない? 僕は管理頭脳だよ」
ああ、そうなのか?
ほんとだ、出来がいいな。
特に目なんかがすごいな。
人形の目ってのは怖いけど、お前のは人のに近いよな。
そりゃあカグヤが欲しがるわけだ。
「何? 反応薄くない? もうちょっとびっくりしてくれなきゃつまんないよ」
いや、そんなこと言われても2度目だしなぁ。
「なんだよ、2度目って。僕のインパクトが霞むくらいの出会いがあったっての? 誰だよその泥棒!」
泥棒なのかな?
「泥棒だよ、僕のインパクト返せ!」
なるほど、そういう考えもあるのか。
まあいいや、カグヤ、通信に出ろ。
レーティア、これがお探しの泥棒猫だ。
「船長、それは意味合いが違いませんか?」
大丈夫、知っている。
向こうがボケてきたからにはこっちもボケて返したい。
「難儀な性格ですね。よくそれで自分は変わり者じゃないと言い張りますね。船長が変わり者でも私まで巻き込まないでほしいです」
さっき俺もレーティアにそう言ったら類は友をって言われたが?
「まあ、船長の場合ここにいる原因の方とそうなのだと思いますが」
俺はお前のことを言ったつもりなんだが、大元と類友だと言われるとちょっとショックで落ち込むわ。
立ち直るまでレーティアと話しておいて。
「現在進行形でしてますよ」
へ?
「私たち管理頭脳は人間のように言語でやりとりするよりデータを情報連結した方が速くて、言語齟齬もありませんから」
なるほど、そんな機能があるのか。
で、レーティアがフリーズしているように見えるけど
「スペックの差です。私がなんだか知っているでしょう」
ドラゴンでした。
「おじさんスゴいね、カグ姉さま、半端ないって」
カグヤが姉さま扱いで俺はおじさんにランクダウン。
「カグ姉さまは少し雑に扱えばいいって言ってたけど?」
後で叱っておくよ。
とはいえブラック企業に長年勤めているとカグヤ程度の俺への対応は何の痛痒もないんだがな。
罵詈雑言をジョークと割り切れなきゃクズノミヤでは早々に鬱になることだろう。
「おじさんの変わり者エピソードは色々聞いたからオババに会わせても大丈夫そうなんだけど、でも困ったな」
お前の困ることより、なに吹き込まれたのかが気になるんだけど?
「ウチのオババって管理頭脳の研究家なんだよ」
らしいな。
「カグ姉さまなんか見た日には即座に分解しようとするよ」
そいつは困る……のか?
「困ります。というかごめんです、いろいろな意味で」
まあドラゴンだしなぁ。
隠しておくのが無難だろう。
ではどうする?
「基本カグ姉さまはオババの前に出ない。でるなら普通の管理頭脳のフリをする、がいいかなと」
まあその辺が無難か。
「そうですね、もともと変わり者の相手は船長の役目ですしね」
俺、お前のために交渉するのにその言い方ひどくない?
「信頼の証ですよ」
随分と薄っぺらい信頼だな、おい。
いつも応援ありがとうございます。
1人目の新キャラの登場です。
正体はもうちょい引っ張ろうかとも思いましたが、すぐばれそうですし、あまり意味もないのでこんな形で。