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#111 管理頭脳はドラゴンの夢を見るか? 1

「船長、艦橋に来てください」


 惑星フィ=ラガに到着してまだ1日しか経っていない。

 ポーラは現在地上に降りて、素体を手に入れるべく現地に向かっている。


 というのもカグヤが求めた素体を作る職人がすでに亡くなっていたそうだ。

 カグヤは代替品で良さそうなものを探しつつ、ポーラに現地に行ってもらい、売れ残りの在庫もしくは譲ってくれそうな人がいないかを確認に行っている。

 

 そんな中、俺は平常運転で引きこもり中。


「バカなこと言ってないで早く来てください」


 トラブルはごめんなんだけど、トラブルがあったから呼ばれたんだろうなぁ。


「トラブルだって察しているのに何でそんなに呑気なんですか?」


 トップが慌てても仕方ないからな。

 堂々としておかないと。


「堂々とするならせめて見える場所でしてください。引きこもっていると現実逃避しているのではと疑います」


 残念なことにそれに言い返す言葉がなかった。




「ではポーラ、最初から説明を」


 艦橋に到着して椅子に座るやいなや、モニターの前で待機していたポーラから説明が開始される。


「はい。私はカグヤさんのおっしゃった工房に行ってみました。亡くなったゲンという職人のお弟子さんがいらっしゃいましてお話を聞かせてもらったのですが」


 働かなくてもいい世界だというのに、何かを作る職人がいるってのも俺的には納得のいかないものなのに、弟子までいるというのか。

 とはいえ地球の徒弟制度とは違うのだろう。

 日本だと一人前になるまでは稼げなくて貧しい生活で大半はそれに耐えれず辞めていき、後継者がいなくなるというイメージだが、衣食住は保証されている世界だと技術の継承は趣味の領域なのだろうか?


「亡くなる前に残していた遺言で、素体の人形で買い手の決まっていないものと製作途中のものは昔別れた元妻に譲るとあったそうなのです」


 ちなみに聞くが働かなくてもいい星では死後の財産分与ってのはどうなるのだ?


「相続できる人間という意味では地球と変わりませんかね、配偶者、子供。ただ長命ゆえに孫ひ孫玄孫といった感じで増えていきますので近親者が優先されます。それよりも優先されるのが遺言ですね」


 遺産欲しさにドロドロの争いとか遺言の改ざんとかは?


「ドラゴンを滅ぼす人種はそういうことでも争いの種にするのですね」


 俺の言葉にカグヤは呆れた顔でいう。


「身近に管理頭脳がいますのでそれに伝えておくと改竄されることもありません。証拠能力も十分です。ですが一般的にその程度のことで争いませんよ」


 金で争うのは地球だとよく聞く話だが、「その程度」って言われるのは環境に差がありすぎだろうよ。

 

「あと相続税もありませんので財産があればまるまるもらえます。ですが住むところが国が用意した部屋だったりするとその部屋は国に返却されます」


 そっか、税金もないんだったな。

 働かなくてもいい、金に苦労しない。

 祖先がドラゴンを倒したばかりに地球は地獄と化したのだろうか?



「話を続けますね。職人さんには150年くらい前に別れた奥様がいたそうです」


 150年前か。

 年数で聞くと随分な響きを感じるな。


「お二人の間にはお子さんがいたそうですが、理由はわかりませんが幼くして亡くなっているそうです。職人さんにはご兄弟もおらず、遺言が発見されたことですんなりと遺産は引き渡されたそうです」


 奥さんも拒否はしなかったんだな。


「別れたとはいっても不仲で別れたようではないみたいですので。お互いが仕事に没頭するために夫婦生活は邪魔になったのではないか、という話です」


 そんなもんかね。


「で、私はその元奥様、ヨミ博士のところに向かいました」


 博士?


「管理頭脳の研究をなさっている方だそうです。少し風変わりな管理頭脳を作るということで有名なようです」


 旦那が管理頭脳の素体で奥さんがその管理頭脳を作っているのか。


「私が訪ねると少女が対応してくれました。素体の人形を売ってほしいとこちらの要望を伝えますとその方は『ウチのオババは偏屈な変わり者でね、おねーさんみたいな普通のいい子ちゃんだと話も聞いてもらえないよ』と」


 それは困ったな。

 てかその子は孫なのか?


「申し訳ありません、そこまでは確認していません」


 いや、かまわない。

 問題はどうするかだが?


「ええ、ですので私は、『ではこちらの変わり者相手の専門家の人間と通信をつなぎますので取り次いでもらえないでしょうか?』と言いました」


 ……おい。

 その変わり者相手の専門家って俺のことか。


「ポーラ、ナイス判断ですよ。そういうのを対応するために船長がいるのですから」

「そうですよね、得意分野ですよね」


 お前ら、俺を何だと思っているんだ?




本日より新章の開幕です。


作者的には不安の開幕ですがw

とはいうものの2つ考えた結末をどちらにするか今日ギリギリまで考えました。

最近の感想を見ると思うところもあったのですが、初志貫徹でいこうと思います。

多分こちらの方が収まりがいいはず、今後のことはさておき。


腹をくくってこれから先を書いていきます。



ちなみにヨミ博士と聞いて気が付いた人はそれが正解です。



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