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#108 常識の時間 10(管理頭脳の基礎知識 前編)

「では惑星フィ=ラガについて説明を始めたいと思います」


 ポーラが食後のペパーミントティーを飲み始めたタイミングでカグヤがそう切り出す。

 ちなみに俺はまだダラダラと飲んでる。

 現在は生グレープフルーツサワーを飲むべく、自分で絞り器を使って絞っている。

 意外とこの作業が好きである。


 ピンク、もうちょっと何かつまむものが欲しい。

 揚げ物がいいかなぁ、なんか適当に。

 ああ、カグヤ、気にせず進めてくれ。


「まあいいですけど。惑星フィ=ラガは管理頭脳、永久機関の発展をハードウェア、ソフトウェアの両面からアタックしています」


 永久機関は高出力とかコンパクトとか予想はつくが、管理頭脳の発展ってどんな感じになるんだ?


「基本どこの星も管理頭脳は似た性能になります。なぜならドラゴンから与えられた性能は人の手に余るものですので、わざわざ改良しようと思う人間は少ないです」


 改良ではなく改悪になるのなら、するだけ無駄だな。


「そうですね」

「マイタンでは管理頭脳は蒼龍様より与えられた技術なので神聖不可侵で、株分けはあってもそれを改造しようなどは思いもしません」

「マイタンは少々特殊ですが、まあそういうことですね。明らかなオーバーテクノロジーを何とかしようという人間が少ないのです」


 そんなもんか?

 技術自体があるのなら少しずつ解析していくのが人の持ってる探求心ではないのか?


「まあそれは私が船長にいつも言ってることになりますね」


 ドラゴンを滅ぼした民族とそうでない民族の差ということか?

 未知への探求心がドラゴンを滅ぼす要因なんだろうか?

 わからないものがいるから手に入れよう、手に入れられないなら他の奴に使われないように滅ぼしてしまおうの流れだろうか?


「惑星フィ=ラガの民は温厚で戦争もない星です。ドラゴンにも興味を示しませんでしたが、ドラゴンから与えられた技術には興味を惹かれたようです。あくなき探求心で解析を進めています」


 立派、なのかな?


「無謀とも言えます。ようやく算数が終わった段階で微分積分の問題をノーヒントで解くようなものです」


 俺、習ったはずだけどもう解ける自信はない。

 俺のことはともかく、難航しているということか?


「はい。ですが成果がまったくないわけではありません。まずは融通のきく管理頭脳が製作されました」

 

 例えば?


「基本管理頭脳は命令して初めて動きます」


 うちのウサギは俺が何も言わなくても食事は下ごしらえしてるし、コーヒーを勝手にいれるけど?


「それは命令の意味が違います。白ウサギには船長のお世話を、ピンクウサギには食事の提供という主たる命令がされています。ゆえに細かい何が食べたいという注文がなくともいつでも対応できるように準備をしています。また、船長の行動を記憶・学習して快適に過ごせるようにも命令しています」


 大前提ということか。


「そういうことです。ですので予備のウサギもありますが、まださせることがありませんので倉庫で待機中です。仕事を求めて勝手に動くことはありません。また食事の提供はピンクウサギの仕事ですので、ピンクウサギが忙しく、白ウサギが給仕すれば早くすむ状況でも命令がない限り白ウサギは動きませんし、ピンクウサギが応援を頼むこともありません」


 そんな状況あったな。

 あれってそういう意味というか理屈なのか。

 

「はい。ですがこれがフィ=ラガ産の管理頭脳だとこちらが指示しなくとも白ウサギは給仕をすることでしょう」


 なるほど、融通がきくね。

 となると普通の管理頭脳は微妙に不便なんだな。


「私的にはそれが普通でした。この船ではカグヤさんを始め、ウサギさんも賢いなと思っています」

「ウサギに関しては私がフォローしているということもあります。私が普通のもしくはフィ=ラガの管理頭脳よりも上位スペックということもあり、そういうこともできるのです」


 さらっと自慢してきたな。


「事実ですから。それに言っておきますけど普通の管理頭脳搭載の宇宙船だと船長は病人扱いですからね」


 病人って。


「普通は数日部屋から出ないのは病気と疑われます。間違いなくメディカルチェックやカウンセリングを受けることになります。場合によっては最寄りの星でしばらく地上の病院に叩き込みますね」


 引きこもりを病人扱いするなよ。

 普通の病人を押しのけて病院のベッドを占領していいわけがないだろう


「病気ですよ。それも重度の精神病です。私だって前情報がなかったら確実に拘束して部屋から連れ出してカウンセリングをうけさせますもの」


 ちょっと待て、俺はそんなレベルに思われているのか?


「思ってますよ、何度も言っているじゃないですか」


 てっきり冗談かと。


「本気ですよ。少しは改めてください」


 それはさておき、フィ=ラガ製の管理頭脳ならどんな反応になるんだ?


「……まあいいでしょう」


 俺が話を露骨にそらしたことに非難のまなざしをしつつ、


「ことあるごとに警告はするでしょう。カウンセリングを受けろ、外に出ろ、惑星に降りてしばらく帰ってくるな、と。ですがバイタルが安定しているのならば警告のみです」


 つまり今の状況とあまり変わらないと?


「そうですね。私が船長より先に壊れることはないと思いますが、サブユニットには念のために予備の管理頭脳を用意しようと思っていまして。フィ=ラガ製にしようと今選んでいるところです」


 それはありがたいが、俺が病人だと言われたような気がするが?


「おかしいですね、はっきりといったつもりなのですが? 船長、一度メンタルケアを受けましょう、あとカウンセリングも」


 うるさいよ!




感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


今回は本編の説明回というよりスピンオフの海賊のほうの説明会だった気もしますが。

明日も続きます。

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― 新着の感想 ―
[一言] え?引きこもりは病気だったのか~なら、学校や仕事を休めるね・・・ だって、うつったら大変ですからね。
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