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#107 惑星フィ=ラガへ

 惑星フィ=ラガに通じるゲートに到着した。

 今回はゲートアウト後、7日ほどの距離ということなので、目立たないように速度を落として突入することになった。


 10%くらいでいいのか?


「それでも平均の倍以上になりますが、まだ常人の許容範囲だと思われます」


 俺を常人ではないように言わないでほしいもんだ。


「この速度でも私はできそうな気がしないんですけど?」

「ポーラ、落ち着いてください。これはまだ人間の到達できる数値なんですから。まずは常識範囲の最高数値を見てほしいと思うのです」

「……わかりました」


 なんかひどい言われようだな。

 速度を落とすことでポーラにゆっくりと説明しながらゲートに突入する。

 シミュレーションも大事だが本番もきちんと見せておく必要があるとカグヤは言うが、本番もシミュレーションとなんの代わりばえもないけどな。

 本番も練習と同じ気持ちで挑めばいいと思うんだが?


「そんなものですか?」

「誰もが船長のように図太い神経だとは思わないでください」


 俺も繊細なつもりなんだが?


「繊細な人は部屋に引きこもりません」


 見解の相違だな、繊細だから傷つきたくない。

 ゆえに殻にこもり、部屋に引きこもるのさ。


「傷つけたくないからと言うのであれば、私も少しは同意するところがあるのですが」


 思い当たる節がないとは言わない。

 とりあえず2つある。


「私的には4つですが?」


 さっきから見解の相違が続くがまあいいだろう。

 結果的にそうなったが、自衛のためなので許していただきたい。

 過剰防衛かもしれないが、叩き潰さないとまた攻撃されるかもしれない。

 またそうすることであいつには関わるなと思ってもらいたいものだ。


「そうは言っても外に出て色々交渉してもらいたいものです。次の惑星では前にも言いましたが、入手したいものがあります。くれぐれもよろしくお願いしますね」


 そういえば目的のある惑星は初めてかもしれないな。


「そうなのですか?」


 とポーラ。

 今のところ目的どころか目標すらない。

 だから希望が有れば何なりというがよい。


「言われてみれば私も宇宙に出るように言われましたけど、それ以外のことは何も言われてません」


 きっと宇宙に出ればスペースオペラって認識なんだろうよ。




 さて次の惑星フィ=ラガのことを聞いておこうか。

 ゲートアウト後のオーバーブーストも入国管理局への対応も済んだので恒例の予習の時間だ。


「お食事しながら……、終わってからでもかまいませんよ」


 魚に夢中になったポーラが話を聞いてくれないことを考慮したようだ。

 まあそれでいいか。



 食堂に移動し、まずは注文だが、


「キャプテン、今日は生にします」


 生といっても生ビールではない。

 最近魚を生で食べる、焼いて、煮て、揚げてという風にリクエストするのでそれに対して俺が何かおススメを頼む感じになったのだが、生って選択肢少ないんだが?

 と悩む俺にピンクがマグロの山かけ丼はどうかといってくる。

 ……この娘、とろろって食えるだろうか?


「それってなんですか?」


 山芋をすりおろしたものって食べれるか?


「……ちょっとよくわかりません」


 経験なしと。

 まあいいだろう、じゃあポーラにはそれを。

 俺はビールと……辛子明太子ができたから味見してくれ?

 じゃあそれを、俺の分とポーラは……。


「なんですか、それ?」


 スケトウダラの卵を唐辛子でつけたものだったかな。

 たぶん辛い。

 パスタの具にした方が食べやすいかな。


「……まずは食べてみたいです。同じものを」


 好奇心旺盛だねぇ。



「……これは」


 真っ赤な明太子を見て少し怯えた顔をする。

 辛そうという気配を感じたのだろうか?


 スジがあって切りにくいと思うが、端の方を少しナイフで切って食べてみな。


「はい」


 ポーラは最近は箸の使い方を練習しているがまだぎこちない。

 言われた通りナイフで切る。


「キャプテン、やっぱり辛いです」


 だから言ったろうと言いつつ俺も食べる。

 こんなもんじゃないかな。

 辛いの苦手なポーラには無理か。


「……そうですね、でも悔しいです」


 正直なとこ食べ物で悔しさを感じないでほしいがね。

 明太子を使ったディップとか、卵焼きに明太子を入れたのもあるな。

 明太子だけでなくタラコを使ったパスタのレシピもあるからそういうのもいいだろう。


「なんと! まだ私にはチャンスがありますか?」


 これってチャンスなんだろうか?

 まあ、俺もさすがに明太子のみだと腹も減るから卵焼きを、明太子とチーズをいれてくれ


「キャプテン、ありがとうございます」


 俺が食いたいんだが……じゃあ二人前。


 それができるまでに運ばれてきたマグロの山かけ丼に怪訝な顔をする。


「これはこの前いただいた海鮮丼の別バージョンでしょうか」


 別バージョンというか別アレンジというか。


「マグロとライスの間にある白いのがさっきおっしゃっていた山芋ですか?」


 そうだ。

 棒みたいな芋でな、それをすりおろすとそんな感じの粘りけのあるものになる


「……では、いきます」


 ポーラにしては珍しく怯んでいるように思える。

 見た目だろうか?

 てか無理に食わなくてもいいぞ。


「大丈夫です」


 覚悟を決めた、そんな表情でスプーンをドンブリに運ぶ。


「キャプテン、これ美味しいです! マグロは味がついてますし、白いのもネバネバしてて、ちょっと怖かったんですけど初めての食感です。美味しいです」


 そりゃあよかった。

 マグロは漬けか。

 白いのはとろろというんだ。


「覚えておきます」


 そうこうしていると卵焼きが運ばれてくる。

 先程の辛さが頭にあるのか、一切れをさらに小さく切る。

 断面から明太子とチーズがとろけだし、食欲をそそる。


「キャプテン、辛くないです。チーズと相まって美味しすぎます!」


 そうかい、それはよかった。


「キャプテンはこんな美味しいものを食べて来たから、お話によく出るブラック企業の苦行にも耐えれたのでしょうか?」


 それは考えたこともない新しい解釈だな。

 日本人に社畜が多いのは、魚に含まれるまだ解明されていない謎の成分でブラック企業への耐性が付いていたから……あるわけないよな。




感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。


明日から前・中・後編で「常識の時間」をします。

説明会ですので飽きさせないようにと小ネタを挟んでいたらかえって長くなりました。


その後木曜から次の惑星にて「管理頭脳はドラゴンの夢を見るか?」編を始めたいと思っています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 日本特有のストレス(士農工商の階級制度や、宗教的な食文化の制限)などが、独特の食文化の基礎を築いたとすれば、その結果である美食によってストレスが解消されるという説も、さもありなん? それでス…
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