#105 環境適応力(ポーラ)
俺よりもポーラの適応力を気にした方がいいんじゃないか?
「もちろんです。そもそもポーラのことを調べていたら船長の適応力が際立っていましたので本人への聞き取り調査をしようと」
そうですか。
ちなみにポーラはどんな案配だ?
「宇宙生活においては非常に優秀です。蒼龍が目をかけるのもわかります」
そうなのか?
「……船長といると平凡な数値になるのがかわいそうです」
知らんがな。
それはともかくとりあえずは問題がないのか。
BL効果か?
「それも一因ではありますが、船長みたいにずっと引きこもって読んでいる訳ではありませんよ」
なんとなくそれは気が付いてた。
「朝は早くに起きて身体を清めたあと、礼拝堂でお祈り。その後朝食。再び礼拝堂に行き掃除」
掃除ってウサギがするのかと思ってたよ。
「しますよ。ですが本人が毎日のお務めとしてやりたいと言うのであれば止めはしません」
ああ、いつものストレス対策ね。
「そういうことです」
「二時間くらい掃除した後、庭園でティータイム。その後運動にするか艦橋でのゲート投入の練習にするかは船長次第になります」
ああ、いつも俺のところに来るなと思っていたらそういうことなんだ?
「気がついていないことに驚きを感じます」
そんなの適当に自分の自由にすればいいじゃないかと思うけど?
「船長の場合あまり部屋から出ませんからね。会えるうちに会っておこうというのが人の性というものです」
俺、あまりそういう性ないんだけど?
「特殊な引きこもりですものね」
まあ確かに俺は引きこもりとして特殊だな。
部屋から頻繁に出るし、他人とそれなりに会話するしな。
「そういう意味ではなく、引きこもること自体、人間として特殊な行為と言っているのですが」
そんなこと言われてもな。
日本にはいっぱいいるぞ。
「本当に特殊な国ですね」
まあそうかもしれない。
「そんな船長にあわせてポーラは足しげく顔を出しているのですよ」
俺と会っても楽しくないと思うがな。
「それでも嫌ってはいませんからね。それなら会話することで気分もよくなりますよ」
その辺は俺にはない発想だな。
会話を楽しむより引きこもりを楽しみたい。
「それでも会話楽しそうにしてますよね?」
そりゃあいい歳した大人ですもの。
思春期の子供が親戚の家に無理やり連れて行かれて、会話したくないからといってムスッと下向いているようなことはしません。
しかもこちとら人事部出身。
緊張した人間の面接をし、喋らせるのが仕事だ。
相手が会話する気があるのなら何とでもするさ。
「その辺の話術は引きこもりにしておくには惜しいと思いますよ」
惜しまれつつ引退するのが華というものです。
ポーラのゲート練習のほうはどんな感じだ?
「しばらく地上の生活で練習していないからどうなることかと思っていましたが、そこまで技能が下がってはいませんでした」
それはよかったな。
「何度か船長のを目の前で見たせいでしょうかね? 急にスジがよくなりました」
まあ人の正しい動きを見てみると気が付くこともあるからな。
見て盗むタイプならさらに成長が早いかもしれない。
「船長の技術は盗めるものじゃないと思いますけど」
でも俺より上の奴が38人いるんだし、俺なんか大したことないんじゃないのか?
「そのトップがどのくらいで飛び込めるのかって知りたくないですね」
なんで?
「船長の技術を最初に見たときでさえ計器エラーか、はたまた自分の感覚がエラーなのかと思って何度も自己診断プログラムを走らせましたからね。あんなのもうごめんですよ」
俺的に怖いもの見たさで見てみたいがな。
45m級を80%とかさ。
「やめてくださいよ、それってどこまで飛ぶ気なんですか!」
何秒なんだろうねぇ。
あと何だっけ、宇宙で必要な能力って?
「コミュニケーション能力ですね。どうしても知らない土地、知らない常識の中で交易やトラブル対応することになりますからね。ある程度会話できないと困ります」
まあそうだな。
でもそれは問題なさそうではないか?
「そうですね、同世代の同性とはいえ、すぐに打ち解けましたし、王宮にお世話になっているときもご家族にも気にいられていたようですよ」
まあ俺と違って人当たりよさそうだしな。
「いえ、船長もある意味人当たりがいいと思います」
褒めても何も出ないぞ。
「ポーラは心根の良さが表に出て誰からも好かれるタイプで、船長は人を騙すために心地よい言葉で他人を信じさせます。私はこのコンビだとよほどの修羅場でも対応できるんじゃないかなと思っています」
何度も言うが俺は詐欺師ではないぞ。
「いまだに詐欺師との違いがわからないんですよ」
ただの引きこもりなのになぁ。
本日は予約投稿となります。
明日は朝から次の惑星編の執筆にかかりたいのですが、飲み会早く終わるといいなぁ。




