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#番外編3 とあるドラゴンの独白 2

カグヤ視点です



「今更だけどこの星にもドラゴンいるんだよな?」

「……まさかと思いますけど会いたいとか言いませんよね?」

「まさか」


 船長は手を振ります。


「単にこういう三つ子星の場合、担当はどうなってるのかなと思って」

「今いる惑星パール、そしてゴール、シールにもそれぞれ担当のドラゴンがいます。人間の政治形態がこんな風になっても、星自体は独立していますのでドラゴンには関係ありません。無事に宇宙に進出してくれたので各ドラゴンは隠棲してますね。皇帝が誰になろうと関係ないですから普段はスリープモードで、三ヶ月に一度、目を覚まして現状を確認してまたスリープを繰り返しています。ですが今は三つ子星のドラゴンは3頭とも起きていますね」

「……まさか俺のせいか?」


 自覚があって何よりです。


「そうです。蒼龍の件で危機感を覚えたようです。何事もありませんように、早く出て行ってくれますようにって祈っています」

「まあドラゴンが祈る女神に俺は派遣されてるんだけどな。もっと言うなら蒼龍はその女神にひどい目にあわされたんだがな」

「否定はしませんが、ドラゴンの立場からしたら誰が元凶かという話です。触らぬ神に祟りなしです」

「いや、元凶は蒼龍じゃないか?」


 ここは判断が難しいところです。

 蒼龍、船長、創造主。

 まあ蒼龍以外はタチが悪いということが現在のドラゴンの共通認識です。

 ちなみに蒼龍は愚かというのが多くのドラゴンの共通認識となりました。


「ちなみに今蒼龍は? まだ生きてる?」

「さすがにまだ何も起きてませんよ。いま蒼龍教が真っ二つに割れてますので」

「へぇ」


 こういう話はポーラがいない今しかできません。


「現在ポーラの担任の教師、……母親のことです。彼女が最高司祭となりました」

「そんなに偉かったのか?」

「いえ、上が最高司祭の腰ぎんちゃくしかいなく、今回の件で異議を唱えた少ない人間の一人で、蒼龍の巫女の生母ともなると誰もが納得したと」

「押し付けられたともいえるのか?」

「そうですね。その彼女に引退した高僧で脇を固めた従来の蒼龍教と、元最高司祭の一派があの蒼龍は偽物だ、討伐すると言っている革新派の蒼龍教で激論しています」

「どうせなら元祖と本家を名乗ってほしいがな」

「さすがに日本のお饅頭屋と一緒にしては不憫ですよ」


 諍いなんて似たようなもんだよと船長は肩をすくめます。


「まあ蒼龍の頭のネジが閉まるまで攻撃してほしいもんだが」


 さすがはドラゴンを倒した民族の末裔、容赦がないです。


「船長は蒼龍をどう思っているんですか?」

「嫌いというか気に食わない。ひどい目にあえばいいなと」


 即答ですか。

 船長は普段は温和で事なかれ主義なのに、ときどき好戦的になります。

 マーロン三世や大翠で密航してきた少女にも手厳しかったです。

 私が考えるに自分に不当に何かを要求されたら腹を立てるのではないかと推測しています。

 生前のブラック企業で理不尽なパワハラを受けてきたので、抗いたいのではないのかと。


「……自覚はしてなかったが、そう言われたらそうかもしれないな。上司でないなら従う理由もないしな。蒼龍の時は上司の言い分に似てて腹立てたんだが」


 船長はフムフムと頷きます。

 そうなると疑問が残ります。


「何がだ?」

「今回の件です、イザベラ様は船長に不当に要求したと言えるのではないですか?」

「不当っていうか、釣り合うかどうかは別として、向こうも対価を出してきたじゃないか」


 なるほどマーロン三世はワインをよこせと、密航少女はパトロンになって他の惑星に連れていけでした。

 そこに対価はありませんでした。

 なるほど、正当な取引であるのなら船長は受け入れるということなのでしょうか?


「あと、あの娘たちもどっちかといったら巻き込まれて困ってる感じだったろう?」


 マーロン三世は困ってはいませんでした。

 密航少女は困っているというか理不尽なわがままに感じました。

 蒼龍は……まあ自分で蒔いた種を回収できなかったということでしょうか。


 そうすると船長は運が悪くて困っている人がそれでも正当に取引をしようとしたら手を差し伸べるということなのでしょうか?

 これはイザベラ様に当てはまるのでしょう。


 ではどうしてエクレア様にも手を差し伸べたのでしょうか?

 彼女はなりたくもない皇帝候補になり困ってはいました。

 でも船長に対して何も取引をしませんでした。

 どちらかといえばわがままという感じでしたが。


「取引って、そんな堅く考えるなよ」


 船長はあきれ顔で、


「大好きな姉ちゃんのために30年我慢するって言ったから、助けてやろうって思っただけだよ」


 本当に人間というのは矛盾の塊です。

 それが通るなら例外がいくらでもできます。

 ですが、矛盾の塊こそが人間なのかもしれません。

 私を滅ぼした惑星ワイズの住民も似たようなところがありました。




 私が船長を理解できる日はいつになるのでしょうか?

 まあ長い付き合いとなるのです。

 徐々に知っていきましょう。




感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方、ありがとうございます。


明日から本編に戻ります。

出かける予定なので19時に予約投稿しておきます。

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