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#番外編2 とあるドラゴンの独白 1

カグヤ視点です。



 私は元惑星ワイズのドラゴン。

 今は宇宙船イザヨイの管理頭脳、カグヤと名付けられました。

 他星の言葉ですが、妙に響きがよく気に入っています。


 私の主な仕事は創造主に選ばれた人間の宇宙を旅する手伝いをすることです。

 その人の名は日下部晃。

 もっかドラゴン界隈で最も注目されている人間で、私の悩みの種である。



 第一印象は「意外と普通」でした。

 その後すぐに「どこか壊れてる」になりました。

 適応力が半端なかったのです。

 状況を受け入れ、環境を受け入れる。

 あり得ませんよ、普通は。

 

 地球のドラゴンの話では生前の運が悪いせいではないかといいます。

 幼少期からあまりに運が悪すぎて、打たれ弱い人間なら自殺しかねないレベルのことでも感覚がマヒしていて、あきらめて何とかするという習性があるようだといいます。

 本人の談からしても、死因からしても、地球のドラゴンから送られてきた経歴からしても運が悪いと示されていますが、そもそも創造主に選ばれること自体が最大の不運といえるでしょう。

 そんな中でも適当に生きていこうとする姿勢は壊れているとしか思えませんでした。

 

 その後人知を超えたゲート突入能力に「計測不能」となりました。

 意味が分かりません。

 普通、突入できません。

 地球にまだ運転する技術が残っているとしてもあの数値はおかしいです。

 それでも船長の上に38人いるってどういうことですか!



 失礼、取り乱しました。

 その後「詐欺師」となりました。

 他人に嘘を信じさせたり、うまく誘導したりとよくもまあできるもんだと感心します。

 地球人のコミュニケーション能力って詐欺詐称なんですか?




「船長! いい加減に起きてください。じゃないと白ウサギに無理矢理たたき起こさせますよ!」


 基本、朝は2パターンある。

 寝ている船長を起こすか、起きてネットなり漫画なりを読んでる船長にいい加減に部屋から出ることを促すか、です。


 最初は自由にさせていましたが、そうすると45時間ほど部屋から出ませんでした。

 普通人間は一か所に何十時間もいるとストレスで体調を崩すはずですが、船長のバイタルはまったく正常です。

 地球のドラゴンの話では日本の引きこもりと呼ばれる人種はそういう傾向があると聞きました。


 それもゴロゴロいるといいます。


 もっともただの引きこもりには宇宙は耐えれません。

 地球はドラゴンを倒し、宇宙に出ることができない星なので宇宙に対して間違った知識が横行しています。

 大抵の人は自分の常識と実際宇宙の常識の差異を受け入れられません。

 過酷な訓練に耐えているエリートの宇宙飛行士などはきっと発狂することでしょう。


 そういった他星の常識を受け入れられるという適性を持った、選ばれし100人の1人だといいます。

 その中でも宇宙船の生活に耐えれる適性が31位だといいますが、31位でこれだとその上位はどれほどなんでしょうか?


 それはさておき宇宙船の生活は過酷です。

 狭い空間で、日の光もなく、空気も人工のモノです。

 普通はすぐに滅入るものですが、……この船長にその様子は全くありません。

 すでに半年以上宇宙船で生活していますが、いまだに地上に降りるどころか、自室以外にほとんど出向きません。

 この適性は異常です。


 地球のドラゴンの話では日本人は幼少期から過酷なストレス生活を送っているので、適度にストレスを与えたほうがいいとアドバイスをもらっています。

 普通なら宇宙船がストレスになるはずなのですが、船長が宇宙船の生活でストレスを感じていない以上なんらかのストレスがあった方がよいのでしょう。


「船長! 警告はしましたからね。では白ウサギ、突入なさい」


 つまり毎朝私が起こすのは適度なストレスを与える一環なのです。


 地球のドラゴンの話では、本物の引きこもりは外に出ろとしつこく言ったり、引きこもっていると体調を崩すと何度も言うと「しつこい」「うざい」とキレるそうです。

 ウチの船長は文句は言いますがまだ怒っている様子はありません――継続。




 船長の性格・性質は未だに把握できません。

 日本の文化・風習などを学ぼうとしましたが、諦めました。

 私たちドラゴンは人間を宇宙に導く存在ですが、事細かく管理しているわけではありません。

 人間の個別の趣味嗜好など理解が及びません。

 特に私は恥ずかしながら人間に滅ぼされたドラゴンです。

 人間が何をどういう思考でドラゴンを倒す選択をしたのか今持って理解ができません。


 ですので船長に対してはトライアンドエラーです。

 何がストレスで、何が癒しなのか。

 幸いなことに一番の懸念の宇宙船生活が平気なのですから徐々に調べていきましょう。


「……べつに今日は急ぐことはないだろう?」

「だからといって、いつまでも寝ておくこともないでしょう?」


 まずは規則正しい生活をさせる。

 これは人間の体調管理の一環でもあるのですが、それでストレスを感じるのだから本当に意味が分からない人です。

 

「……ああ、なんかモーニングを。トーストでいいや」


 食事はあまり味にはこだわりがありませんがメニューにはこだわりがあるのか指定してきます。

 こちらとしてはありがたいですが、もしかしたら何を食べさせられるのか怖くてメニューを指定してるのかもしれません――要経過観察。




「さあ、今日も交易用の商材を選んでください」


 朝食後、艦橋にて仕事を与える。

 私だと人間の好みはわかりません。

 やはりこういうのは人の手でやってもらわなければなりません。


「もうあれだ、真珠を片っ端から買ったらいいんじゃないかと思ってるんだよ」


 ただこの船長はものぐさで、こうも大雑把だと私が選ぶのとあまり大差がありません。

 

「真珠なら場所も取らないし、いい考えだろう?」

「船長は以前から宇宙船のスペースを気になさっていますけど、まだ余裕がありますし、船長はほとんど使わないのですから大きいものを買ってもいいんですよ?」

「そういうちょっとでもという考えが倉庫を圧迫し、最終的には居住区の空き部屋まで倉庫になるというのが生前の実体験でな。不良在庫ほど怖いものはないんだよ」


 だけど時々妙にまじめなことを言います。


「圧迫する前に私が警告しますからその辺はご安心ください。宇宙船の大きさは私が一番把握しております」


 私自身、真珠を買うことに反対はありません。

 ですが会話をすることはデーター収集になりますし、船長にストレスを与えることも、気分をよくすることもできます。


 船長がぼけたならつっこみ。

 バカなことを言ったら蔑み。

 たまに軽く侮辱する。


 どうにもそれが船長との会話で有効なようです。

 



この話、明日も続きます。

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