#99 別れと予定
さて魚の件はさておき、ポーラに話がある。
「なんでしょうか?」
魚のショックが大きいのか声が沈んでいる。
今まで16年、魚を食べなかったのにはまりすぎだろうよ。
まあそれはさておき、継承式も終わったことだしそろそろ出発するぞ。
「え~、もっといなよ」
なぜかモニターでエクレアが反応する。
そうは言ってももうなんだかんだで3ヶ月だ。
アニメなら1クールが終了したところだ。
そこそこ長くここに居ついた。
「通常の船乗りだとそこまで長くはないんですけどね」
カグヤがボソっと言うが無視する。
まあそれなりにこの星に慣れてきたところだが、永住する気はないからな。
「……そう、ですね」
でもな、前にも言ったがポーラには選択肢がある。
なんならこの惑星で永住しても構わない。
その場合は俺のコンテンツの権利はお前にやるから生活には困らないだろう。
「キャプテン、それは」
選択肢があるということだ。
考えるのもお前の仕事だよ。
「……私は蒼龍様のお言葉で宇宙に出ました。まだほとんど宇宙を経験していません。同行させてください」
それはもちろんかまわない。
でもとりあえずエクレアとイザベラにゆっくりとお別れをいう時間くらいは予定済みだ。
「いいのですか?」
異星でできた初めての友達だ。
それぐらいはきちんとしておきな。
「さすがドラパパ、話がわかる」
とエクレアが喜ぶ。
「でもお忙しいのでは?」
ポーラが現状を考えて遠慮がちに言う。
「ポーラには継承式までずいぶんとお世話になりました、お別れにささやかですか食事会でもさせてください」
とイザベラが言う。
おかしいな、俺も腕時計は出したし、惑星ゴールまで往復もしたのに。
「そちらは対価を支払っています。むしろこちらは被害を被ったくらいです」
おかしい、なんでか嫌われた気がする。
「自業自得です」
「大丈夫だよ、ドラパパ、あたしは好きだよ」
ありがとう、気持ちだけ受け取っておくよ。
まあ出航は60時間後だ、それまでに帰ってきな。
エクレア、イザベラ、忙しいだろうがよろしく頼むよ。
「はーい」
「お任せください」
「船長はポーラを置いていく気もあったのですか?」
まあそりゃあ本人が残りたいと言ったらな。
無理強いはする気はない。
あと選択肢は提示してやるのが大人の務めだろう。
「厄介払いではなく?」
失礼な。
そもそも厄介と思うほど接してもいない。
「それはそれでどうかとも思いますが」
まあそうはいっても直前で残るという可能性もあるがな。
「そうですね」
出会いと別れは世の常だとは思うんだが、宇宙に出ると今生の別れでも不思議ではないからな。
特にポーラは最近無理やり故郷を離れたからな。
立て続けにするのはきつかろう。
「船長もそういうことがありますか?」
俺も最近3ヶ月限定の嫁と別れたところで、今また新しい嫁を探しているところだ。
そんなことを十何年と繰り返しているとそれなりに耐性がある。
「そんなアニメキャラと一緒にしないでください」
真面目な話をすると、俺が死んだのは仕事辞めた直後だから、会社の知り合いにはお別れの挨拶はちゃんとできていたので特に未練もない。
実家の親や地元の友人と久々に会えるかと思っていたのに死んでしまったからな、それなりに思うところもあるが、考えても仕方ないしな。
さてここから次の惑星ってどうするんだ?
「その件で提案があります。惑星シールから惑星フィ=ラガに向かうというルートです」
なんか理由があるのか?
「この惑星は管理頭脳やそれを搭載する素体の人形の技術が発展している星です。そこの人形が欲しいと思いまして」
人形?
何のために?
「主目的はポーラのためです。イザヨイに乗った時は不安げでしたが、友達ができてから本当に楽しそうでした」
まあそうだな。
「一番怖いのはこの後旅立った時に孤独を感じ、精神を病まないかです」
まあありえるかもしれないな。
「もちろん船長にもフォローはしてもらいますが、やはり同性もいたほうがいいのではないかと思うのですよ」
言ってることはわかるぞ。
でなんだ、人形を前なんか言ってたようにカグヤの素体にして、立体映像ではなくアンドロイド風にするってことか?
「ご明察通りです。やはり映像ではフォローにも限界があると思います。質量を持ったアンドロイドのほうが触れれる分、安心感があるかと」
そんなもんかね?
そりゃあまあカグヤの好きにしてかまわんが、そちらにリソース使いまくっても宇宙船の航行や維持に問題はないんだろうな?
「そこはドラゴンを舐めないでくださいと」
それは失礼しました。
感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。
明日はカグヤ視点の番外編になります。
時間軸はこの次の話なのでポーラ視点と同じくナンバリングでもいいのですがわけることにします。
感想で多かった質問の答えになればと思っています。
感想には個別には返せませんが作品の疑問などは徐々に解決していければと思っています。