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#98 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 16

「イザベラ発見! 何してんの?」


 姉の気持ちを知ってか知らずか、能天気な妹はまだ地上にいるポーラを伴ってやってくる。


「あ~ドラパパだ! ヤッホ~」


 うむ、この子は今日も元気そうだ。


「元気でーす」

 

 あまりにバカ……もとい無邪気に言う。

 この子をいくらお飾りとはいえ、皇帝にしなかったことはどう考えても正解だったろう。

 この子の笑顔が翳るのはかわいそうだし、こんな子を皇帝にしなければいけない国民はもっとかわいそうだろう。


「ドラパパだけだよ、そう言ってくれるのは」

「いえ、エクレア、今のは気遣ってくれた風ですが、バカにもされてますよ」

「え、そうなの?」


 うん、本当にこの国の管理頭脳は優秀じゃないかな。

 この子に皇帝は無理だろう。


「あ、そうだ。ドラパパの言う通りにしたら本当にみんな幸せになれたね。ありがとうね」

「ちょっと待ってください! 私は幸せになってませんよ!」

「そうなの?」

「そうですよ!」

「……ドラパパ、イザベラそう言ってるけど?」


 心配するな、それは照れ隠しだ。


「そんなことありません」


 じゃあ聞くが、バア様はなんて言ってる?


「お祖母様は笑ってたよ」

「あれは呆れているって言うんです!」


 まあ怒ってないというのであれば問題ないさ。

 どのみちエクレアには無理めな案件で、おそらくイザベラを王女にできないものかとさぞや画策していただろう。

 第一の願い――自国からの皇帝の輩出が叶い、無理だろうとあきらめていたかわいがっている孫の晴れ姿を見れるのであるのなら、過程はどうあれ納得するだろう。


 でもってどのみちイザベラは影の皇帝だ。

 バア様孝行ができて、妹もかわらず元気でいられるなら本望だろうよ。


「勝手に決めつけないでください!」


 それに儀式やら式典の度にエクレアに式次第だの作法だの口上を教えなくてすむのは楽になるだろう?


「……それは否定しません」


 今回だって苦労しただろう?

 なんて出来が悪い妹だろう、自分でした方が楽だって思うくらいに。

 今後多々そう思うことになるんだ、早い方がストレスがないさ。


「ドラパパのいう通りだよ、イザベラ」

「例え事実でもあなたが言わないで!」



 とまあ誰も損していない結末である。

 だけどウチのドラゴンの評価は厳しい。


「確かに誰も損してはいないのかもしれません。得している人も多いし、イザベラ様もトータル的には損はしていないんですけど……素直に褒めれないのはなんででしょうか?」


 俺に聞くな。


「私もカグヤさんと同じです。なんでしょう、説明を聞いても……そのやりすぎという感じで」


 とポーラが言う。

 式典のことを言っているのなら責任の半分はエクレアにあるんだが。

 あんな風に言い放って逃げるとはシナリオ外だったぞ。

 もうちょい穏便にするように指示はしていたんだが、……まあエクレアだしな。


「そうだよ、ドラパパ。難しいよ。もっと簡単にしてくれなきゃ」


 悪びれず、むしろ文句を言う子だ。

 むしろ頑張ったと褒めてほしい。


「うん、ドラパパ、頑張った。ありがとう!」


 皆もエクレアにならうといい。


「ちょっと無理です」

「もう少し後味がよければ」

「確かに結果的には、……でも……」


 と評価が低い。

 まあ生前から俺の評価はこんなもんだったが、宇宙でも同じなのかと思うと少し悲しい。


「大丈夫だよ、あたしは味方だから」


 エクレアの言葉はありがたいような、頼りないような。


「ひどい!」


 まあ自業自得ということだ、お互いな。



「それはそうと、あたし『皇帝の威光』は少しもったいなかったなと思って」


 どうした?

 なんか叶えたい願いがあったのか?


「最初ドラパパに話を聞いた時にはなかったんだけどね、戴冠式までポーラと一緒に遊んでたらできたんだよ」


 ポーラと? 

 なんだろう、ポーラを置いてけっていうのか?

 はたまた魚関連か?


「いや~、BL法を作りたかった。うちの星ってBLは全然流行ってなくて」


 ああ、そっちか。


「……BLって何ですか?」


 さてイザベラの問いは無視して、なあカグヤ、とりあえず1週間の魚禁止令を出そうと思うのだが?


「5日が妥当かと。それならストレスも少ないかと」


 じゃあそれで。

 てか魚食えないくらいで禁断症状も起こるまいよ。


「そんな! キャプテン、あんまりです」


 いいか、ポーラ。

 お前の趣味を否定する気はない。

 趣味を布教するのも否定はしない。


 だけど相手を考えろ!

 物の道理も善し悪しもわかってない子に教えてみろ。

 そうでなくとも頭が悪いのに変な属性まで付けたら大変だろうが。


 しかも運の悪いことに国のトップになる可能性があった子だぞ。

 お国の一大事になったらどうする気だ?

 興味のある国民ならいい。

 だが興味のない国民だっているんだぞ。

 そういう人にまで強要する羽目になったかもしれない。

 そしてその際、元凶は俺らとして国民に恨まれていたかもしれないんだ。


 よかった、本当にあの子が皇帝にならなくてよかった。

 もうちょっとでこの国が腐るところだった。


「うぅ。せめて3日に」


 5日です。


「……タコやイカ、貝は魚にはいりませんよね?」


 お前のところの戒律と違う。

 海のモノは禁止だ。


「そんなぁ」




今回で「三つ子星の優しい王女と愚かな影姫」編は終了となります。


長かったですし展開もバレバレなところもあったので、なるべく飽きさせないように工夫したつもりでしたがいかがだったでしょうか?


面白かったと評価していただけるなら嬉しいのですが。



さて次回からは次の惑星をダラダラと目指しつつの日常回やら番外編です。

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― 新着の感想 ―
[一言] この章のテーマの元は藤子不二雄かな、でも藤子不二雄も元ネタが有り前の方も有る普遍的なテーマには必ず元ネタが有ります。 良いテーマですね そこはかとなく香る元ネタの香り…僕は藤子不二雄他の人は…
[良い点] 禁止令発布は妥当です。諦めろん。ポーラちゃん(合掌 [一言] 船長がいなかったら良くて皇帝制度の廃止。悪くて内乱な気がする。 その上、仮に三十年完走できてもエクレアがどこぞの最高司祭ばりに…
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