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パンライダーアバターゲーム  作者: 成神全吾
6/8

パラノイドダイバーダウン

胃液の逆流。おもちゃ箱をひっくり返したとは程遠い下劣な惨状に俺の意識は噛み抉られたかのようだ。


ここはどこだと口にする前に思考が停止を命令する。目の前に広がるのは草原。そして大海。そして砂漠。溶岩氷山渓谷湿地と全てがごっちゃ煮……と言うよりそれぞれのエリアが宙に浮かび、自身の領域を主張するようだ。


足元は青い光沢を放っているし、どこかしらデジタルな雰囲気すら感じられる。


まず俺はその気持ちを言葉にしてみた。



「何じゃこりゃあああああああああああ!」


電界(デ・ジータ)だよ。そしてここが私たちパンライダーアバターのフィールド。世界をつなぐイントラネット」


「イントラネット? それってアクセス制限の設けられた企業ネットワークってやつだよな。と言うか、ここネットの中なのか!?」


「ここに入ってこられるのはパンライダーアバターの証明チップ『モノクーコ』を持つ人だけ。自分の持つ端末で別の端末に触れたらその時点で電界入りをするのんよ。ほれ。見てみんさーい。宙に浮かぶ島々。巨大だよねぇ。あれからあれまでがホワイトハット陣営のフィールドで、向こうからこっちまでがブラックハット陣営のフィールド。うかつに動き過ぎるとエリアリーダーに速攻で探知されて」


「ちょちょちょいと待ってくれ! 何言ってるかわかんないって!」


「そか。君何も知らないんだっけ。さっきの歓迎会の時に話そうと思ってたんだけど、ボルトにも困ったものだね!」



君が言わないでほしい。



「んー……じゃあまずはパンライダーアバターゲームそのものについて説明しようか。簡単に言えば超越的な特殊能力パンライダーアバタースキルと共有のスキルを使いパンライダーアバターと呼ばれるイベンターが電界を駆り、しのぎを削り合うイベント。ちなみにパンライダーアバターは全員パンライダーサイトの登録者だよ」


「その、パンライダーアバターゲームってイベントは何の意味が?」


「さあね。パンライダーサイトは自己顕示欲の塊ばっかが集ってたし。こうしたイベントで本当のハ№1のハッカーを決めようってだけじゃない? まあ、どういった理屈でこんなことが実現しているかわかんないんだけどネ」


「……待てよ。それはネット上だけのことじゃないのか? 今日のあの化け物は何なんだ?」


「いー質問だファイア!」



ビシィッと指差しをしてきた。



「そこが問題なんだよ。この力、何の因果か知らないけど電界だけでなく一般的なインターネットにも侵入できるのはともかく、現実世界でも発現する。理由は分からないけど君みたいに電界入りしようとしないアバターを直接狙えるようにした仕組みなのか、それともルール範囲内の誤差なのか。とりあえず現実でドンパチをする輩もいるんスわ。アタシ達はそいつらのことをパラノイドイベンターって呼んでる」


「それが今日のあいつってわけか」


「問題なのは積極的にパラノイドイベンターとして活動してる連中がいるのよねぇ。そいつらは君を、リベンジャーバックファイアを狙っている」



俺? 首を傾げ聞き返す。



「君はパンライダーサイトのハッカーバトルに置いて脅威の勝率とレートを持って独走していた。それこそリベンジャーバックファイアに挑むことが一つの勇気とみられるほどに。そんな君がパンライダーアバターとしての力を手にしたらどれほどのものになるか。それを手に入れることができたらこの戦いに大きな戦局の渦を生み出すと奴らは踏んでいるのよ」


「……その連中って誰なんだ?」


「ブラックハット陣営の『ヴァイル』ってやつ。アタシ独自の情報網からわかっているのは『ドーントキシン・スターヴ・ヴァイラル』って名前のパンライダースキル。そいつの一人でブラックハット陣営は壊滅状態みたいね」


「そんなことがわかるのか」


「アタシのパンライダースキルは基本情報収集能力だからね。特化してますこれ重要。今までは君に気づかれずに近づいてきたやつらを叩きつぶして、落ち着いたころを見計らって接触しようって思ってたんだけど、その瞬間に襲われたってわけだよ」


「じゃあ、俺は四六時中連中に襲われる恐怖があるってことなのか!?」


「せいかーい! ピンポンピンポン! 今までは何とかなってきたけど今後どうなるか。少なくとも学校は割れちゃってるからねぇ」


「ま、待って! そんなの俺は関係ない! リアルとネットは違うんだ! 分別ってものを」


「弁えない連中が君を狙ってるんだ。君の常識の範疇に土足で踏み込んでくるんだ。骨の髄までむしゃぶりつかれて干からびるんだ。強くなるんだ! 君のために」



言い渡される逃れられない現実。強くなるって言ったて何をしたらいいんだ。ネット弁慶は事実だ。だけど現実では握り拳一つ握るのも億劫な臆病者だ。


今日みたいなことが今後もあると思うと自然と体が震える。しかし彼女は肩に手を置いてくれた。



「大丈夫。外のことは最大限アタシとボルトがフォローする。けどやっぱりある程度力をつけるほうがもしもの時に役に立つ。だからこそボルトも君に檄を飛ばしたんだよ」


「檄って……でも強くなるにもそんな簡単に行くわけが」


「その点は心配ないよ。君は強いはずだ。心が強いとか優しさがあるとかじゃなくてもっと物理的な強さ。これは気づくための訓練。電界には電界獣(ヴィジョンビート)っていうモンスターがいて倒すと経験値を得てパンライダーアバターとしてレベルアップ! まあRPGみたいなもの。本当はインターネットの電界獣とか他のパンライダーアバターを倒したほうが経験値はいいんだけど。今の君には象に挑むアリみたいなものだからね。じゃあ頑張ってね! 音リーフ『テレポーテーシオン』」


「まっ! 話ぶつ切りー!?」



どこから取り出したかわからないギターを叩き、俺の身はまたしても別の空間に転移する。

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