◆ひとりぼっちな写真部の日常3
出発の朝が来た。雲の合間から青空と朝日が覗く、すっきりしない天気。
まぁ、雨が降らなくて良かった。
「行ってきます!」
期待も不安も背負い、両親に別れを告げる。
「気をつけてね」
「何かあれば連絡しろよ」
両親が寂しそうに返答した。
港に行くと、共に過ごした先生や生徒のみならず、馴染みの近所の人達も駆けつけてくれていた。
みんな口々に「いつでも帰ってこい」と温かい言葉をかけてくれる。
「泣くじゃんかーやめてよー」と涙を堪えながら言う。
一人一人と言葉を交わし、足早に本土行きのフェリーに乗る。その後ろ姿を、みんなが見守っていると思うとちょっと恥ずかしい。
「また帰ってくるねー!」
元気に明るく見送る人達に叫ぶ。
ふと思い出し、取り出したカメラでみんなを撮った。
船が出航の準備を済ませ、汽笛を鳴らす。
エンジン音が大きくなり、離岸していく。大きく手を振り続けた。肉眼で見えなくなるまで。
そして、見えなくなるまで島を見つめ続けた。
離れるほど、募っていた不安は消えていった。
覚悟というよりは諦めと言ったほうがいいかもしれない。割り切って切り替えられるほど器用じゃないから。
本土に着き、船を降りる。もちろん迎える人などいない。
「ここからはひとり。」
自分に言い聞かせるように呟いた。