◆ひとりぼっちな写真部の日常2
学校に取りに来た忘れ物。それは学舎の風景だった。
実は再来年、通っている小学生と中学生が全員卒業を迎え、それを見届ける形で学舎としての役割を終えるのだ。
まだ二年あるものの、ゆっくり見て回れるのは最後だろうと思い、やってきた。
机がひとつ減った教室に、卒業式の名残が残る体育館代わりの広間。
西日射す明るい廊下、コーヒー臭が消えない職員室、いろいろお世話になった保健室・・・。
ひと部屋ずつ、写真に収めてゆく。
「ハルミちゃん、頑張ってね」と先生が声を掛けてくれた。
知らない先生なんていないし、関わりの薄い先生もいない。先生の一人一人に思い出がある。
「がんばります!」と気丈に答えたが、7年間の思い出が蘇り寂しくなってきた。
このまま居ると泣き出しそうだからと足早に学校を後にした。
自分の部屋に戻った。
必要最低限のものが準備されたスーツケース以外は何も変わらない部屋。
明日から当分は無人になると思うと、不思議な感覚になった。
荷物を確認し、手荷物も準備した。カメラも手荷物の中にしまった。
準備と確認が終わる頃には暗くなっていた。
いつもと変わらない晩御飯を食べて、いつもと変わらないお風呂に入る。
そして、いつもと変わらない布団で寝る。
全て明日からは違うんだと改めて実感した。ちゃんと生活できるだろうかと、ちょっと不安になった。