■無愛想な男の夢2
フォトサークルに半ば強引に入会させられた俺は後日、サークルの活動が行われているという校舎の裏手の池に向かった。
池のほとり、親水公園として整備されているデッキに、いかにも写真を撮っていそうな3人組を見つけた。
近寄ると例の彼女が気付き、期待の眼差しで俺を迎え入れた。
「来てくださったんですね。ありがとうございます」
彼女は今にも泣きそうだ。
「あの・・・鳶永タイチって言います。お願いします!」
とりあえず自己紹介を済ませた。
そんなこんなで、フォトサークルの一員になってしまった。
まずは基本から教えて貰ったが、習うより慣れろだと言われ、安価なデジカメを購入することになった。
最初は分からないことだらけで、楽しいなんて思えなかった。
彼女曰く、その原因は自分の長所を伸ばせていないからだという。
つまり、何を撮るのが好きなのか、得意なのかを知った上で被写体を選べということらしい。一定の方向性が固まるだけでも全く違うようだ。
ちなみに彼女は専ら、動物を被写体にするらしい。人間ではなく動物。もちろん、人間や風景を撮らない訳ではないが。
アドバイスを聞いて、すぐに方向性が決まるようなものではなかった。
質より量が大事なんだと熱弁されたおかげで、カメラの腕は上がらないものの意識的に被写体を選ぶようになっていた。
知らず知らずのうちにサークル活動に夢中になりつつあった。