◆ひとりぼっちな写真部の日常20(完)
帰り道、人通りの少なくなった道を歩いていると、柄の悪い集団が前方から近づいてきた。
「よう、木次川じゃねぇか!ちょっと見ない間に女できてやがるぜ。しかも三股かよ。ハハハ」
柄の悪い集団は気味の悪い笑い声を響かせる。
「こいつら、誰よ?」
「俺が前、連んでたやつらだよ…お前ら引き返せ」
「わ、分かったわ…」
足早に立ち去ろうとするが、背後にも仲間とみられる集団が立ちふさがっていた。
「なんだよ。逃げなくても大丈夫だぜ?一緒に遊ぼうぜ~」
柄の悪いやつが近づいてきて、怯える石田さんの腕を掴もうとした瞬間、彼女が目にも留まらぬ速さで技をかけた。
それを見て怯む者、構わず腕を掴もうとする者など、反応は様々だった。
次々と跳ね返すものの、さすがに一対多の状況では対応しきれず、掴まれて殴られた。地面に打ちつけられた彼女は二人に押さえつけられ、私たち二人も羽交い締めにされた。
「ほらほら、可愛い彼女たちが捕まっちゃったよ~。木次川、良いところ見せないと~。ほら、前みたいに掛かってこいよ!」
「やめろ!その子たちは関係ないだろ!」
「ずいぶん立派になったな!そんなこと言って時間稼ごうとしてもだめだぜ。やれ」
それを合図に、石田さんを押さえつけていた男の一人が不気味な笑みを浮かべながら浴衣の帯を引っ張るような素振りをした。
もう一人が彼女の胸元を開こうしていた。
「いや!やめて!」
石田さんが大きな声を上げる。
「お前ら、許さねえ!」
木次川くんのスイッチが入り、近くにいた男に殴りかかった。
木次川くんが相手を殴った瞬間に殴り合いの喧嘩が始まった。
15分ほどして警察が到着し終結を迎えたが、私たちも関係者とみなされて警察署へ連れて行かれた。
事情を説明して事なきを得たものの、暴行を加えてしまった木次川くんは処罰が下ることになった。
教頭先生が駆けつけ、全員が説教された。先生は誤解が多く、説得力の薄い説教が30分も続いた。
何も悪くないはずの木次川くんは2ヶ月の停学処分。被害者であるはずの私たちにも反省文を書かされた。
写真部にも3カ月間の活動禁止処分が下った。
話は私の家族に伝えられ、夏休みの間はずっと島からは出してもらえなかった。
でも、それは私を心配してのことだった。
一連の出来事で、木次川くんや石田さんのカメラは破損してしまい、私のカメラも紛失してしまった。
石田さんは襲われた際に手を負傷していたことが後日分かった。
ショックは大きく、数日間部屋に籠もりきりになった。
「私があんなことを言わなければ……」
そんなことばかり考えてしまっていた。
始業式の日、顧問の先生に部室へ呼ばれた。
重い足取りで部室に向かうが木次川くんはもちろん、新谷さんや石田さんの姿もなかった。
「これ以上、問題を起こさないように気をつけなさい。あと、伝えなきゃいけないことがあるわ……」
「な、なんですか……?」
その言葉は聞きたくなかった。
「木次川を退部させることを約束しなさい。学校側が言っても『やめない』の一点張りなのよ。こんなことはしたくないけど……」
「本人がやりたいって言ってるんですよ!なんで!」
「私だって、そんな彼をやめさせたくないわ!でも!そういう決まりなの!……ごめんなさい……逆らえば、退学もあり得るわ……過去の問題もあって、学校側も対応に苦慮してるの…」
言葉が見つからなかった。
「あと……ハルミさん……ごめんなさい。新谷さんから退部の申し出があったわ……でも!石田さんは続けたいと言ってくれてるから。気を落とさないで」
「そう……ですか……」
涙が溢れた。
木次川くんのことも、新谷さんのことも受け入れがたい。
話が終わり、部室に一人残された私は我慢していたものを吐き出した。
声を出して泣いたのはいつ以来だろうか。
冷静になった私は、これから写真部をどうするべきなのかで悩んだ。
新入部員が入る見込みもない。部として再開させないことも選択肢に入れた。
だが、木次川くんと新谷さんを諦めた訳ではなかった。
時間が経つごとに「絶対にまた四人で再開させてやる」という思いが強くなってゆく。
私にとっては不似合いな感情だが、心からそれを望んでいた。




