●とある写真家の憂鬱3
風景部門で応募したのは、海の写真。
個人的に自信はあったが、受賞まではいかないだろうと思っていた。
数日後、届いた郵便物の中にコンテストの結果通知があった。封を開け、恐る恐る確認してみると、あっけなく協会長賞を受賞してしまった。
あくる日、表彰式に呼ばれた私は都心にある大きなホテルに向かった。
慣れないドレスコードで外を出歩くのは恥ずかしいため、家からタクシーで直接乗り入れた。ちょっとした優越感に浸れた。
コメントなどはなく、関係者の挨拶と賞状授与だけだった。
プロの部門には、いかにも格の高そうな30代の女性が受賞していた。
「あなたが協会長賞取った人?」
授賞式後の食事会で突然、話を掛けられた。見た目通り、気の強い女だ。
「はい・・・」
「へぇ、こんな写真でも賞取れるんだ~」
喧嘩腰の彼女につい乗ってしまった。
「お、お言葉ですが、その発言は失礼ではありませんか?」
「どうせあんた、裏で手回ししてるんじゃない」
「何でもかんでも口にする癖は治したほうがいいですよ。もう良いですか?私は忙しいのでもう帰らないと・・・」
「あんたもすぐ喧嘩を買う癖をやめた方がいいわよ。私だって忙しいんだから、無駄な立ち話させないで!」
と言いながら、どこかへ去っていった。
数分後、会場の外で言い争う彼女を見た。誰にでも喧嘩を売る人だったようで、私だけじゃないと分かり安心した。
足早にタクシーに乗り込み家路を急ぐ。帰宅するなり、すぐに着替えて外出する。
いざこざを避けるための口実ではなく、本当に忙しい。今の私には欠かせない仕事が待っているのだ。




