断片1
ファインダーという作品は、思い付きで書いたこの「断片1」から物語を膨らませて書いています。
「断片」という話は物語上、重要なピースですが、あくまで本編は「断片」以外、つまり4人の視点で描かれる話です。
どんな物語になるか、予想しながら読んでいただければと思います。
では、お楽しみください。
「綺麗だなぁ」
僕は自然と声に出していた。
目の前にある額縁で彩られた一枚の写真。タイトルもコメントもないが、印象的な景色に惹かれた。
水平線が広がる大海原。空は青のグラデーションになっており、日没後だと分かった。快晴とはお世辞にも言えない、雲の立ち込めた空が幻想的だった。
そこは、とある写真家の展覧会。
デパートの上層階に設けられた催事スペースでひっそりと行われていた。
写真に一切興味がないため、その写真家を知るよしもなかった。スタッフに呼び止められ「見ていってください」と勧誘を受けたから、仕方なく見ていた。
十年前の出来事を今でも鮮明に覚えている。
しかし、ただひとつ思い出せないことがある。
何故、僕はあの日から今日に至るまでファインダーを覗き続けているのか。
あの日僕に遭った出来事を、十年間捜し続けている。でも、答えは見つかっていない。