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「デイビッド……さんは、国へ帰ってからどうしていたの?」
話しの流れを変えるように私は質問した。
「……アメリカに帰ってから、何もないただの日常さ。そして、ナツキのいない非日常。あの石はまだ持ってる?」
私はこくんと、子供のようにうなづいた。
「よかった。捨てられたんじゃないかと思ってたよ」
デイビッドはそう言って微笑した。
「……」
「ところでそのワンピース、よく似合ってるよ。ええと……紺色の生地に白のミズタマ模様。それに赤い口紅が映えて、とてもきれいだ」
「……そんな風に褒めたりするのね。外人さんて」
「自然なことだろう?」
きょとんとして彼は言った。そんな子供みたいな表情が可愛くて、私は笑みを浮かべた。パーラーに着いた私たちは席に座る。周りにいる客も店員もデイビッドをじろじろと物珍しそうに見た。余所者の外人だ……と言いたげに。デイビッドはどこ吹く風という感じでメニューを見ている。少し経って店員は見計らうように「何になさいますか?」と訊いた。
「僕はアイスコーヒー。ナツキは何にする?」
「私は……メロンソーダを」
店員はそれを伝票に書き留め、裏返しにして置く。
「子供みたいなチョイスをするんだね。ナツキは」
「……え、何かおかしい、ですか?」
「ぜんぜん。ただ可愛いなって思って」
「ありがとう……」
褒められることに慣れていない私は視線を下へ落として言った。こういう時、白人の女の人はなんて言うのだろう? 当然の賛辞だと誇った顔をするのだろうか?
「ナツキ? ナツキ? もう少ししたら、あるんだろう? ナツマツリが」
「……え? うん、そう。海開きしてから、その後に」
「じゃあ一緒に行こうよ。僕もユカタを着ていくから」
「……そう、ね」
私はとりあえず生返事をした。
「確か、ただでアイスクリームをもらえるんだよね?」
「残念だけどそれは子供だけなの」
「そうなのか! じゃあ僕たちはお金を出して買わないとね。デ……出店で」
「うん。あの、デイビッドさんは魚釣りとかしないの?」
「デイビッドでいいよ。魚釣り? する予定ないかな」
「そう」
「でも、行ってみたいところはある」
「どこに?」
「**にある大きな岩」
「そこなら、自転車ですぐだわ。と言っても、十五分くらいかかるけど」
「本当? 案内してくれたら助かるよ」
彼は満面の笑みで言った。