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人魚  作者: 佐伯亮平
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「駄目よ。何でそんなことするの」

 私は木から蜜柑を取った霧生に言った。

「もぎたてはすごく甘くて美味いんだ」

「泥棒だわ」

「一つや二つくらい構わないだろ」

 悪びれることなく、霧生は皮を剥いて食べている。

「……」

「夏希も食べてみろよ」

「……」

 渡された一房を私は仕方なく口にした。

「どうだ?」

「……甘い」

「だろう」

 霧生はそう言って、私の横に並んで寝転んだ。

「……」

「上の空だな。あいつのことを考えてるのか?」

「……考えてない」

 小さい嘘を私は吐いた。霧生はそれに答えることなく、しばらく私を無表情で見つめシャツのボタンに指をかける。

「……」

「……やめて」

「何でだよ」

「……まだ怖い、から」

 それを聞いた霧生は子供のようにむっとした表情を浮かべ、頭をかきむしった。そして、立ち上がり歩いて行く。その足音を聴きながら私は空に広がる雲を見た。






 家を出た私は生活館へ向かって歩き出した。ゆるい坂を上がるとよく吠える犬を飼っている家のおばさんが、女の子を連れて出て来た。あそこは、兄弟二人だけだったはずだけれど……。それに、あの女の子は見たことがある。いつもおばあちゃんと朝早く墓参りに行っていた子だ。私は軽く会釈をして通り過ぎ、道を曲がって生活館へ入った。

「おはよう、夏希。ねえ、聴いた? 外人さんの噂」

 待っていたと言わんばかりに早苗が話しかけてきた。

「……え?」

 私は一瞬、心臓が高鳴った。

「あなたを探してる外人さんがいるんだって」

「そ、そう。名前は、名前は何て?」

「さあ。名前まではわからないわ。赤い灯台の見える砂浜辺りにいるみたいよ。お昼休みにでも行ってみたら?」

「……うん」

 小さな島だから情報が伝わるのは早い……。就業から昼休みまでは四時間ある。その、たった四時間が私にはとても長く感じられた。

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