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「そうなの。そしてね、ここの海の底には〈竜宮淵〉という常世……つまり、永遠に時間の止まった世界への入り口があると言い伝えられているの」
私はデイビッドを見て言った。
「永遠に……時間の止まった世界?」
「そうよ。神々が住んでいるとも言われているの」
「へえ……そんな伝説があるとは、ね」
「でも、ただの言い伝え。本当にそんな場所があったら大変だわ」
私は観光パンフレットを閉じて言った。
「ナツキは、島の外へ出たい?」
「……そうね」
「それなら、いつか僕の国へ行こう」
「本当?」
「嘘なんて吐いても仕方ないよ」
デイビッドは笑みを浮かべて私の頬にキスをした。
「……」
「そして、今度は僕の国で、ずっと一緒に暮らすんだ」
「……デイビッド」
「何?」
「私を……一人にしないで……」
懇願するように、私は彼の胸に顔を押しあてた。
「大丈夫。何のために十二年の時を超えて来たと思ってるの?」
「……うん」
彼は私の顎を少し上げさせ、唇を割るように深く侵入してくる。脚を滑る手……体内を満たす行為……それが少しずつ私を狂わせていくようで、怖くなった。
夏祭りから一週間が過ぎた日、「ナツキ。僕は明日ここを発つよ」と彼は言った。
「……そう」
焦りを隠すように、私は乱れたシーツの端を伸ばしながら答えた。




