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砂浜へ行くと海は子供でいっぱいになっていた。私が家に閉じこもっている間に海開きしていたようだ。彼は子供達が泳ぐさまを見ていた。
「デイビッド」
「やあ、ナツキ。一週間ぶりだね」
「ええ……この一週間はどうしてた?」
「海で泳いでたから退屈はしなかったよ」
「そう。それを聞いて安心したわ」
「ああ……何だか顔色が悪くないか?」
「暑いから……」
私は日傘を下げて言った。
「そうか。あまり無理しないようにね。そうだ。旅館の人に教えてもらったんだけど、夏祭りは三日後らしいよ」
「そうね」
「楽しみだ」
「ええ……」
「ナツキ。忘れないうちに渡しとくよ」
デイビッドは封筒を差し出してきた。
「これは?」
「僕の家の電話番号と住所だ。君のも教えて欲しい。向こうから手紙を送るから」
「夏祭りの日に持ってくるわ」
「ああ。ところでナツキ。次の休み、海で泳ごうよ。君が疲れてなければ、だけど」
「……そうね。じゃあ、あそこで待っていて」
私は子供達が走りまわる砂浜の向こうにある、土手を指差した。
その夜、私は自室の押し入れから浴衣一式が入った箱を出した。開けると、去年と変わりない白地に桔梗の花が目に入る。浴衣には去年の夏の匂いが残っているような気がした。




