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私とデイビッドはそれから食事をして別れた。彼に対する離れがたい気持ちと霧生に対する後ろめたい気持ちが交差していく。このままではいけないと分かっている。分かってはいるけれど……何か頭の奥で痺れるような感覚から逃れることができない。
私は道の途中にあった公衆電話にお金を入れて、霧生の家の番号をダイヤルした。
「……」
「はい。**です」
霧生だった。
「……私」
「……」
「話したいの。灯台で待ってる」
「……」
霧生は一言も話さない。私は受話器を置いて、赤い灯台へ向かった。夕闇が差し迫る。日が完全に暮れたら、灯台が船を導くために海を照らすだろう。
いま思えば、ままごとのような感じだ。霧生とは。幼なじみの延長のような……。幼稚園、小学校、中学校、高校とずっと一緒で離れることがなかったから。私が霧生からの要求を断るのもそれが原因かもしれない。
車輪の音がしたので、土手を見ると霧生が走って来ていた。自転車を停めた霧生は辺りを見ている。デイビッドがいるとでも思ったのだろうか?
「ごめんなさい。呼び出して……」
「……話しって?」
「もう知ってると思うけど……」
「あいつが来たってことだろ?」
遮るように彼は言った。
「うん……」
「で、仲良くやってるのを自慢するために俺を呼んだのか」
「違う。ちゃんと話したくて……」
「話す? 話すって何をだよ。今更、だろ……」
彼はそう言って海を見る。
「悪いと思ってる……。でも、よく考えたんだけど霧生はやっぱり大切な幼なじみ……なの」
「……!」
私の言葉にキッとした表情を霧生は向けた。
「ごめんなさい……」
「お前は本当にあいつと上手くやっていけると思ってんのか!? あいつの国で。どうせこの島を出て行った奴らみたいに、出戻るのが落ちだ!!」
「……まだ、そこまで考えてないわ」
「いつかはそうなるかもしれないってことだろ!! 言わせてもらうけどな、俺もお前もこの島で生まれたんだ。だからここからは、絶対に離れられないんだよ……!」
霧生はそう言うと、早足で私に歩み寄って来て、両手で肩を強く掴んだ。




