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「事前に調べてきたんだけど、この岩って千三百万年前のものらしいよ」
「本当に? 知らなかった」
私は岩を見上げながら言った。
「そうなんだ。あ、あの上に植物があるね」
「石刻というのよ。初夏に花が咲くの」
「へえ」
「でもよかった。潮が引いてる時間で。満潮時だと巌門まで近づけないから」
デイビッドを案内するように私は歩いていく。
「この穴は……波の浸食かな?」
「そう」
私は巌門から波間を見た。陽の光に反射して輝く海がとてもきれいだと思った。
「……ナツキは、僕が島を去ってからどうしてた?」
「私も日常に戻っていった。まだ小さかったし、あなたの言ったことも理解できなかったから……けれど……」
「けれど?」
「寂しかった、と思う。あなたがいなくなってからの毎日が……。もう、遠くから見れなくなったことも」
「……君が遠くから僕を見ていたことは知ってたよ。あれは、バレーボールの試合の時だった」
「……」
「……」
「話しかけたくてしょうがなかったけど、その勇気もなくて……。でも、ただの憧れだったのかもしれない。周りの子達とは違う雰囲気に対して。その髪と瞳の色のように」
「……ナツキ」
彼は歩み寄ると私の手を取り、口づけた。
「……なんだか、怖い」
「何が?」
「何もかも……。あなたは、なぜ私に会いに来たの? こんな、子供っぽい私に……」
「理屈じゃないよ。ナツキ」
彼は静かにそう言った。




