表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人魚  作者: 佐伯亮平
1/22

1

楽しんでいって下さいね。





           1



 私の祖母はよく言っていた。

 ――海へ近づいてはいけないと。

 それはなぜかと訊いたら、「海には人魚がいるからよ」と静かに言った。私は見たことがあるの? という言葉をつぐんだ。それを知ってしまったら、何かが壊れてしまう気がしたから。

 美しい豊穣の海……すべての源……。祖母の話しを聞いていると海はそれだけではないような気がしてきて、私は畏怖を越えた怖さを感じたものだ。

 その祖母も今は墓の下に眠っている。亡くなるまではサナトリウムにいた。若い時には何でもなかった結核が年を取ることにより発病してしまったからだ。

 死の床に臥す祖母の最後の言葉は、やはり「海に近づいてはいけない」だった。




 流れゆく風に乗って、潮の香りが届く。私は燦々と降りそそぐ陽の光の下、海を眺めていた。

「人魚なんて、いるわけないさ」

 私が海を見る傍ら、霧生はそう言い放ち、海に石を投げた。投げられた石は放物線を描き、海の底へと消えていく。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ