第8話:迷宮ショッピングモール!勇者、迷子センターへ
家族でのお出かけは、勇者にとっての「未踏ダンジョン攻略」と同じ。
きらびやかな誘惑と人混みの中で、レオが遭遇した現代の魔物――それは「迷子センター」。
一方、レオを見失った魔王パパは、ショッピングモールの放送ジャックを画策し……!?
今日は両家合同でのショッピングモールへのお出かけだ。
俺、レオはベビーカーという名の「装甲車」に揺られながら、現代の繁栄を観察していた。
(……ほう、これが『フードコート』か。異世界の炊き出しとは規模が違うな)
そんな時、事件は起きた。
母ちゃんがバーゲンのタイムセールに気を取られ、ほんの一瞬、ベビーカーのブレーキをかけ忘れたのだ。
緩やかな傾斜。俺の装甲車は、無人(正確には俺搭乗)のまま、人混みの奥へと滑り出していった。
「ああっ! レオくん!」
母ちゃんの悲鳴と同時に、5つの影が動いた。
だが、それよりも速く動いたのは、店内の防犯カメラを私物化して監視していた真央パパ(魔王)だった。
「田中ぁ! ターゲットBが逸脱した! 直ちにエリアCを封鎖しろ!」
(……田中さん、休日なのにインカム付けて配置されてるのかよ!)
一方、俺は冷静だった。
このままではエスカレーターの段差で転倒する。俺は重心を操り、ベビーカーを鮮やかにドリフトさせ、近くのベンチにソフトランディングさせた。
だが、そこは「キッズスペース」のど真ん中。
不運にも、迷子を捜索していた警備員に保護されてしまった。
「おや、一人かな? 迷子センターに行こうね」
(……待て。俺は迷子じゃない。単なる単独斥候だ!)
数分後。ショッピングモール全体に、あの「不吉なチャイム」が鳴り響いた。
『ピンポンパンポーン。迷子のお知らせをいたします。青いロンパースをお召しの、レオくん……勇ましい顔立ちのレオくんをお預かりしております』
その放送を聞いた瞬間、ショッピングモールが凍りついた。
放送室を占拠したのは、もちろん真央パパだ。
「レオくん! 今すぐそこを動くな! パパが……いや、俺が今助けに行く! 係員の人! その子に勝手におやつをあげるなよ! アレルギーチェック(毒見)は済んでいるのか!?」
(……放送で毒見とか言うな! 営業妨害で訴えられるぞ!)
その頃、迷子センターの扉の前には、5つ子たちが集結していた。
彼女たちの脳内念話は、かつてないほど戦術的だった。
一華(賢者):『……作戦変更。パパが騒ぎを大きくしている間に、私たちがレオを「奪還」するわ。乃二、正面突破を』
乃二(聖騎士):『了解。……「あー! レオくんだー!」って叫んで、混乱に乗じて連れ出すわね』
忍三(暗殺者):『……私はダクトから入る。予備のおむつ、確保済み』
結五(聖女):『係員のお姉さんには、私が笑顔でデバフ(足止め)をかけますぅ』
輪四(格闘家):『よーし、お散歩カートをジャックしてくるね!』
数分後、迷子センターは地獄絵図と化した。
結五の超絶スマイルに骨抜きにされた係員が隙を見せた瞬間、忍三が天井から音もなく舞い降り、俺を抱き上げる。
さらに輪四が操る別のベビーカーが突っ込んできて、俺を回収して逃走。
最後は乃二が「こらー! 待ちなさーい!」と叫びながら追うフリをして、足跡を消す。
俺が母ちゃんの元へ無事(?)戻った頃、真央パパは警備員数名に囲まれ、「放送室の不正利用」について厳重注意を受けていた。
「違うんだ! 私はただ、愛する娘たちの婚約者(仮)を救おうとしただけで……!」
(……魔王。お前、今さらっと何て言った?)
俺の頭上のウィンドウが更新された。
[称号『迷宮の脱出者』を獲得。魔王パパの社会的信用が5減少しました]
俺は5つ子たちに囲まれ、彼女たちがこっそりゲーセンで獲ってきた「勇者の剣」を持たされながら、パパの末路を哀れみの目で見守った。
現代の迷宮は、前世の迷宮より「世間体」というトラップが厳しいらしい。
第8話、お読みいただきありがとうございました!
迷子センターを舞台にした、5つ子の華麗なる連携プレイ。赤ん坊とは思えない手際の良さに、レオも(少し引くくらい)感心しています。
そして魔王パパ。ついに「婚約者(仮)」という本音が漏れてしまいましたね。嫌い嫌いも好きのうち、なのかもしれません。
次回、第9話*「はじめてのお遊戯会! 勇者レオ、まさかの『お姫様』役に!?」
保育園の劇で配役ミスが発生! 勇者がドレスを着て、王子様役の5つ子たちが争奪戦!?
次回もお楽しみに!




