第2話:保育園は魔王の監視付きダンジョ
話では衝撃の再会を果たしたレオ。
お隣さんは前世の仲間(赤ん坊)と、前世の宿敵でした。
第2話は、ついに始まる「社会生活」の第一歩。保育園という名の戦場で、レオと魔王パパの火花が散ります!
転生して1年。俺、レオはついに「保育園」という名のギルドへ入園することになった。
母ちゃんに抱かれ、意気揚々と登園した俺を待っていたのは、運命の悪戯か、それとも魔王の呪いか。
「おはようございまーす! あら、真央さんちの五つ子ちゃんも今日からね!」
保育園の玄関で、俺は再び「奴」と対面した。
真央パパ。前世で俺と相打ちになった魔王の転生体だ。
今の奴は、スーツのポケットに「一華」「乃二」「忍三」「輪四」「結五」と刺繍された特注のハンドタオルを5枚詰め込み、殺気にも似た親バカオーラを放っている。
(……おい魔王。目が血走ってるぞ。娘たちの初登園がそんなに不安か)
「バブ(よお、魔王。元気そうだな)」
俺が軽く手を挙げると、真央パパは俺を思い切り睨みつけた。
「……フン、レオくんか。うちの娘たちに近づく不届き者は、たとえ1歳児でも排除するのが父親の務めだ。いいか、今日からここは俺の監視下にあると思え」
もちろん、言葉ではない。視線でそう語ってきた。
奴は仕事に行くふりをして、園庭の隅の電柱の影に隠れ、望遠鏡を取り出している。
(……通報されるぞ、元魔王)
園内に入ると、5つ子たちが待っていた。
一華(賢者)は積み木で精密な城を築き、
乃二(聖騎士)は他の園児からおもちゃを奪おうとするガキ大将を「メッ!」と一喝して追い払い、
忍三(暗殺者)はカーテンの裏から俺の動向をうかがい、
輪四(格闘家)は滑り台を逆走して鍛錬に励み、
結五(聖女)は転んで泣いている園児の頭を「いいこいいこ」と撫でていた。
(……お前ら、赤ん坊のフリをする気がゼロだな。全力で『勇者パーティ』やってるじゃないか)
俺は苦笑しつつ、自由時間に園庭へ出た。
すると、古びたブランコの鎖が今にも切れそうになっているのを見つける。
(……危ないな。あれに誰かが乗ったら――)
その時だ。一人の園児がブランコに駆け寄った。
俺は反射的に駆け出した。1歳児の脚力ではない。前世の「縮地」に近いステップ。
だが、俺より先に動いた影があった。
「危ないよぉぉぉ!! 結五ぉぉぉ!!」
生け垣を突き破り、泥だらけのスーツ姿で飛んできたのは、真央パパだった。
奴は凄まじいスライディングでブランコの下に滑り込み、娘を抱きかかえる。
「……はぁ、はぁ。パパが、パパがいるからね……!」
(……魔王。お前、仕事はどうした。あと、その動きは完全に『魔速』だろうが)
パパは娘を救った英雄の顔をしていたが、次の瞬間、保育士さんに「お父さん!? どこから入ってきたんですか!?」と捕まり、あえなく園外へ強制送還されていった。
俺はそれを見送りながら、隣で呆れた顔をしている一華(一歳・賢者)と目が合った。
一華は、俺にだけ聞こえるような小さな声で、溜息まじりに呟いた。
「……バブ(パパ、バカね)」
俺は心の中で激しく同意した。
現代社会というダンジョン。最大の障害は魔物でもトラップでもなく、「親バカすぎる魔王」なのかもしれない。
第2話、お読みいただきありがとうございました!
魔王パパ、1話目から全力で不審者一歩手前ですが、これも全て娘たちへの「愛」ゆえ……。
レオも、かつての仲間たちが現代で元気に(?)過ごしているのを見て、少し安心したようです。
さて、次回はヒロインたちがレオを巡って水面下で火花を散らす「初めての公園デビュー編」!
5人がどうやってレオの隣を勝ち取ろうとするのか、そしてレオの「鈍感スキル」がどう炸裂するのか。
お楽しみに!




