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異世界へ転生した俺が最強のコピペ野郎になる件  作者: おおりく


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第7話 聖女の献身と恋の防御魔法

『苔むした坑道』の攻略を終え、俺たち『紅蓮の牙』はギルドへと戻った。


俺が『地盤強化グラウンド・エンハンスメント』という高度なスキルを獲得したことで、パーティーの雰囲気は一変していた。


カエデは興奮気味に腕を組みながら、「次は、『灼熱の洞窟』だ!あそこなら、もっと強力な炎属性のスキルをコピーできる!」と、すでに次の獲物を探し始めている。


ルナは、俺の新しいスキルの検証に夢中だった。


「ユウト、今すぐに試したいことがあるわ。『地盤強化』を地面に、そして『ライト・ウォール』を空中に、同時に発動させてみて。防御力の相乗効果を測定する」


二人の女性の指導者兼仲間は、まるで俺を最高級の武器として扱うかのように、その可能性を追求している。俺の身体は疲れていたが、異世界で初めて感じた「必要とされている」という感覚に、心地よい高揚感を覚えていた。


その時、ギルドの重いドアが勢いよく開き、純白の修道服が飛び込んできた。


「ユウトさん!よかった、ご無事だったのですね!」


リリア・シルヴァーナだった。彼女は駆け寄ってくると、安堵のあまり、少し涙ぐんでいるようだった。


「リリアさん、どうしたんですか?」


「どうした、じゃありません!ギルドの噂で聞きましたよ!あなたが、上級魔物に匹敵する硬さの番人を討伐する手伝いをしたと!しかも、その過程で、また危険なスキルをコピーしたとか!」


リリアは俺の無事を喜ぶ一方で、カエデとルナを強い調子で非難した。


「カエデさん!ルナさん!貴方たちは、ユウトさんの命をなんだと思っているのですか!彼はまだ冒険者になったばかりの素人ですよ!」


カエデは肩をすくめた。「そいつはもう素人じゃねえさ。最強の矛と盾になる、俺の相棒だ」


ルナは冷たい口調で応じる。「神殿の人間は黙ってなさい。私たちの研究の邪魔よ。彼のスキルは、貴方の言うような温室で育てるべきものじゃない」


一触即発の空気になった。俺を巡って、好戦的な戦士と冷徹な魔導士、そして献身的な聖女が対立している。


俺は慌てて間に入った。


「カエデ、ルナ、ちょっと落ち着いて。リリアさん、心配かけてごめんなさい。でも、二人のおかげで、僕は自分のスキルの可能性を知ることができたんです」


俺の言葉で、リリアは涙目で俺を見つめた。


「ユウトさんは、ご自分のことを少しも大事にしない…」


そして彼女は、カエデとルナを一度強く睨みつけると、俺の手を引いた。


「もういいです。私は貴方たちとは違う方法で、ユウトさんを助けます。ユウトさん、ギルドの飯なんか食べないで、私についてきてください」


リリアに連れられて行ったのは、ギルドから少し離れた場所にある、神殿直営の質素な宿舎だった。


彼女は言った。「カエデさんたちは、あなたの力だけを見ています。でも、私は違います。貴方の身体と心を守りたい」


そして、慣れない手つきで、夕食の準備を始めた。焼いたパンと、素朴だが温かいシチュー。


「ユウトさん、『肉体強化』を使いすぎているでしょう?今、魔力の過負荷で身体が疲労しているはず。戦闘スキルを教えることはできませんが、私は回復の専門家です」


リリアはシチューを俺に差し出した。その手は、魔物と戦うカエデやルナの強い手とは違い、柔らかく、細い。


「貴方のスキルは、他人の魔力をコピーするのでしょう?でも、私からコピーできるものは、一つもない。私は、治癒と結界に特化した、純粋な『光の属性』の人間ですもの」


その瞬間、俺の胸がドキリと鳴った。


そうだ。俺は確かにリリアから『ホーリー・ヒール』と『ライト・ウォール』をコピーした。しかし、それは俺がこの世界で初めて出会ったスキルだったからだ。


ルナやカエデは、俺の持つ無限の可能性に目を奪われている。だが、リリアは、俺の弱さと疲労に気づき、静かに献身を示している。


彼女の純粋な優しさ、そして『戦闘には全く役に立たない』という、彼女の自己評価が、俺の心を最も強く打った。


俺はシチューを飲み込みながら、リリアの手をそっと握った。


「ありがとう、リリアさん。僕は、あなたの優しさ、絶対に忘れません」


俺の瞳に映るリリアの表情は、驚きと、ほんのりとした赤面が混ざっていた。彼女の白い頬は、夕食のランプの光の中で、淡い桃色に染まっていた。


この世界で最初に俺を救ってくれたのは、彼女だった。俺の心を休ませてくれる『防御魔法』は、戦闘スキルではなく、リリアの優しさなのだと、俺は悟った。


その夜、リリアの用意してくれたベッドで、俺は久しぶりに安眠を得た。だが、俺の心はもう、彼女の優しさに守られるだけの存在ではない。俺は、この純粋な聖女を守れるほどの強さを、この異世界で手に入れなければならないと、強く誓ったのだった。

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