第45話 愛の法則の弊害、究極のハーレムチート
世界の再起動から、静かに五年の月日が流れた。
俺たちが創造した『愛の法則』が支配する世界は、争いも混沌も極端に減り、平和で満ち足りたものとなっていた。リリアの光の法則により、人々は揺るがない安定と幸福を享受している。
俺たち四人は、王都から離れた自然豊かな隠れ家で、平凡だが幸せな日々を送っていた。俺は、世界を救った英雄としての地位を捨て、愛するヒロインたちの傍にいる専属の騎士(そして夫)として生きることを選んだ。
リリアは、もはや聖女の装束ではなく、温かいエプロン姿が定着していた。
「ユウトさん、朝食の準備ができましたよ。カエデさんがまた、お庭で剣の素振りをしているのですが、お皿が割れないか『光の結界』を張っておいてくださいね」
ルナは、探求心を失うことなく、俺の『ユニティ・ドライブ』の永続的な安定を保つための『無限の謎』を、今日も熱心に研究している。
「ユウト。あなたの六属性は、リリアの光によって完全に安定しているわ。しかし、私が設定した『探求の法則』に基づき、次の週末までに、『水に浮く炎の剣』の理論を完成させてくれないと、私の知的好奇心が満たされない」
そしてカエデは、飽きることのない情熱を、武術だけでなく、俺への愛情表現にも注いでいた。
「ユウト!朝の訓練の時間だ!俺の炎が、昨夜のシスターの光で少し冷えちまった。俺の熱量をもう一度ぶつけて、進化させろ!」
全てが愛の調和に満たされた生活。しかし、世界の法則を書き換えたことで、俺の『ユニティ・ドライブ』**には、新たな、そして非常に厄介な「チート」が付与されていた。
それは、『愛の願望具現化』。
俺が三人のヒロインの「愛に関する潜在的な願望」を無意識に強く意識すると、その願望が小さな奇跡として物理的に具現化**してしまうのだ。
「…さてと、ルナの新しい理論を計算するか」
俺は、コーヒーカップを手に取り、無意識にルナの知的な願望を考えた。
(ルナは、僕の知性を誰にも邪魔されずに独占したい、という願望が強いな…)
コン!
その瞬間、俺の目の前の机の上に、『ルナ専用:思考加速型ヘッドギア(外部遮断機能付き)』が、物理的に出現した。
「あら、ユウト。私が昨晩こっそり設計していたヘッドギアがもう完成したのね。やはり、あなたの創造の速度は私を裏切らないわ!」ルナは顔色一つ変えずに、それを装着し、俺から隔離された。
「おい、ユウト!朝飯食うぞ!」カエデが、炎の勢いで部屋に入ってくる。
俺は、慌ててカエデを見た。
(カエデは、僕に常に自分の情熱を見ていてほしい、という願望が強い。そして、ライバルたちに絶対負けたくないと思っている…)
ガシャン!
カエデの目の前に、リリアとルナの顔が描かれた巨大なサンドバッグが、突然出現した。サンドバッグには、**『ライバル粉砕用』**と炎で書かれていた。
「ハッ!さすがユウト!俺の進化には、こういう具体的な目標が必要だったんだ!愛の調和とは、こういうことだろ!」カエデは、サンドバッグを炎の拳で破壊し始めた。
そして、リリアが部屋に優雅に入ってきた。
(リリアさんは、僕が永遠に、他の誰にも目移りせず、彼女の傍にいるという、揺るがない安心を求めている…)
ピカァッ!
俺の左手薬指に、純粋な光の魔力でできた、決して外れない婚約指輪が、具現化して嵌った。それは、リリアの光の法則そのものが結晶化したような、まばゆい輝きを放っていた。
「ああ、ユウトさん…!『愛の法則』が、私の願いを形にしてくれたのですね。これで、貴方は永遠に私のものです」リリアは、嬉しそうに俺の手にキスをした。
俺は、世界の法則が、自分のハーレム願望を絶対的な現実として具現化させてしまうという、究極のチートを手に入れたことを悟った。
俺の愛の調和は、愛するヒロインたちの愛の願望を、常に叶え続ける運命を自らに課したのだ。
「…世界の平和は守れたけど、このハーレムの法則をどうやって乗りこなすんだ、僕は…」
俺は、平和な世界の創世主として、愛の法則という最も厄介なチートに頭を悩ませるのだった。




