第39話 ラビリンスの最下層と時を統べる守護者
ルナは、『究極の単一属性』を永続的に完成させるための理論を導き出した。
「ユウト。貴方の六属性(光、闇、炎、氷、雷、風)は、全て『空間に存在する要素』よ。この力を『調和』させ、一つの単一の力として固定するには、それらを統べる概念が必要だわ」
ルナは、古文書の写しを広げ、俺の目を見て言った。
「その概念こそが、『時属性』。貴方の七番目の属性よ」
時属性。それは、世界でも数えるほどしか使い手がいない、伝説の属性だった。六つの要素を時間軸に沿って完全に制御することで、単一属性として固定化できる、というのだ。
俺たちは、ルナの指示に従い、ラビリンスの地下にある、『魔力の坩堝』と呼ばれる最下層へと潜入した。ここは、都市が吸収したあらゆる魔力の残滓が流れ着き、時間と空間の法則が不安定になる場所だった。
「ユウト、気をつけろ。この辺りは空間が歪んでやがる。俺の極限衝動でも、次の動きが読めねえ」カエデは、警戒しながら俺の横を歩く。
リリアは、俺に寄り添い、光の魔力で俺たちの周囲の時間的・空間的な歪みをわずかに修正していた。「ユウトさん。必ず私の光で、貴方を現実に繋ぎ止めます」
最下層の奥深く、時の流れが完全に止まったかのように見える、巨大な制御室のような空間にたどり着いた。空間には、金色の砂が舞い、独特な静寂の魔力が充満していた。
その空間の中央で、時間そのものを纏っているかのような、銀髪の男が静かに座っていた。男は、『均衡の守護者』が纏う黒のローブではなく、古代の儀式服のような、白銀の装束を纏っていた。
「ようこそ、『世界の模倣者』よ。貴方が、時を求めることは、分かっていた」
男の声は、過去と未来が同時に響いているかのような、奇妙な多重音声だった。
ルナは、その男から放たれる圧倒的な魔力に、顔を青ざめさせた。「…この魔力、まさか!ユウト!彼は、時間属性を完全に操っているわ!」
「彼の名は、クロノス。『均衡の守護者』の最高幹部の一人だ。ユウトの力を単一属性に昇華させる鍵であり、同時に最大の障害だ」
男、クロノスは、静かに立ち上がった。
「私は、『歴史の均衡』を司る者。貴様の七つの要素を統合する行為は、未来の歴史にとって、許されない不確定要素だ」
俺は、すぐさま『コピーキャット』の紋章を最大出力で起動させた。
「貴方の目的が何であれ、僕の愛と成長を邪魔するなら、容赦はしません!」
クロノスは、俺の魔力に反応せず、ただ微笑んだ。
「貴様が私を打ち破る瞬間、貴様は時属性の力を得るだろう。だが、それが私の望みでもある。貴様の究極の力が、『真の世界の支配者』を倒せるか、見極めるために」
クロノスは、俺を排除するのではなく、利用しようとしている。俺の究極の単一属性を完成させ、『均衡の守護者』とは別の、真の支配者と戦わせるつもりなのだ。
そして、クロノスは、時間属性の力を解き放った。
ゴオオオオ…
空間に舞う金色の砂が、一斉に逆流し始めた。俺たちの周囲の時の流れが、数秒単位でランダムに逆行・加速し始める。
カエデの剣の動きが突然スローモーションになり、ルナの演算が過去に戻されて崩壊する。リリアの光の魔力も、時間の歪みによって不安定になる。
時間属性。それは、六属性全てを無力化する、究極の概念の力だった。
「ユウト!私は、貴方のスキルをコピーさせはしない。時の流れの中で、貴様の『模倣者』としての存在を、消滅させてやる」
俺は、時属性の魔力に全身を晒されながらも、必死に『コピーキャット』の紋章をクロノスに向けた。
【スキル:時間掌握を模倣しますか?】
七番目の属性を、最大の敵から命がけで盗み出す。これが、俺の**『究極の単一属性』を完成させるための、最後の試練だった。




