第34話 ルナの暴走 愛の三位一体(トリニティ)追跡
俺の「調和の道」は、ルナにとって知的な敗北を意味した。
「ユウトの成長のためには、リリアの光の安定(秩序)を切り捨て、混沌を受け入れるべき」という彼女の『最終複合理論』は、俺の「全ての愛を統合する」という決意によって否定されたのだ。
その夜、ルナは誰もいない間に、大魔導士ギルドの書庫から、『究極の混沌』を生み出すための禁断の魔術書を盗み出し、姿を消した。彼女は、俺の進化を妨げている光の安定を、力ずくで打ち破るつもりだった。
朝、ルナの不在に気づいたリリアとカエデが、俺の部屋に駆け込んできた。
「ユウトさん!ルナさんがいません!それに、書庫の結界が破られ、『混沌の魔鍵』が盗まれています!」リリアの顔は青ざめていた。
カエデは怒りを滲ませる。「あの頭でっかち野郎、俺たちの計画を無視して、一人で最強になろうと企みやがったか!」
俺はすぐにルナの意図を察した。「ルナは、僕の六属性統合のシミュレーションを完成させるために、最も混沌に近い場所へ向かったはずだ。場所は…『古代の混沌の遺跡』。ギルドの文献に、不安定な魔力が集中する場所として記されていました!」
リリアは俺の手を強く握りしめた。「ユウトさん。ルナさんの命も、この世界への秩序も、貴方にかかっています!彼女の暴走を、止めてください!」
カエデは、大剣を握りしめ、強い決意を込めた眼差しで俺を見た。「チッ。気に入らねえが、ルナが死んだら、ユウトの最高の頭脳が失われる。俺たちの最高の獲物を、勝手に死なせるわけにはいかねえ!」
俺たちは、ルナの残した僅かな魔力の痕跡を追って、王都郊外の『混沌の遺跡』へと急いだ。
遺跡の深部に到達すると、すでにルナは、禁断の魔術書を開き、巨大な魔法陣を展開していた。魔法陣の中心では、光と闇、炎と氷が、互いに打ち消し合うことなく、凄まじいエネルギーの渦となって暴走し始めていた。
「ルナ!やめろ!」
俺の呼びかけに、ルナは振り向いた。彼女の瞳は、狂気的な探求心と、俺への深い愛で、涙を滲ませていた。
「ユウト!来ないで!これは私があなたに贈る、最高の進化よ!私は、あなたが私だけの究極の存在になるために、この光の秩序を破壊する!」
ルナは、「究極の単一属性」を生み出すため、自らの存在をも犠牲にするつもりだった。
「リリアさん、カエデ!ルナの暴走を止めます!武力でなく、愛で!」
俺は、二人に新しい協力体制を指示した。
「リリアさんの光の魔力で、ルナの魔法陣の『制御』を奪う!カエデの炎の魔力で、ルナの魔力回路の『熱暴走』を鎮める!そして、僕が、『魔力演算』で混沌の力を『調和』へと誘導する!」
これは、リリア、カエデ、ルナの愛の属性を全て活用する、究極の三位一体作戦だった。
リリアは迷いなく、俺の指示に従った。彼女の光の魔力が、ルナの魔法陣へ、強引に流れ込み始める。
「ルナさん!貴方の知性は、独占のためではなく、愛のために使いなさい!」リリアは叫んだ。
その隙に、カエデがルナの背後へ回り込み、その全身から放出される炎の魔力を、ルナの暴走した魔力回路へとそっと送り込んだ。
「ルナ!死ぬんじゃねえ!あんたの頭脳は、ユウトの進化には絶対に必要だ!俺の熱い炎で、その冷たい頭を冷やしてやる!」カエデの熱意が、ルナの暴走を一時的に鎮める。
そして、俺は、雷光加速で思考を極限まで高めながら、暴走する混沌の渦に、俺の六属性全ての力を『調和の比率』で投入し始めた。
「光、闇、炎、氷、雷、風!全ての愛よ、調和しろ!」
俺の魔力が混沌の渦と衝突した瞬間、爆発的な光が遺跡全体を覆い尽くした。
光が収まったとき、ルナは魔法陣の中心で、意識を失いながらも、無傷で倒れていた。彼女の暴走は、俺たちの愛の三位一体によって、見事に止められたのだ。
俺は、ルナを抱きかかえ、その額に優しくキスをした。
「ルナ。貴方の知性は、僕の最高の力だ。でも、もう二度と、愛を切り捨てるな」
リリアは安堵の涙を流し、カエデは不敵な笑みを浮かべた。ルナの暴走は、三人のヒロインの愛の形を、協力という形で、さらに強く結びつけたのだった。




