第32話 光と風の結界突破と聖女の勝利
俺とリリア、カエデ、ルナは、サイラス第二王子が仕掛けた『光と風の結界』の前に立っていた。
結界は、サイラス自身の強力な光の魔力を基盤とし、風の魔力でその防御力を流動的に、かつ不可視的に高めた、非常に高度な術式だ。
「いいか、東方の男。使用できるスキルは『光』と『風』のみ。他の四属性が混ざった瞬間、結界は自爆し、貴様は王族への反逆罪で拘束される」サイラスは冷徹に言い放った。
彼は、俺が最も得意とする多属性複合を封じ、リリアの愛と俺の安全を天秤にかけたのだ。
リリアは、俺の隣で強く拳を握りしめた。「ユウトさん。私を信じて。私の光の全てを貴方に供給します。どうか、安全を優先してください」
ルナは、冷静に結界を分析した。「ユウト。結界の核は、光の魔力を風の流動性でランダムに拡散させている点にある。『魔力演算』でランダムな拡散パターンを読み取り、『風の流動』を使って、結界の光の層の結合を物理的に分離させなさい!」
カエデは、苛立ちながらも俺の背中を叩いた。「チッ、面倒くせえ。だが、ルナの言う通りだ。光の防御を知恵と風で打ち破る、紳士的な戦いを見せてやれ、騎士様!」
俺は、三人のヒロインの願いと指示を脳内で瞬時に統合させた。
防御(リリアの願い) + 知恵(ルナの指示) + 成長(カエデの熱意)
俺は、リリアの『神聖魔力供給』を受け入れ、その安定した光の魔力を、俺がコピーした『風の流動』スキルと複合させた。
光の流動。
これは、リリアの光の魔力を空気のように流動的で精密な刃へと変える、新しい複合スキルだ。
俺は、ルナの『魔力演算』で結界のランダムな魔力の流れを読み取り、最も光の結合が薄い一点を見つけた。そして、そこに、リリアの光を纏った風の流動を、ピンポイントで叩き込んだ。
ヒュン…ズバッ!
光の魔力でありながら、風の不可視の鋭さを持つその一撃は、結界の防御の論理そのものを断ち切った。結界は爆発することなく、音もなく、そして完全な無効化もされずに、静かに消滅した。
サイラスの顔色が変わった。「バカな…光と風のみで、我が王族の結界を…!しかも、破壊ではなく、論理を崩壊させた…!?」
俺は、結界を破った後も、光と風の二属性以外の魔力を使わなかった。サイラスは、俺を拘束する理由を失った。
リリアは、驚きと喜びで目を見開いた。彼女の光の魔力が、**「安全」ではなく、「最強の攻撃」**として使われたのだ。
「ユウトさん…貴方は…私の光を、私自身が想像できないほどの究極の力に変えてくれた…!」
サイラスは、悔しそうに剣を鞘に収めた。
「…見事だ。貴様の能力は、混沌だが、その制御は神の領域に近い。約束通り、王都への立ち入りを許可する」
サイラスは、最後にリリアに鋭い視線を向けた。
「だが、聖女殿。貴君は、その男に一生、その能力の制御という重荷を負わされることになるぞ。それでも、貴君はその男を『騎士』として傍に置くつもりか?」
リリアは、俺の手をしっかりと握り、サイラスに向かって堂々と宣言した。
「はい。私は、ユウトさんの強さを信じます。そして、彼が私のために力を振るう限り、私は、この愛の重荷を喜んで背負いましょう」
リリアは、サイラスとの政治的な戦いに勝利したのだ。彼女は、俺の光の力の使い手として、王族の権威から俺の自由を勝ち取った。
しかし、カエデとルナは、この結果に複雑な表情を浮かべていた。
「チッ…結局、ユウトは光のスキルとシスターの愛に、一番従順なんだな」カエデは、悔しさを滲ませた。
ルナは、冷静に俺の『光の流動』スキルを分析していた。「光と風の複合…確かに強力だわ。でも、ユウトの雷や炎**、そして私の氷を、最高の攻撃として使おうとしなかった。ユウトの優先順位は、私たちへの愛よりも、リリアの要求なんだわ」
俺は、リリアとカエデ、ルナの三人のヒロインの期待と不満が渦巻く中、エルダリア王国の王都へと足を踏み入れた。
リリアとの関係は、公の場での最高の信頼を得たが、その代償として、カエデとルナの嫉妬と不満は、新たな爆発を予感させていた。




