第31話 王族の騎士との対立と聖女の権威
『知識の平原』での成功の後、俺は『風の流動』のスキルを複合させることに成功した。俺の体は、雷の加速と風の流動性によって、まるで空気そのものになったかのように動くことができた。
リリアは、俺の新たな進化に戸惑いを隠せないでいたが、「安全を確保するため」という名目で、俺の魔力制御の指導を熱心に行った。しかし、その指導の傍らには、常にカエデの肉体訓練とルナの知識訓練がセットでついてくる。
四人は、エルダリア王国の王都『アークラシア』を目指し、広大な平原の街道を進んでいた。
その途中、街道を封鎖するように、銀と青の紋章を掲げた、王国の騎士団が立ちはだかっていた。彼らは、ただの騎士団ではない。王族の直轄である『精鋭討伐隊』だ。
討伐隊の先頭には、一際豪華な鎧を纏った、長身で威厳のある青年騎士がいた。彼は、リリアと同じく光属性の強大な魔力を纏っている。
騎士は、俺たちを値踏みするように見つめ、冷たく言い放った。
「そこの者たち。ここは、高レベルの魔物が目撃されたため、王族の命令により封鎖している。特に、そこの東方の男。貴様の魔力は、世界の均衡を乱す混沌だ。王都への立ち入りは許可できない」
騎士の名は、サイラス・フォン・エルダリア。エルダリア王国の第二王子であり、最強の光の騎士として知られていた。
サイラスは、俺の光と闇が混ざり合った魔力に、強い嫌悪感を露わにした。
「貴様の存在は、この国の秩序を乱す。聖女殿との同行を許可されているようだが、その聖女殿でさえ、貴様の危険性を制御できているとは思えない」
俺は、神殿を追われた身。王族の騎士に正面から逆らうことはできない。
その時、リリアが一歩前に出た。彼女の瞳は、聖女としての威厳と、俺を守るという決意の光を帯びていた。
「サイラス殿下。ご無礼を申し上げます」リリアは深々と頭を下げた。「ユウトさんは、聖都ルーメンの英雄であり、私の専属の騎士です。彼の能力は、確かに特殊ですが、それは神の試練を乗り越えるために必要なものです」
サイラスは鼻で笑った。「神の試練?否。それは神への冒涜だ。聖女殿、貴君は、その東方の男に溺愛しているが故に、その真の危険性を見誤っている。直ちに、その男を私に引き渡せ。王都で能力の完全な調査を行う」
サイラスの言葉は、リリアの愛と権威に対する、公然たる挑戦だった。
その瞬間、カエデが激昂し、前に出ようとした。
「ふざけんな!この野郎、ユウトをモルモットにする気か!」
ルナは、冷静にカエデを制した。「待ちなさい、カエデ。ここは武力で解決する場所じゃない。リリアが、彼女の愛の力を見せる時よ」
リリアは、サイラスの冷徹な視線を受け止めながら、自らの聖女の権威を最大限に解放した。彼女の全身から放たれる清浄な光が、サイラスの威圧的な魔力と激しく衝突した。
「サイラス殿下。ユウトさんの能力の調査権は、彼を専属契約しているこの私にあります。貴方様が、神殿の聖女の専属の騎士を違法に拘束するならば、それは神殿と王国の間に、外交問題を引き起こすことになります」
リリアは、政治的な言葉と神聖な権威を駆使して、俺の所有権を主張した。これは、神殿のルールから解放されたリリアが選んだ、最も高度で、最も危険な愛の戦いだった。
サイラスは、リリアの強硬な姿勢に、一瞬たじろいだ。しかし、彼の光の魔力は、依然として俺たちを排除しようという強い意志を示している。
「…リリア聖女。貴君の権威は理解した。だが、混沌を王都に入れるわけにはいかない」サイラスは、妥協案を提示した。「一つ、試練を設ける。この先の『光と風の結界』を破ってみせろ。ただし、東方の男のスキルは『光と風』のみの使用を許可する。他の四属性を使えば、その場で拘束する」
サイラスは、俺の六属性の複合を封じ、リリアの専門である光と、俺が新しくコピーした風の力だけを試そうとしたのだ。
リリアは、俺を見た。俺は、彼女の愛の戦いに応えるべく、静かにうなずいた。




