第30話 エルダリア王国の知識の平原と聖女の成長許可
俺たち四人は、無事に国境を越え、隣国『エルダリア王国』へと足を踏み入れた。
この国は、知識と魔法の研究を重んじる文化が栄えており、国境付近には見渡す限りの**『知識の平原』**が広がっていた。ここは、古代の魔法文明の遺跡が多く残る、魔導士にとっての聖地だ。
旅の緊張が一段落した夜、野営地で、リリアはカエデとルナを呼び出した。
「カエデさん、ルナさん。ここで、一つルールを決めさせてください」
リリアの表情は、神殿にいた頃の厳格な支配者のそれとは異なり、決意に満ちたリーダーのものだった。
「私は、ユウトさんの安全と、私を最も必要とする存在になってほしいという願いのため、この旅に同行しています。貴方たちが、ユウトさんの成長を望んでいることも理解しています」
彼女は深呼吸をし、衝撃的な宣言をした。
「故に、この旅の間、私はユウトさんの私的な行動の制限を解除します。貴方たち二人は、ユウトさんの能力開発を優先し、危険を冒す訓練を行っても構いません」
カエデは驚きで目を見開いた。「おい、シスター。本気か!?あんたの騎士を、俺たちの訓練に好きに使わせてくれるってのか?」
「ええ。ただし、条件があります」リリアは力を込めて言った。「貴方たちは、ユウトさんの生命が危機に瀕した際、最優先で私に報告すること。そして、必ずユウトさんを私の元に無事に帰すこと。貴方たちの『成長への情熱』を、私の『安全への願い』が上回ることは許しません」
リリアは、支配を信頼に切り替えるという、愛の形を大きく変えたのだ。彼女は、俺を囲い込むのではなく、俺の最強の盾となることを選んだ。
ルナは、リリアの知的な決断に感嘆したように微笑んだ。「素晴らしいわ、リリア。貴方は、ユウトを最も遠くへ行かせることで、逆に最も近くに引き寄せる方法を選んだのね。賢明だわ」
翌日、俺たちは平原の奥深くにある、古代の風の神殿跡へと向かった。
ルナの計画によれば、この平原には、『風属性』の魔力を極限まで高めた『グリフォン・ロード』と呼ばれる魔物が潜んでおり、このスキルをコピーすることが、五属性複合の最終段階への鍵となる。
「風は、流動性と不可視性が特徴よ。ユウトの『雷光加速』と複合させれば、『空間把握能力』を飛躍的に高められる。私たちの誰も持っていない、情報処理特化の第六の属性よ」ルナが説明する。
風の神殿跡に近づくと、空気がねじ曲がり始めた。
ゴオオオオオ…
巨大な翼を広げたグリフォン・ロードが、古代の遺跡から姿を現した。その翼が一度羽ばたくたびに、不可視の衝撃波が平原を切り裂く。
「ユウト!風の衝撃は『闇の障壁』でも受けきれねえ!どうする!」カエデが叫ぶ。
「待って。風の魔力は、空間に依存している!」ルナが演算を開始する。「ユウト!私たちが陽動する。貴方は、カエデの炎とルナの氷を複合させて、『温度差の壁』を作りなさい!」
リリアが、すぐさま俺に光の魔力を供給し始めた。「ユウトさん!私を使いなさい!貴方を、最強の風の障壁にするために!」
俺は、三人のヒロインの愛と指示を全て受け止めた。
炎 + 氷 + 光 + 魔力演算
俺は、一瞬で炎と氷を複合させ、グリフォン・ロードの周りの空気に極端な温度差を作り出した。超高温と超低温の魔力の壁が、グリフォンの風の魔力回路を一時的に不安定化させる。
「今よ、ユウト!コピー!」ルナが叫ぶ。
グリフォンの風の魔力が不安定になった瞬間、俺の紋章が澄んだ緑色に輝いた。
【スキル:風の流動を模倣しました】
これは、魔力を流れる空気のように扱い、不可視の攻撃や防御を可能にする、究極の**『流動特化スキル』**だった。
グリフォン・ロードは、魔力を奪われ、動きを止める。
「やったな、ユウト!これで六属性だ!」カエデが歓声を上げる。
俺は、リリアを見た。彼女は、俺が危険を冒して新たな力を手に入れたことに恐怖を感じながらも、自分を頼ってくれたことに安堵していた。
俺は、風の力を手に入れた。この流動の力は、三人のヒロインの支配、情熱、知性の間に存在する複雑な愛の関係を、さらに流動的で止められないものにするだろう。




