第22話 聖女の公的宣言と暗躍する『均衡の守護者』
『魔力の汚泥溜まり』の浄化を達成した俺たちは、地下通路から、神殿の裏口へと繋がる秘密の通路を通って地上へ戻った。
街はまだ薄暗い早朝だったが、神殿前の広場には、事態の収束を待つ多くの市民や、整列した神殿騎士団が集まっていた。
俺たちが広場に出ると、騎士団長が厳かに宣言した。
「聖務補佐官ユウトは、神殿の最高位の依頼を達成した。これにより、ユウト、並びにその協力者、カエデとルナに対する全ての容疑は一時凍結され、彼らは街の英雄として迎えられる!」
広場からは歓声が上がり、市民は俺たちに祝福の言葉を投げかける。俺は、リリアの命がけの作戦が成功したことに、安堵と達成感で胸がいっぱいになった。
そして、広場の壇上には、リリア・シルヴァーナが、純白の聖衣を纏い、神殿長と共に立っていた。
俺がリリアに視線を送ると、彼女は、これまでの不安と悲しみに満ちた表情ではなく、強い決意を宿した目で見つめ返してきた。
リリアは静かに、しかし広場全体に響き渡る声で話し始めた。
「市民の皆様。この度、街の危機を救った聖務補佐官ユウトは、これより神殿において、前例のない特権を与えられます」
リリアは深呼吸をし、俺の目を見つめたまま、公衆の面前で、衝撃的な宣言を行った。
「聖務補佐官ユウトの能力は、世界の均衡を乱すほど強大です。故に、神殿は彼の力を**『祝福』**として、管理下に置くことを決定いたしました。その管理者は、この私、リリア・シルヴァーナが務めます」
そして、彼女はさらに一歩踏み込んだ。
「よって、本日より、聖務補佐官ユウトは、公私にわたり、私の『専属の騎士』として、常に私の傍に控えることになります」
「なっ…!」
俺は言葉を失った。専属の騎士。それは、単なる補佐官ではなく、聖女の最も近しい護衛であり、私的な関係をも示唆する公的な称号だ。
カエデは怒りを爆発させた。「ふざけるな、シスター!公私にわたりだと!?それは事実上の独占だろうが!」
ルナも青い顔で、リリアを睨みつけた。「公的な場で、そんな私的な権力を行使するなんて…!貴方は、神殿の権威を使って、ユウトを自分の所有物にしたのよ!」
リリアは、カエデとルナの非難の視線を、真正面から受け止めた。彼女は、神殿の職務と俺への愛を、『専属の騎士』という形で完全に融合させたのだ。これで、カエデもルナも、公の場では俺に手を出すことはできない。
「カエデさん、ルナさん。あなたがたは、ユウトの『護衛兼指南役』として、今後もパーティーの一員として行動していただきます。しかし、彼の行動の決定権は、全て、このリリアにあります」
リリアは、愛する人を守るため、そして独占するために、聖女の権力を最大限に利用したのだった。
俺は、神殿の騎士たちに見守られながら、リリアの隣に立つしかなかった。リリアは、勝利者のように微笑み、俺の腕にそっと触れてきた。
その頃、街の地下、旧市街の奥深く。
闇の第三勢力『均衡の守護者』のリーダー格の男が、砕けた仮面を直し、静かに立ち上がっていた。
「『模倣者』が、英雄として地上に戻っただと…」
彼の腕の短剣は、闇の魔力を収束させていた。
「聖女リリアが、彼を公的に囲い込んだか。悪手だ。あれでは、彼を狙う勢力が、神殿自体を標的とすることを許してしまう」
男は、通信用の魔道具を取り出し、低い声で指示を出した。
「計画を変更する。『模倣者』を地下で闇討ちするのは不可能になった。次は、彼が『光の騎士』として公の場に出る時、最大の混乱を起こす。我々は、奴の存在を許した神殿、そして世界の均衡を乱した『ユウト自身』を、同時に葬る」
闇の守護者の陰謀は、俺の英雄化と聖女の独占によって、より大規模で危険な計画へと姿を変えていた。
俺の新たな戦いは、リリアの甘い支配の中で、公の敵と、そして三人のヒロインの激しい愛情と共に始まろうとしていた。




