第19話 チート無効化とカエデの『極限衝動』
「世界の均衡を護る者、だと?笑わせるな!」カエデは即座に大剣を抜き、怒りの炎を纏った。「ユウトの進化が怖いだけだろうが!」
「無駄な抵抗だ、『模倣者』。お前の持つ多属性の複合魔力は、世界の法則から逸脱している。我々が持つ『収束の魔刃』の前では、お前のスキルは無力となる」
均衡の守護者のリーダー格の男が、腕の短剣を構えた瞬間、その周囲の魔力が一点に凝縮し始めた。
「ユウト、注意して!彼らはスキルを広範囲に展開させないように、魔力を物理的な刃に極限まで収束させている!あれは…複合魔法の破壊に特化したスキルよ!」ルナが警告する。
俺は躊躇せず、最強の複合スキルで先制攻撃を仕掛けた。
「炎氷制圧弾!」
魔力演算で最適化された炎と氷の複合魔弾が、守護者たちに迫る。だが、男は一歩も動かない。
キィン…!
男が腕の短剣を振り抜くと、魔弾の全ての魔力構造が、短剣から放たれた収束した魔力によって一瞬で分断・無効化された。魔弾はただの水蒸気となり、霧散した。
「嘘だろ…!俺の複合スキルが、一撃で…!」
俺は焦った。七つのスキルの複合こそが俺の強みだったが、相手はまさにその複合構造を狙い撃ちする対チートスキルを持っていたのだ。
「魔力に頼るな、ユウト!彼らは肉体強化や地盤強化のような、純粋な身体能力や環境への作用には魔力をあまり使っていない!カエデのスキルで突破口を開くしかないわ!」ルナが即座に指示を出す。
ルナの言葉を受け、カエデは迷いなく、最も危険な戦法を選んだ。
「ユウト、よく見ていろ。俺の『超速物理強化』を、限界を超えて展開する!」
カエデは、大剣を捨て、全身の肉体強化を破壊の限界点まで高めた。彼女の筋肉が、魔力の負荷で赤く膨張する。それは、自身の肉体を傷つけるほどの、狂気的な加速だった。
「紅蓮の極限衝動!」
カエデは、純粋な肉体の速度と炎の熱だけを纏い、守護者たちの陣形に突っ込んだ。彼女の目的は、敵を倒すことではない。俺に、その瞬間的な極限の力をコピーさせることだ。
「馬鹿な!自滅行為だ!」守護者のリーダーが叫ぶ。
カエデは守護者の一人の間隙を突き、その肩を体当たりで粉砕した。凄まじい物理的な衝撃が、地下空間を震わせる。しかし、カエデ自身も魔力の反動で大きく吹き飛ばされ、壁に激突して動けなくなった。
「カエデ!」
【スキル:極限衝動を模倣しました】
俺の紋章は、カエデの魂の叫びを写し取ったように、赤く燃え上がった。
このスキルは、カエデが持つ『超速物理強化』の上位互換。魔力制御を捨て、一瞬の間に肉体能力を数十倍に跳ね上げ、その反動で魔力回路を破壊しかねない、諸刃の剣だった。
「ユウト!今よ!『魔力演算』と複合して、反動を計算で殺しなさい!」ルナが叫ぶ。
俺は、意識の全てを頭脳に集中させた。
極限衝動 + 魔力演算 + 超速物理強化(俺の基本)
極限衝動が俺の肉体を破壊速度で加速させようとする。それに対し、魔力演算がナノ秒単位で魔力の流れを調整し、肉体の限界を広げながら、反動を吸収していく。
俺の全身が、赤く燃えながらも、完璧な安定性を保った。
チート無効化すら無効化する、究極の『物理・思考複合スキル』の誕生だった。
俺は、一瞬でカエデを吹き飛ばした守護者のリーダーの前に移動した。
「…無効化できるのは、魔力の複合だけだ。物理の複合は、どうだ?」
俺は、光も闇も使わず、ただ肉体の極限の力と炎の熱だけを収束させた『極限の一撃』を、男の仮面に叩き込んだ。
ドォン!!
一撃は、男の魔力収束の防護を、純粋な物理的衝撃で粉々に打ち砕いた。男は壁を突き破り、そのまま地下通路の奥へと吹き飛んでいった。
残りの守護者たちは、リーダーの敗北を見て動揺した。
「撤退だ!『模倣者』は、我々の予測を超えている!」
守護者たちは、瞬時に闇の中に姿を消した。
俺は、倒れているカエデに駆け寄った。彼女は全身の魔力回路にダメージを負い、荒い息を繰り返している。
「…よく、やったな、ユウト」カエデは、満身の笑みを浮かべた。
ルナは、俺の隣で、最高の傑作を見るような、熱い眼差しで俺を見つめていた。
「ユウト…貴方は本当に、世界の常識を破壊する存在だわ。そして、この私でさえ、貴方の力の全てを予測できない」
俺は、カエデの怪我を『ホーリー・ヒール』で癒しながら、誓った。
この二人が、命を懸けて俺に与えてくれた力を、誰にも奪わせはしない。




