第17話 七色の魔力と聖女の究極の選択
神殿騎士団の包囲網の中で、俺の全身から、光、闇、炎、氷が渦巻く七色の魔力の奔流が溢れ出した。
「殲滅の炎断を魔力演算で非殺傷に!氷結弾と闇の障壁を複合させて、拘束用の弾丸を生成!」
俺は、ルナからコピーした『魔力演算』をフル稼働させ、騎士団の動きと、自分の魔力消費を瞬時に計算する。
「ライト・ウォール!」
まず、俺は光の障壁を広範囲に展開し、騎士たちの視界を遮った。
「くっ、視界が!」
その一瞬の隙に、カエデが動いた。
「ユウト!俺の超速物理強化をコピーして、俺たちの回避ルートを確保しろ!」
カエデは、大剣を地面に叩きつけ、俺の『超速物理強化』の魔力パターンを、あえて周囲に拡散させた。
【スキル:超速物理強化を複合発動!】
俺は、自分の身体に『超速物理強化』を施し、カエデとルナを抱え込むようにして、瞬時に騎士団の陣形の間をすり抜けた。その動きは、騎士団の視覚と予測を完全に超えていた。
「速すぎる!単なる『模倣者』ではないぞ!」騎士団長が叫ぶ。
ルナは、回避しながらも冷静だった。「ユウト、その場で『地盤強化』を発動して!騎士団の足場を固め、動きを鈍らせる!」
俺は、騎士たちが次の動きに移る直前に『地盤強化』を発動。地面が岩盤のように硬化し、彼らの俊敏な動きを奪った。
「逃がすな!神聖拘束結界を発動せよ!」
騎士団長は、自らの剣を天にかざし、神殿の奥にある巨大な結界石と魔力的なリンクを張った。街全体を守る結界の一部が、この広場に集中し、俺たちを取り囲むように純粋な光の檻を形成し始めた。
「まずいわ!あれは神殿の最も強力な対人結界!光属性が核になっているから、ユウトの闇のスキルも光のスキルも吸収されてしまう!」ルナが焦りを滲ませた。
「クソ!ユウトの炎断で物理的にぶち破るしかない!」カエデが斬りかかろうとする。
だが、騎士団の結界は、完成する速度が速すぎる。結界が俺たちを完全に閉じ込めるまで、残り数秒。
その時、俺の首元のお守りを通して、一つの声が響いてきた。
それは、神殿長の前で、俺の力を封じようと訴えた、リーダーリリア・シルヴァーナの声だった。
「ユウトさん!聞いて!あの結界は、純粋な『光』のみで構成されている!外部からの『闇の干渉』には強いけれど…」
リリアの声は震えていたが、迷いはなかった。
「貴方の『神聖魔力供給』を、結界の魔力と逆流させるの!結界の防御魔力を、制御する騎士団の方向へ押し戻すイメージで!」
それは、リリアが自ら作り上げた結界の、唯一の弱点だった。
『愛する人を拘束するために作られた結界を、愛する人に破らせるためのヒント』。
リリアは、職務(聖女としての役割)と愛(俺を守るという誓い)の間で、究極の選択を迫られ、愛を選んだのだ。
俺は迷わず、リリアの言葉に従った。
「神聖魔力供給!」
俺の体から放たれた光の魔力は、騎士団が形成する結界の魔力と衝突した。そして、俺は『魔力演算』を使って、結界の演算構造を解析し、リリアの指示通りに魔力を逆流させた。
グワァァン!
完成しつつあった光の檻は、内部からの光の力によって、一瞬で崩壊した。
「馬鹿な!結界が、内部から…!」騎士団長は驚愕し、体勢を崩した。
俺は、光の破片が飛び散る中、カエデとルナを連れて、神殿の騎士団が崩壊した隙間を、超速物理強化で駆け抜けた。
「リリア…!」
俺は、走り去る寸前、神殿の上空を見上げた。リリアの純白の影が、一瞬だけ見えた気がした。
彼女は、俺が世界を破壊する危険な存在だと知りながら、俺の命と自由を選んだのだ。
これで、俺たちは神殿から『逃亡者』の烙印を押された。しかし、俺の心には、リリアの悲痛な愛情が、最も強力な防御魔法として深く刻み込まれていた。
「大丈夫よ、ユウト。私が守るから」
俺の耳には、彼女の最後の言葉が、確かな力を持って響いていた。




