第15話 竜殺しの遺跡と炎の情熱、物理スキルの極み
ルナから『魔力演算』という究極の頭脳スキルをコピーしたことで、俺の能力は飛躍的に安定した。
以前は、七つのスキルを同時に発動すると魔力回路が悲鳴を上げていたが、今は『魔力演算』が自動的に全ての魔力フローを最適化してくれる。七重の複合スキルも、まるで一つのスキルであるかのようにスムーズに扱えるようになった。
俺の進化に、ルナは心底満足している。
「フフ…完璧よ、ユウト。貴方の能力は、もはやこの世界の魔法の教科書を超える。あとは、その演算された力を、どう外部に叩きつけるか、ね」
ルナの知的な満足げな表情を見て、リリアは不安そうに俺に話しかけた。
「ユウトさん、ルナさんの指導は、確かにあなたの成長に繋がりました。でも、私の安全第一のルールを忘れないでください。次の依頼は、危険度の低い…」
「待った!」
リリアの言葉を、カエデが遮った。彼女は、壁に貼られた依頼書の中から、一際古びたものを乱暴に剥がした。
依頼:『古代遺跡:ドラゴンスレイヤーの剣の試練』の調査
「次の聖務補佐はこれだ、シスター。この依頼は、単なる調査じゃねえ。この遺跡の奥には、古の竜殺しが遺したという試練の魔物がいる。奴の強靭な物理スキルこそが、今のユウトに最も必要なものだ!」
カエデは俺の目をまっすぐ見て、熱く訴えかけた。
「ルナは頭を良くしてくれた。だが、俺が欲しいのは、理屈を超えた力だ!あんたの複合した魔力を、純粋な破壊力に変えるスキルを、俺の剣から盗んでみろ!」
リリアは顔面蒼白になった。「ドラゴンスレイヤーなんて、危険すぎます!却下します!」
しかし、カエデはリリアの言葉を無視し、俺の腰を強く抱き寄せた。
「ユウト。俺の炎と、あんたの闇と光の複合。最強の矛と盾になるためだ。俺の全てを見せてやるから、最高の力で応えてくれ」
カエデの真剣な眼差しと熱い体温に、俺は抗えなかった。この情熱に応えることが、彼女への誠意だと感じた。
古代の『竜殺しの遺跡』は、地下深く、巨大な竜の骨格が並ぶ壮絶な空間だった。
最奥の円形広間に、試練の番人が現れた。それは、巨大な竜の骨格に、呪われた魔力が宿った**『ボーン・ゴーレム』**だ。
「カエデ、行きます!」
カエデは雄叫びを上げ、大剣にこれまでにないほどの炎の魔力を集中させた。全身の『肉体強化』を限界まで高め、竜殺しにふさわしい純粋な破壊の力を剣に込める。
「殲滅の炎断!」
カエデの剣閃は、ただの炎の斬撃ではない。魔力によって肉体を極限まで加速させ、その勢いを炎の魔力に乗せて叩き込む、究極の物理スキルだった。
剣はボーン・ゴーレムの肋骨に直撃し、凄まじい衝撃波と炎の爆発が遺跡に轟いた。
【スキル:超速物理強化を模倣しました】
俺の紋章は、今度は燃え盛る赤色に輝いた。
「すごい…!」
これは、ルナの『魔力演算』のように頭脳を鍛えるスキルではなく、身体能力を一瞬で限界突破させる、最もシンプルなチートスキルだった。
「ユウト!今だ!複合だ!」カエデが叫ぶ。
俺は即座に、新たに得たスキルを複合させた。
超速物理強化 + 炎の掌握(俺のスキル) + 魔力演算
肉体は限界を超えて加速し、頭脳は最高の効率を計算する。そして、その全てが、右手から放たれる炎のエネルギーに変換される。
俺は、一瞬でボーン・ゴーレムの懐に潜り込み、炎を纏った右拳を放った。
ドシュン!
炎は、超音速で叩きつけられた衝撃波によって、プラズマ化し、ゴーレムの骨格を原子レベルで破壊した。
「やった…最高の破壊力だ…!」
カエデは興奮冷めやらぬ様子で駆け寄ってくると、俺の胸に飛び込んできた。
「ユウト!最高の気分だ!俺のスキルをあんたが超えた!あんたは俺の魂の相棒だ!」
カエデは熱い吐息を俺の首筋に吹きかけながら、俺の唇に、遺跡の熱と同じくらい情熱的な長いキスを落とした。彼女のキスは、力と勝利への渇望に満ちていた。
その光景を見ていたルナは、冷静さを失わずも、どこか面白くない表情を浮かべた。
「あの馬鹿。自分のスキルを渡してまで…」
そして、リリアからは、遠隔での指示はもう届かなかった。彼女は、俺の持つ闇と光の複合に加え、最強の物理破壊力をも手に入れたという事実に、大きな恐怖と不安を感じているに違いなかった。
俺の身体は、*「光・闇・炎・氷」の属性と、「防御・知識・物理」の能力を全て複合させた、真のオールラウンダーへと進化を遂げた。
しかし、その代償として、リリアとの関係には、修復不可能なほどの大きな亀裂が入ったように感じられた。




