第14話 歪な四人パーティーと魔導士の心を手に入れた日
俺の提案による『四人パーティー結成』は、誰も予想しなかった結果だった。
リーダー:リリア・シルヴァーナ(光属性・聖女) - 安全管理と回復、そして依頼の選定権を持つ。
前衛:カエデ(炎属性・戦士) - 物理戦闘と火力担当。
後衛:ルナ・アークライド(氷属性・魔導士) - 属性魔法と知略担当。
万能:桜木 悠人 - 全属性、全ポジションに対応可能なチート。
リリアは、俺の「貴方を守るため」という言葉に、涙ぐみながらも頷いた。
「…わかりました。ユウトさんの成長を信じます。私が…このパーティーのリーダーとして、皆さんの安全を最優先に、依頼を選びます」
カエデは不満そうに腕を組んだ。「ちっ、シスターがリーダーかよ。ま、ユウトを独占するよりはマシか」
ルナは静かに口角を上げた。「面白いわ。聖女が率いる戦闘パーティー。これで、神殿の制限を気にせず、ユウトの能力を最大効率で引き出せる」
こうして、歪なバランスを持つ四人パーティー『紅蓮の光牙』が、正式に結成された。
リリアが最初に選んだ依頼は、『街の地下にある古代図書館の魔力障壁修復』。魔物の討伐はほとんどなく、知識と魔力制御が求められる、ルナの専門分野だ。
「この依頼なら、危険な戦闘はありません。それに、ルナさんの知識が最大限に活かせるはずです」リリアはルナに配慮した依頼を選んだ。
ルナは満足げに頷いた。「当然よ。この試練で、ユウトの『コピーキャット』を、戦闘チートから演算チートへと進化させる」
古代図書館の地下は、静かで、魔力の古びた匂いが充満していた。目的の障壁は、複雑に絡み合った魔法陣の結界によって成り立っている。
「ユウト、よく見て。この結界は、単なる防御魔法じゃない。数万行に及ぶ魔力演算によって、わずかな魔力で広大な空間を守る、高度な術式よ」ルナが説明する。
ルナは目を閉じ、数式のように複雑な魔力ラインを、杖で正確になぞり始めた。
「私は今、この魔力ラインの流れの予測と、演算式の最適解を同時に行っている。魔導士の真髄は、知識と頭脳にある。さあ、ユウト。貴方の『模倣者』が、私のこの『頭脳』をコピーできるか、試してみるがいいわ」
ルナは、俺の能力が「思考」の領域にまで踏み込めるのか、という挑戦を仕掛けてきたのだ。
ルナが複雑な魔力演算を行う間、カエデは暇そうに壁を磨いている。リリアは心配そうに俺たちを見守っている。
俺はルナの真横に立ち、彼女の魔力の流れと、目には見えない思考のプロセスを、懸命に追った。
その瞬間、俺の紋章が、静かに、しかし深く青色に光った。
【スキル:魔力演算を模倣しました】
俺は、ルナの魔力操作の知識そのものをコピーしたのだ。
獲得した瞬間、数万行の演算式が、俺の頭の中に流れ込んできた。それは、氷結弾の威力増加から、ライト・ウォールの耐久度計算まで、俺が持っている全ての魔法スキルの最適化プロセスだった。
俺はすぐにそのスキルを複合させた。
魔力演算+炎の掌握(俺のスキル)
炎の魔力が、無駄な熱を一切持たない、完璧に制御されたエネルギーへと変化した。
俺は右手に、最適な演算によって制御された、究極の炎の塊を生成した。それは、熱を持ちながらも形を維持し、ルナの魔力ラインに触れても、決して暴走しない、安全な炎だった。
「ルナ、手伝います」
俺は、演算によって最適化された炎の魔力を、ヒビの入った結界の魔法陣へと流し込んだ。
ジジジ…
結界は瞬時に修復された。その修復速度は、リリアの『神聖魔力供給』を使った時よりも、さらに速く、正確だった。
ルナは、自分の『頭脳』をコピーされ、それを超えられたことに、驚きで声が出ないようだった。
「嘘…私の思考回路を…貴方は、それを一瞬で最適化し、私の魔法よりも正確に、私の属性とは真逆の炎で…」
ルナの冷たい表情が、初めて熱を帯びた。それは、敗北の悔しさではなく、究極の知的好奇心が満たされた、喜びの表情だった。
彼女は、静かに杖を置き、俺に近づいた。
「ユウト。貴方は…私が見つけることのできなかった、世界の真理よ」
ルナは、俺の顔を両手で優しく包み込み、そのまま目を閉じて、俺の額にそっとキスをした。
「ありがとう。私の知識を、貴方に与えてよかった」
そのキスの行為は、カエデの情熱的なキスとは違い、誓いと最高の敬意が込められた、魔導士のキスだった。
カエデは遠くでそれを見て、ニヤリと笑った。「へっ、ルナのやつ、素直じゃねえな。でも、ユウト、これでパーティーの頭脳はあんただ」
リリアは、ルナの行動に驚きつつも、俺の能力が安全な結界修復に使われたことに安堵していた。
俺は、ルナの知的な愛情と最高の魔力制御スキルを手に入れ、この異世界で、誰も到達できない「思考のチート」という領域に足を踏み入れたのだった。




