表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/97

『龍災』呪い


 この世界には複数の“呪具”と呼ばれる物があった。


 それは、いつ、どこで生まれた物かは定かでは無い。しかし、どれも強力な能力を保有している、一級品であった。



 ()()()()の話ではあるが……当然、“呪具”には呪いが持ち主の魂を容赦なく喰い破ってくる。

 呪いを扱える人ですら、滅多に使用しない、使いたく無いと言うほどの物である。それ故、全ての“呪具”の効果がなんなのか、わからないままである。


 この“呪具”たちは長年、観賞用以上の価値はなく、最早武具として扱われた事は、片手で数える程度のことである。


 持ち運びにすら、死刑囚を使ったと記録にある。


 結果、“呪具”の使用方法は拷問か、処刑の二択になってしまった。


 その残虐性と、誰も使えない物の危険性により、多くの国では“呪具”の研究、使用、所持するだけでも罪に問われるようになった。


 ーーもし、もし“呪具”を()()()()()()()()があるとしたら?


 いつからか、誰かが唱え始めた理論。それは、およそ人間の口から出てはいけない、仮説と実験。その方法だった。




 時代は流れ、呪いを扱える“王”が現れる。『嫉妬の王』、ガブリエルであった。


 彼女だけが、()()()()の“呪具“を唯一使う事ができた。そして、扱えてしまった事により、理解した。そして彼女は、“呪具”を破壊した。


 それはあまりにも危険すぎたのだ、個人はともかく、国という組織でも使用を禁じてしまうほどの能力を持っていた。


 だがしかし、()()()()()この世界に残った“呪具”が存在する。


 壊すメリットより、残すメリットの方がはるかに良い物。だからガブリエルは、それらの“呪具”を世界各地に隠してしまった。


 そのうちの一つが、『円滅』であった。













 




 鉄の匂いが、鼻の中に充満する。


 今、すぐ横を鎖が通り過ぎていく。僅かに回避が遅れ、頬をかする。

 鎖に絡まった血が糸を引いて、地面に一条の赤い横線を作る。


 ベアルが負けじと剣を振るうが、その全てが鎖でいなされ、その鎖を断つ事が出来ない。


 魂までも凍らせる魔剣が呪いに押し負け、鎖を冷気が侵食する事は無い。


「チッ……面倒だな、その呪具」


 触れれない、鎖が囲う円の中にいてはいけない。その二つが、ベアルの判断を鈍らせる。


 『円滅』はレビィンから供給される、極端な量の呪いによって、呪具そのものの耐久性が大幅に上昇。


 結果、【墓標剣】の効果を退ける程の呪いがこもっている。


 目の前には『円滅』の先端ーー六角形の形をした分銅がある。そこから、まるで瞬間移動したかのように、目の前にレビィンがいた。


「しぶといわね……アンタっ!!」


 そう言いレビィン本人が、接近して攻撃を始める。


 これだ。触れれない呪具よりも、このワープが面倒なのだ。


 そして、ベアルを抱き抱えるように、背中に手を回す。妖艶な表情を浮かべるレビィンの手元には()()()()()()()が握られてーー


 ガチン……


 その音が聞こえた瞬間、光が曲がった。

 『円滅』と()()()()()()()()レビィンを残して巨大な空洞ができていた。


「あっぶねぇ……」


 ベアルは咄嗟に手にあった剣を地面に突き刺して、ギリギリのところでレビィンの抱擁を回避していた。


「冗談じゃねぇぞオイ……こんなの反則じゃねぇか」


 ベアルは歯噛みしていた。現状、ベアルはレビィンを攻撃する事は出来ない。無力化しようにも、彼女の戦闘力の高さと何よりも、手に握られた『円滅』が邪魔をする。


 レビィンは、また投げられた事にイラついたのか、体から出ているたくさんの口が微妙にだが、震えていた。


 震えを止め、またたくさんの口はベアルに対する、罵詈雑言を言い出した。


「ぶっちゃけ、攻撃よりも悪口の方がダメージが大きいんだけど」


 『なんでお前が』その言葉が、ベアルの精神を必要以上に傷つけてくる。過去の、自分の失敗をまた突き付けられるように。


 記憶に残っている。マギの死に顔。それがどうしても、頭から離れない。



 その思考に割り込んで、分銅が飛んでくる。甲高い音を鳴らして、ベアルは剣で分銅を弾いていた。


 そこからは、互いに言葉はいらないと話す事なく、いや話す事を拒絶するかのように、猛攻撃をレビィンは仕掛けた。


 右、左、上、下、様々な角度からの攻撃。触れれば、致死量の呪いがベアルの体を、めちゃくちゃに壊すだろう。しかし、ベアルはある異変に気づく。


 それは、彼女の頭にある大きさが不揃いの角。



 サマエルの記憶が正しければ、ガブリエルの角は二本とも同じ長さで、立派な黒い角だったはずだ。


 つまりーー


「レビィンは呪いを完全には、扱えてない」


 それは、小さな変化。しかしそれは、ベアルの予想を確かなものに変えた。


 静かに一つ、彼女の体から口が消えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ