『龍災』untitled
明けましておめでとうございます。
今年も今作をよろしくお願いします。
それは、あまりにも酷すぎる戦場であった。
聞こえてくるのは、腕や足を捻じ切られ痛みに悶えている兵士のうめき声。
ザブラたちを片した後、“竜人”は軍がいる場所に足を踏み入れた。
「うわぁぁっ!?」
また一人、首を捻じ切って命を奪う。
今まで殺してきた兵士の全ては、片手間で漏れなく殺されている。ふさがっている片方の腕には、ザブラが持っていた『儀魂剣』を刃が自身の身に食い込むこともお構いなしに、大事そうに抱え込んでいる。
歩いて向かってくる“竜人”の目には、静かな怒りを孕んでいた。もう、この場には生きている人間はいない。
ビチャビチャと、不快な音を鳴らしながら血の上を静かに歩く。もう一度、今度は両手を使って『儀魂剣』をしっかりと抱え込む。
彼の血が、彼の足元を汚す。
「……」
彼の目にはもう……
ーー盲目的な、『正義』しか映ってなかった。
剣を抱え込む男のその姿は、首から二本の腕を生やし、その手の先が自身の両目を潰すように、突き刺さっていた。
【過敏】な『正義』が、静かに次に向かっていた。
「なかなか、しぶといな!お前!!」
“悲嘆”が放つ魔力糸が、フェルの顔のすぐそばを横切る。
今、この戦場はかなり“悲嘆”に偏っている。
フェルが作った数多の罠や、障害物はことごとく壊される。おまけに、フェルの射撃も最初の一発を除いて、全て叩き落とされている。
『クソっ、弾切れかよ』
“悲嘆”に対する射撃をやめ、即座に物陰に隠れる。
そもそも、フェルは理解していた。自分では“悲嘆”を倒せないと……
それこそ、倒すなら【過敏状態】でもしない限り、話にならないだろう。
ここでフェルが考えたのは、勝利条件の変更である。
元々、この『龍災』は“悲嘆”が始めた物。なら何か目的があると推測が立つ。わざわざ発生を早めてまでだ。
(一つは、既に判明しているおり、それが『怠惰』への接触または殺害)
(そして二つ目だが、これはおそらく“王”達に【大罪狂化】を使わせる事が目的だろう)
(使わせる、よりもどの程度まで強化されるのか、それが知りたいのだろう。現に各地でベアルやルシファーの魔力が極端に上がっている)
元々フェルは、“悲嘆”をここに留まらせて、他の皆んなが来るのを待って、数の力で倒すつもりであったがしかし、各地での【大罪狂化】の応酬がフェルの思考を改めさせる。
『とんだクソゲーだろ……』
悪態をつきながら、フェルは新しく銃器を作る。もう既に、遠隔での精製は警戒されている。もうあのネタは通じないだろう。
銃弾を放ちながら、さらに思考を進める。
今“悲嘆”がやりたい事は、フェルを倒して他の“王”の所に敵として加勢しに行く、という事。
“悲嘆”はわざわざ【大罪狂化】をさせるためだけに、戦闘を長引かせているのだから。
最初に送った敵や、“竜人”で【大罪狂化】を使ってくれれば、御の字でそれでもダメなら他の者を向かわせる。それを続けて、【大罪狂化】を使わせようとしているのだ。
「おっと……今のは、危なかったな」
そう言って糸に絡めたのは、フェルが作った銃器から放たれた銃弾。僅かながら魔法が込められている。
だから、今オレがするべき事は、“悲嘆”をこの場に留まらせて、権能を使わせる事。
少なからずとも、“悲嘆”との戦闘はもう既にかなりの数をこなしている。次に何をするのか程度なら、かなり分かるようになった。
『あっぶな!?』
横に一閃。切断する魔力糸が容赦無く、フェルの頭を掠める。それを間一髪、しゃがみ込む事で回避する。
気合いを入れ直すため、これまでの戦闘でずり落ちた、首から口を覆う布をしっかりと引き締める。
『この『龍災』の行く末は、マジでオレにかかってんじゃん……』
と弱音を吐くフェルであった。
はい、実はこの『龍災』フェル君が“悲嘆”を抑えてないと、漏れなく全員死んでます。
“悲嘆”はただ“六王”達の全力が見てみたい、という一心で色々仕込んでました。
『胎』の変化は“悲嘆”がある程度想定……ドミニオンが負けて、『胎』本体がやられる事を想定して【魔技駆動式】を与えました。
レビィンは、あっラッキー。みたいなノリです。『円滅』は少しでも【大罪狂化】してくれる確率を上げるため、与えました。ちなみに、“悲嘆”はベアルとレビィンの関係は分かってません。たまたまです。




