表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/97

その玉座に居座る者は、誰よりも傲慢であった 其の一


「どけと言っているのが……聞こえなかったのか『支配の王(ドミニオン)』?」


 もし、この場に数百人の人間がいたのなら。その全てが、身分関係なく頭を垂れていたのだろう。


 ーーまるで見下ろす事を、同じように立つことすら許されない。


 対等では無いと、世界が指を刺す。それほどまでの威圧が彼にはあった。


「まぁ、正直なところ。代わって欲しかったと思ってはいたが」

「能力は?」


「あぁ。おそらくだが、『一定時間での適応』と言ったところだが、一回の適応で俺の『支配の王(ドミニオン)』がダメになった。その理由は分かってはいない。以上だ」


 ルシファーの急な質問に、簡潔に答えるドミニオン。焼かれた半身を引きずって、ルシファーの隣にまで歩いて行く。そしてすれ違いざまに。


「何分で勝てる?」

「分もいらん」


 そう吐き捨て、ドミニオンは最後に苦笑しながらルシファーに倒れ込んだ。それを優しく抱き留め


「よくやった。後はいい」


 そっと、意識の無い体を地面に丁寧に下ろした。


「さて……」












 急ではあるが、“悲嘆”について少し語ろう。


 この世界の歴史において、“悲嘆”が成した事は……何一つ無い。不思議な事に、何も無いのだ。


 それだけではなく、“悲嘆”がどこ出身か、どの様な戦い方をするのか、どんな能力を持っているのか、どんな声で喋るのか、髪の色、性別、所属。一切が何も記されていない。分かっているのは、“魔人大戦”という戦いを起こしたのみ。


 残っているのは伝承のみ。それも“悲嘆”という名前のみである。それ故に、“悲嘆”の情報やそれに関係する物は価値があまりにも低い。それは、“悲嘆”の伝承が曖昧すぎて価値をつけようにも、つけれないからだ。


 それでも、ルシファーは“悲嘆”の情報を集め続けた。無駄だと分かっていたはずなのに。それでも一つ、長い年月をかけて“悲嘆”の姿を描いた壁画が発見される。それには、大きな壁に一人。ポツンと立っている人影が写し出されている。服装はそこまで豪華ではなく、手には何も持っておらず、首だけをこちらに向けている、肝心の顔は何故か()()()()()()()()()()


 その姿を見たルシファーは、恐怖を感じた。

 

 この光景は何を意味するのか、何を思ってこれを描いたのか、彼は巨大な壁の前で何時間もそれを見続けた。









 



 つまり、何が言いたいのかというと“悲嘆”に関係する事は、ルシファーにとってかなり重要であるという事。


「その能力。『胎』の権能だけではあり得ない適応の速さ。“悲嘆”が関わっているのだろう……まぁつまり、今から()()といこうか」


 雰囲気が変わる。空間が軋む。生物が悲鳴を上げる。


 “六王”のうち、二番目の“王”の()()が今、モルモット()に向けられる。


「ーーそれは、至高の王座であった。数多の者がそれに焦がれ、手に入れようとするが誰も届かない」


「ーーそれは、数多の屍の上に建っていた。我先にと他者を踏み付け、殺めて行く……脆い骸骨の上に建っていた」


「ーーそれは、太陽のように照らし続け不可侵を創る。そこに一人、我が物顔でその椅子に堂々と腰を下ろしたーー」











「ーーその玉座に居座る者は、誰よりも傲慢であった」













「【大罪狂化(セブンス)】『傲慢之王(ルシファー)』」



 その姿に確かに見惚れていた。玉座(太陽)よりも輝かしい貴方に。


 あぁ、その足が地面につく事自体が、目の前で息をする事自体が、目の前の“当たり前”全てが彼の機嫌を伺っている。


 異常が()()()()()()()()()()()。彼が正しいと言ってしまえば、それが正しくなると、そんな錯覚さえしてしまう。


 そして、ゆっくりと口を開いていく。それは万物が喝采を上げる、“玉音”であった。



「跪け、この我に」


 世界が、宇宙が、物体が、生物が、空間が、頭を垂れたその瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ