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『龍災』『胎』

メリークリスマス!!


「ガハハハッッ!!!」


 口が裂けるほどの笑みを浮かべる。


 次々と大雑把に振るう両腕から、衝撃波が放たれ抉れた地面と共にルシファーを吹き飛ばす。


 岩場にものすごい速度で激突する、続いて石礫がルシファーを襲う。それにより辺りに砂埃が舞い散り、視界をふさぐ。


「ルシファー!!」


 吹き飛ばされる光景を見て、すぐにドミニオンが追撃を防ごうと前に入る。しかし……


「どけ」


 背後から放たれる圧に、ドミニオンが一瞬たじろぐ。だがその隙を見逃すわけが無かった。


 ドミニオンの視界の端に見えたのは、ルシファーを飛ばした少年が自分に向かって、拳を振り絞っていた。


 ゴンッ!!


「!」


 振るわれた拳を間一髪で避けるが、風圧が頭を擦り血が流れる。


「【主権(キュリオテテス)】『圧縮の王(ヴェスタ)』」


 体の半分が動かず、ルシファーと戦った時の数割程度のパフォーマンス。それでも『圧縮の王』で襲って来た少年の周りの『空気』を圧縮して、押し潰す。


 グシャリと、骨が潰れる。およそ鳴ってはいけない音が響き渡る。断末魔すら無く、その体は丸い球体になった。ドミニオンはすぐにルシファーの所に駆け寄った。



 それで終われば、よかったのだろう。







 『【魔技駆動式】更新ーー』


 頭に聞こえたその音に、ドミニオンはバッと振り向く。そこにはーー


 球体から逆再生したかのように、“少年”が元の姿で立っていた。

 

 時は少し戻るーー










 



 地上と“魔境”が同時に、襲撃に合うおよそ二日前。その時『隠者』は『衰』と『胎』の二つを仕掛けようとした時であった。


『ちょいちょい、ちょっと待って』


 外出しようとしたら“悲嘆”が手招きし、呼び止めた。


『何です?いきなり呼んで?』


 『隠者』は不思議そうに歩いて来た、“悲嘆”は薄ら笑みを浮かべて、『隠者』の手に一つ術式を貼り付けた。


『え?これなんです?』


『えっとね。これは俺がよく使ってた、ていうかお薬感覚で使ってた術。『衰』か『胎』……『胎』で良いや。そいつに貼り付けといて』


『話が見えねぇんですけど?せめてこの術が、どんな能力かくらいいっても良いので?』


 手に貼られた術式をまじまじと見るが、書かれている式が複雑すぎて理解が出来ない。


『それはな……』












(小石程度の大きさに圧縮したはずなのに、なぜ平然と蘇っている!?)


 ドミニオンが感じているのは、明確な“理不尽”に対する怒りであった。


 復活した少年は、何が起こったか分からない様子で、自身の体を見回していた。その内に、ドミニオンは再度自身のスキルを使用する。


「『支配の王(ドミニオン)』【主権(キュリオテテス)】『圧縮の王(ヴェスタ)』!」


 また少年の周りの空気が、押し潰さんと迫って来る。しかしそれは、少年の体の周りで止まっていた。


「これは……何だ?」


 スキルは確かに発動されている。事実、少年の周りの空気は押し潰すまではいかずとも、その場に留めている。


「これが、【適応】?いやしかし、いくら何でもこれは……()()()()


 ドミニオン自身、このように【適応】して来る相手との戦闘は別に初めてでは無い。この手の相手は【適応】すると面倒な為、だから【適応】する前に全身を粉々に砕くスキルを使用した。


 それでも、まるで()()()()のように体が元に戻り、しかも先程使ったスキルが効かなくなっている。


「適応と再生が同時に行われている、とでも言うのか……」


 しかし、そうだとしてもこの適応の速さには、説明がついていない。


 あの時確実に、あの少年(化け物)は絶命した筈なのだ。それなのに、『圧縮の王』に【適応】していた。


 異常だ。例え『王域技(テラースキル)』や『神域技(ゴッズスキル)』であったとしても、()()()()()で適応してしまうのだろうか?


 答えは否だ。


(おそらく、あの時頭に響いた【魔技駆動式】というのが関わっている)


「なら、これはまだだろう。『支配の王(ドミニオン)』【主権(キュリオテテス)】『火天の王(アポロン)』」


 パチン、と指を鳴らすと少年の体から、突然炎が燃え始める。敵を焼き尽くそうと、更に火力を上げる。


 しかし、燃え盛る炎の中彼は平然と、退屈そうに欠伸をしていた。


「は?」


(何だこれは……『火天の王』はまだ、出していないはずなのに……)


 【魔技駆動式】という()()は、“悲嘆”が独自に作り出した術式である。


 効果は、“非生物”限定に発揮する。それ故に今まで誰にもその存在を知ることは出来なかった。


 十分に一回。そのペースで【魔技駆動式】は更新される。その度に体は元に戻り、その間の戦闘の履修を行い、理解する。そして体内で、『抗体術式』という術を生成する、それを対応する術に当てることで効果を無効に出来る。


 しかし、この術式の真価は()()()()では無い。


 それは、芋づる式に行なわれる『抗体術式』の連鎖作成である。


 それが、『支配の王(ドミニオン)』とは致命的に相性が悪かったのだ。


 これにより、先ほどの『圧縮の王』を使用した時に『圧縮の王』に適応しただけで無く、『支配の王』のスキル自体にも適応を始めていた。


 そのため、『支配の王』の中にある他の“王”のスキルさえも、【魔技駆動式】の適応判定を受けたのだった。


 つまり今、ドミニオンはこの少年に対して全くの攻撃能力を持っていないという事である。


 適応自体は、更新した時点で完了しており、これを倒す為には、『次の更新前にチリも残さず殺す』しか無い。肉片一つあればそこから復元が可能である、しかも腕を無くそうが、頭が消えそうが、更新して仕舞えば魔力、体力全てが()()()()


「クソ……」


 肩で息をして、苦しそうに前を見るドミニオン。【神苑(カムイ)】で焼かれた所がまだ治っていない。痛みのせいか頭が回らず、思考がまとまらない。そんな時……


「聞こえなかったのか?ドミニオン」


「ーーどけと言っているだろ?」


 “傲慢”が崩れた岩場から、這い上がって来た。体の周りに、ふわりと浮かんで見えるのは、膨大な熱量を持った“星”であった。

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