『龍災』現代の冒涜者と古代の王
よろしくお願いします!
教会の、祈りを捧げる場で宗教関係者の人が見れば即倒しそうな戦いを繰り広げているフェルと“悲嘆”。先程ダメになった散弾銃を分解して、再度フェルの手元に銃器が造られる。
その様子を“悲嘆”は、しっかりと見ていた。
『これでも、食らっとけ!!』
錬金術モドキで造られた、大量の壁。フェルが離れている“悲嘆”の周辺にまで造られている壁。一つとして繋がっておらず、少しずれている。フェルがそう言い隙間から走って投げられのは……
「手榴弾?」
のような形状をした、土の塊。爆発もしない、ただのそれっぽい泥団子。しかし、本物そっくりの質感、凹凸、色合い。そのため、“悲嘆”は迷った。
先程フェルはこの世界に無い“銃器”の制作を行なっていた。故に手榴弾程度、作れてもおかしく無いのでは?という疑問が“悲嘆”の頭に浮かぶ。
そして、偽物という可能性が払拭できぬまま、中途半端な魔力糸の網を張る。それがフェルの狙いだった。
手元にある銃を“悲嘆”に向ける、それを横目で確認した“悲嘆”は、どちらにも対処できるようにもう一枚、さっき張った網よりも厚いものを作った。
左斜め前は手榴弾、反対方向からはフェルの銃。そしてここで投げられた手榴弾が偽物、ただの土くれであると見抜く。
「残念でしたあっ!!」
手榴弾の所に貼っていた網を解除して、フェルの方を強化する。そしてここでようやくフェルの方を向いた。
フェルの手には、拳銃が一丁。握られていた、不自然な形で、片手で拳銃を握っているのは、別に不思議では無い。反動が少ない銃であれば片手でも扱える、しかし今フェルが握っているのは反動が少ないフルオートの拳銃では無く、反動が強いリボルバー式拳銃である。
(何で、反動が強いリボルバーを片手で?)
そして、反対の手は何故か地面に手のひらをつけていた。
“悲嘆”は違和感を感じるが、すぐに行動に移す。目の前のフェルに向けられた魔力の網の強化に、さらに集中する。
拳銃とはいえ、この距離ではしっかりとダメージになると思ったからである。
そして……
ドンッ!!
“悲嘆”の体に衝撃が走った。
しかしそれは投げられた手榴弾でも無く、フェルが向けていた拳銃でも無く……
「下からっ……だと?」
彼の体に、穴が空いていた。小さな、小指程度の大きさの穴だったが、“悲嘆”は確かなダメージを負っていた。
『誰も、“手元でしか造れ無い”なんて言ってねぇよ』
(最初に手元で造っていた銃器はフェイクかよ!)
“悲嘆”の足元からは、たった一発。弾丸を手早く発射出来る、ダレンジャーと呼ばれる二発しか弾を装填できない小型銃。
それが足元から生えていて、銃口を“悲嘆”の胴体に向けていた。
腹の傷をすぐに塞いで、復帰しようとするが当然回復を待ってはくれない。
(クソッ、やられた!しかもあいつわざと弾を体に残しやがった!!)
放った弾は、一発。威力も精度も悪い。しかしフェルはその銃を好んで使う。誘導や相手を騙すために。決めの一手として、好んで使う。
『悪りぃな!室内戦で俺に勝てると思うなよ?“悲嘆”よぉ!!』
もう一度、壁の隙間から手榴弾を“悲嘆”に投げ入れる。そしてそれと同時に後ろから
ドンッ!!
「!?」
銃声が聞こえる。そして、投げられた手榴弾には目もくれず、音がした方に腕を振るって魔力糸で弾を落とそうとする。
しかし
『残念、そりゃあ……空砲だ』
そう言うフェルの手に握られているのは……
「今度はライフルかよ!?」
【AK47+】フェルがそのオマージュした名前を聞くのは、もう少し後の話である。
“悲嘆”も流石に学習、同じ轍を踏まないように立ち振る舞う。
“防御”では無く、“攻撃”に転じた。構えるフェルに向かって魔力糸の切断が迫る。フェルが引き金を引き、弾が射出される。だがそのほとんどが切り落とされる。
しかし、ことごとく弾が切られているのにも関わらず、フェルはニヤリと笑って。
『おいおい……後ろがガラ空きだよ?』
ゴンッ
確かな質感が、質量が、背中越しでもよく分かる。何が当たったのか振り向くまでも無い。
「マジかよ……」
『今度は、本物だぜ?』
“悲嘆”の背後で、手榴弾が炸裂した。
足音が聞こえる、“悲嘆”が抜けた洞窟で“隠者”が面白そうに画面に齧り付いていた。
「うわ〜、“悲嘆”めちゃくちゃ振り回されてる。ウケるわ〜」
おそらくだが、“悲嘆”がこのように苦戦する事自体、今までの戦いで十も無いの彼がこんな風に悔しそうに戦っている事自体が珍しい。
「いやーあの人でも、あんな風に振り回されることがあるんですね」
「お?『雷帝』殿か。足止めご苦労様でしたっと」
手に二本の剣を持った姿で、『雷帝の王』が帰ってきた。ただし、満身創痍でだが。
「正直言って、結構ギリギリでしたよ。奇襲するタイミングがズレてたら、普通に負けてましたからね」
「あのバグ相手に、勝ちはしなくとも戦闘不能にしただけでも、大金星ですよ」
“隠者”の隣に腰掛ける『雷帝』。その表情はどこか疲れが見える。
「そう言えば、“正義”が動いたそうですね。これで、動いていない“竜人”は一人だけですね……アレ、ちゃんと動きますかね?」
「私に聞かないで下さいよ、頼むから、マジで。『奇歌姫』の準備もようやく終わったばっかなんですから、勘弁して下さい」
そう言う“隠者”の様子は、かなりげっそりしていて、かなりの重労働だという事が察される。
「お?噂をすれば……何とやらですね」
『雷帝の王』が何かを感じたのだろう。席を立ち、振り向くとそこには
「女の子?」
一人の少女が立っていた。
「結構、時間がかかりましたね。自我の確立は終わりましたか?」
質問された少女は、少しの間黙りこくった後、すぐに返事をする。
「ごめんなさい。少し……“人間”だった頃の思い出に浸っていたの」
「そりゃあ、過ぎた事を聞きましたね」
「いいえ、構わないわよ。それよりも、『雷帝』さん?でしたっけ?」
「えぇ、何です?」
ふと、彼女の口からふっと笑みがこぼれる。そして、嬉しそうにこう伝えた。
「連れて行って欲しい所が、あるの。出来る?」
「ちょっと厳しいですが、まぁ運ぶだけなら、何とか」
「なら、お願い。私を連れて行って……ベアルの所まで」
「そう言えば、貴女の名前を聞いてなかったですね。覚えてる範囲で大丈夫ですので、教えてもらっても?」
“竜人”は、複数の魂が混じるせいで、生前の記憶が失われるなんて事がザラに起きる。現に『雷帝の王』は自身の事のほとんどを覚えていない。
「心配ありがとうございます。覚えていますし、忘れたくありません。私の名前は……」
「レビィン。そう、レビィンよ。よろしく」
今回の『龍災』で最初に始まったカフジエル対『雷帝の王』戦の解説をしたいと思います。
読んでいてみなさん……『カフジエルよっっわ』と思ったでしょう。まぁ作者も書いていてちょっとやられ過ぎじゃ無い?と思いましたがちゃんとした理由があります。
カフジエルの敗因としては、主に三つあります。
一つ目、相手が『雷帝の王』だったから。
正直なところ、“悲嘆”以外なら全員を瞬殺出来るスキルをカフジエルは持っています。しかし、それは『雷帝の王』相手だと瞬殺とはいきません。それは『雷帝の王』の戦い方にあります。
作中でも言いましたが、『雷帝の王』は勝負を一瞬で決めるのでは無く、時間をかけさせてとにかく“長期戦”を見越した戦い方と『雷帝の王』のスキルが雷を用いる能力なため、雷に耐えれるように体が変異しています。要するに耐久力が別次元なんです。
二つ目は、『禁錮剣』を使用したこと。
はい。ぶっちゃけて言うなら『禁錮剣』を使ってなかったら、カフジエルが勝っていました。
『禁錮剣』には、みなさんご存知の“力”のアルカナが入っており、【墓標剣】の中では珍しく使用者を選びません。ただし、この剣は他のと比べて使用者の精神を大きく蝕むクソ使用となっています。作中でカフジエルがなかなか抜刀が出来ない描写がありますが、それは単なる自身の気持ちの問題になります。
話を戻しますが、『禁錮剣』は【墓標剣】の中ではダントツで【過敏状態】になりやすい物でした。そして作中で一度でも【過敏状態】になったら終わりと言いましたが、【墓標剣】シリーズはこの例外にあたります。理由は、本来の使用者では無いためだからです。権能は本来、肉体にこびり付いた汚れというイメージですが、【墓標剣】はその汚れを取り出して、汚れと使用者の間に仕切りを設けている感じです。
【過敏状態】はその汚れの割合を自分から広げようとする行為なため、自分で止めるのは不可能に近い。
要するに、爆発しやすい物を運悪く爆発してしまった。という感じです。
最後の三つ目は、戦うタイミングが悪かったからです。
リシュナとの交渉中に、いきなり乱入されて引っ張り出されてしまった。そして、急遽『龍災』が勃発。自分の国の人は?ベアルはどうなった?ルシファーは何をしている?とこのような事を考えないといけなくなり、戦うことに割く思考が残っていなかった結果、短絡的に『禁錮剣』に手を出したという事です。
後、フェルの手が両手とも生えている描写がありますが、これはリシュナにまた生やしてもらいました。はい。すいません。




