『龍災』フェル
「まぁ、ちょっとした寄り道だったね」
「アレを“寄り道”と言える、“悲嘆”さんが恐ろしいですよ……」
「そんな言わなくても……」
二人、トボトボと歩いて目的地まで行く。片方は無傷でもう片方は今にも死にそうな裂傷を受けている。
「でもな、“竜人”は基本的に核となる魂が無事なら、どんな傷を負おうとも問題は無いんだよね〜」
「いや、痛いものは痛いんですよ?貴方、絶対友達少ないでしょう?」
「それを出すのは禁句だろ〜?別にいないわけでは無かったけどさ……」
「へぇ。そいつは、とんだ物好きがいるもんですね……」
「まぁな……」
しばらく歩き続けて、そして目的の建物の前に立つ。
「ふざけるのも、ここまでだな。さて、ちょっと真面目にしますか」
「いますね、“塔”が」
『雷帝の王』が“悲嘆”の隣に立ち、扉の奥にいる空気が悲鳴を上げている気配に戦慄を隠せない。
「あ、『雷帝』帰って良いよ」
「え?」
『雷帝の王』の間抜けた声が、小さく聞こえた。
「え?いやだって、もう限界でしょ?それに“塔”は俺と相性が悪いから、カバーし切れるかわかんない」
真面目な顔で、そう告げられ『雷帝の王』は渋々帰路にたつ。帰り際に一言
「無茶だけは、しないで下さいよ?」
「お前がそんな事を言うなんて……明日は槍だな」
「真面目に心配してるんですけど?」
「わかってるよ」
“悲嘆”がこちらを見ずに手を振る、『雷帝の王』が少しの笑みを浮かべて消えるように、帰った。
一人残された、“悲嘆”。今から戦う相手は、自身と相性が悪いと理解はしているが、おそらく……当たりなのだ。
「さて……何が出るな〜」
鼻歌交じりで、教会の扉を開ける。すると、脳天を目掛けて一条の物資が“悲嘆”の頭を打ち砕いて通り過ぎる、だが直前で止まっていた。
「オイオイ、即死トラップは嫌われるぜ?『怠堕の王』さんよ?」
『悪りぃが、俺は『怠堕の王』知らねぇよ。でもま、色々話してぇって気持ちも分かる、とりあえず死んどけ』
バンッ!とフェルが握っている銃から、もう一発銃弾が放たれる。それを“悲嘆”は、笑って受け止めた。
「ははッ!!銃器を知ってる異世界人がいるなんて驚きだなぁ!オイ!」
大声を上げながら、右腕を豪快に振り上げる。
そして、フェルはまるで結果を知ってるかのように下にしゃがんだ。
直後建物が、教会がずれた。
『糸?いや、見えないから“魔力糸”ってところか?』
「へぇ、コレを一発で見破れる人なんてそんなにいないんだけどなぁ」
手の内がバレたと言うのに、“悲嘆”は相変わらずヘラヘラとした表情で話している。その隙にフェルは、新しい武器と、障害物を作り出す。
(全く……ぶっ壊れにも、程があるだろ)
なんて思いながら、銃器の確認を慣れた手つきで手早く行っている。
『俺、刃物がダメだから。銃器で仕留めるしかねぇんだわ。そこんとこよろッ!』
握られているのは、シーグレン・オートマチック・ショットガンと呼ばれるガスや反動ではなく、火薬の慣性の力だけで動く散弾銃である。それでも、フェルの錬金術モドキで造られたその銃器は、一回の使用で壊れてしまう程、脆い。
火薬があまり普及していないので、一点で貫くスナイパーのような銃器では無く、質の悪い火薬でも十分な効果を示す散弾銃の方が、この場合は良い。
ドンッ!!と放たれる散弾。先程よりも、当たる面積が大きくなり威力は弱いが当たると面倒。そんな状況を作り出す。
同時に、用意していた仕掛けを発動。“悲嘆”の足元が小さく爆破する。地雷のように土を撒き散らす、そして“悲嘆”は反応して、後ろに後退した。
反射神経の良さが、ここでは裏目に出た。後退したところの足元、左足のところがいきなり二十センチほど沈む。そしてそこに密集している散弾。
「やっべ」
ほぼ全ての弾を真正面から、“悲嘆”は受けてしまった。
『まぁ、防いでるだろうとは思ったが……ここまで来ると感心すらするわ』
「いや、ね、流石に無視出来ないダメージだったからね。ちょっとズルしたよ」
あの、当たる瞬間。“悲嘆”は、魔力糸を何重にも編み、膜のようにしてフェルの散弾を切り防いだ。
『それをされると、オレ、結構詰むんだけど?』
再度散弾銃を造り出し、障害物をさらに増やす。お互いの隙間を埋めるように。
「まぁまぁ、とりあえず。楽しませてくれよ?」
“悲嘆”の顔がだんだんと歪んでいく
「最後まで!」
ーー『笑み』で歪んでいった。




