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『龍災』最強とは


 「【神苑(カムイ)】」


 そう唱えた瞬間、ルシファーの両手の中に小さな炎が一つ、ポツンと浮かび上がる。その瞬間の出来事だった。



 戦場から一瞬、光が消え真っ暗になった。いや、真っ暗になったと()()する程の光に、眼球では感知できないほどの光量だった。


 『一等星(シリウス)』などが可愛く見える、見えてしまう瞬間だった。

 

「ぬっ、ぐうああづっっっ!!!」


 『火天の王(アポロン)』と『侵食の王(ポセイドン)』の両方を同時に発動。炎への耐性を限界まで引き上げる。そしてなんとか攻撃を避けようとするが、『神力』によって中和され真っ正面から叩き付けられた。


 唯一残っていたのは炎への耐性だけだったが、当然その程度で防げるほど甘くは無い。


 ーー二度目の死


 それが頭を過ぎる。それを避けるために、『支配の王』の能力を十全に使うが、その全てがものの数瞬で無に返される。


 回生の王。中和。反射の王。中和。懐仁の王。中和。壊光の王。僅かな抵抗の後、中和。護星の王。中和。震音の王。中和。圧縮の王。中和。練刃の王。中和。


 防御能力を上げても中和で元に戻され、反撃しようにも、また中和される。通常、普通の『神力』ではここまでの速度で中和するのは不可能である。だが神具は『神力』のみで作られた神の武具。中和速度が格段に違う、天使が扱える切り札である。


 光に揉まれながら、必死に抗うがその全てが中和で消される。決死の形相で最後、ドミニオンは……


「ふっ、ふっ、……ハァ」


 耐え切った。最後にもう一度『侵略の王(ポセイドン)』の【海玉】を使用して、【神苑(カムイ)】の起動を僅かにずらして凌ぎ切ったのだ。


 体の半分が焼き爛れ今も燃えているが、幸いにも足は無事だが皮膚が溶けて消え、腕に関しては肉が炭化しかけていた。もはや痛みすら感じない。


「俺の、負けだな」


 ドミニオンがゆっくりと呟いた。この状態で戦闘を続けても、おそらく負けるだろうと踏んでの言葉だ。


「どう言う、つもりなんだ」


「なに……そもそも、死んだ筈の存在である俺が生きている者にどうこうするのは、道理に反するからな」


 回復を試そうとするが、燃えている炎に中和され上手く回復ができない。その事に頭を悩ますが


「我とお前は、一応敵では無いのか……」


 ルシファーの言葉を聞いた時、ドミニオンは次の言葉を遮る様に無事な方の指を立てて


「一つ。訂正して欲しいところがある。別に俺は“悲嘆”と呼ばれる存在に従ってるわけでは無いぞ?」


 ドミニオンは続けて言う。


「確かに、俺たちはそいつに蘇え……生み出された。だがその場にいた、お前らのところで言う“竜人”と呼ばれる者達のほとんどが自立していると言う感じかな」


「それに、“悲嘆”は俺たちが裏切ろうと裏切らまいと変わらんよ。俺は一回だけ見た事があるが、“アレ”は強すぎる……恐ろしい程にな」

















 ルイラ皇国周辺、北、森林地帯。


 『四卿』が揃って、魔物の対処に向かっていた。



「怖え、怖えよ……ここ。助けてよ〜ビクトリア〜」


「もう!シャキッとしなさい!!」


 ザブラの背中をビクトリアがバシン!と強く叩く。ザブラは前にふらつくが、すぐに元に戻る。


「ほんっと、アンタ達って仲良いわよねぇ」


「ラブカ!そんな事言ってないで、このヘタレをなんとかしなさい!!」


「はぁ……」


 そんな日常会話の足元には、大量の魔物の死骸が転がっている。


 『衰』が消えた事により、国が軍を使用して『龍災』の収束に動き出した。『衰』から逃げる様に動いていた魔物の討伐を最初の目標とし、先程大方の魔物を討伐し終えたところだ。


 そのせいか、ザブラのスイッチが切れヘタレ(通常)モードに戻ったのだ。


「もう嫌だぁ!!お家に帰る〜」


「【ちゃんとしなさい】」


「ハイ……」


 ラブカの『呪言』が炸裂し、強制的にザブラのヘタレモードが解除され周囲を探索し始める。


「やっぱり便利よね、『呪言』って」


 ビクトリアが呟くが、本人は苦い顔をしており


「そんなに便利な物じゃ無いですよ、たまにですけど失敗したりしますし、結構使うにしても厳格なルールがあるんですよ」


「話変わるけどさ……リシュナちゃん、元気にしてた?」


 ビクトリアが照れくさそうに、ラブカに聞いてきた。ラブカはニヤリと笑って


「ええ、元気でしたよ。この後、少しぐらい顔を出してもいいのでわ?」


「うーん、そうなんだけど。あのバカを置いて行くと思うと……ね?」


「確かに。それに彼女、サマエルの現し身になった……成ってしまったのよ」


「そう。それじゃあもう、アイツに会わせられないわね」


 ラブカの握っている手に力が入る。血が出る程の力が、そしてビクトリアもどこか残念そうに前を見ていた。


「あの二人、気が合っただろうなぁ」


「そうですね」


 その時、頭の中に遠くの部隊から声が上がる。


『ラブカ殿、ビクトリア殿、ザブラ殿!一度本部に戻って来てください』


 魔法音声によって聞こえたそれは、おそらく作戦終了の知らせなのだろう。


「やっぱり魔法音声には、慣れないわね」


 ビクトリアが自身の頭を軽く叩いて、調子を戻す。すると


「大変だ、ラブカ!ビクトリア!こっちに来てくれ!!」


 ザブラの声が、林の中から聞こえて来た。何事かと二人は走ってザブラの元に駆けつける。


「どうしたの!!」


 ビクトリアが声を上げ、その声に気付いたザブラが何をあったか話し始める。


「いや、あそこに倒れてる人がいたから、報告したんだ」


「なんだ、漏らしたのかと思ったわ」


「漏らすわけ無いだろ!?そこまでビビりでは無いぞ!まぁとにかく、声をかける前にあの人が魔物だった場合、一人で対処するのが危険だと思ったから声をかけたんだ」


「初めから、そう言えばいいのに」


「言おうとしたけどねぇ!!」


 このままでは埒が明かないと思い、ビクトリアが止めに入る。


「ハイハイ、そこまで。いい加減にしなさい、ラブカもザブラもさっさと終わらすよ」


 そう言って、ビクトリアが倒れてる人の所に歩いて行く。


「大丈夫ですか?」


 ビクトリアが声をかけたその時ーー












「唐突だけどさ、最強のアルカナってなんだと思う?」


 『龍災』が始まる、少し前に“悲嘆”がドミニオンにそう問いかけた。


「そもそも、俺の時代にアルカナなんぞ知りもしなかったが、名前からして『死神』とか、『審判』あと……『世界』とかも何か強そうだな」


 とドミニオンが胸を張ってドヤ顔をする。“悲嘆”は驚いた表情をして……





「んー、残念!不正解!!」


 ズッとドミニオンが体制を崩す。お笑いにあるようなズッコケのような感じだ。


「いいせん言ってたけど、『世界』『審判』『運命の輪』は基本的に不干渉なんだよね。でも、結構強いよ。それでもあのアルカナには勝てないだろうねぇ〜」


「そこまでなのか?」


 ドミニオンが少し拗ねた表情で聞いてくる。“悲嘆”はそれを笑顔で返し


「まぁ『世界』だったらギリいけるか?そんじゃま、正解を言いますか!」


「はよいえ」


 ドミニオンが急かし始めた。


「このアルカナはね有史以来、使用者と保持者になった人間は()()()()


 その言葉にドミニオンの表情が強張り、驚きの表情が隠せてない。


「司る能力は【不変】【不屈】なんて言われてるそのアルカナの名前はね……」







「『正義(ジャスティス)』」






「満場一致の“最強”だよ」

















 ポタポタと何か液体が落ちる音が聞こえた、何が起こったのか反応が出来なかった。


「え?」


 声をかけたその時、自身の胸にポッカリと()()()()()



 今、数百年の時を経て再び戦場に降り立つ。


 ーー『正義』が


「ビクトリア?……ビクトリア!!」


「【動くな】!!!」


 ザブラは剣を、ラブカは『呪言』を唱える。呪いの力で必ず発した言葉通りになる『呪言』


 動けない状態の相手に、ザブラは剣を振りかぶる。墓標剣の方ではなく、普通の剣。ラブカやビクトリアがいるための配慮だが同時にスキルを発動する。


「『神域技(スキル)』『剣神乃迫撃(アレス)』!!」


 その一撃が、大地を穿つその一撃。それが動けない相手の首筋に向かう。そのまま首を飛ばす。


「……」


 ただ無言で、()()()()()


「え?」


 直後、ザブラの体は宙を舞った。


「【首を絞めろ】!!」


 その後、ラブカが血を吐いた。何故か?


「がっ…ゴハッ……」


 当然、『呪言』の反動。それもあるが、一番の理由は彼女の体に容赦無く、彼の腕が貫かれていたからである。


「……」


 史上最強の人間が、“竜人”となって蘇った。

『正義』について。


ここでは多くを語りませんが、大雑把な能力は『特定条件下における無敵状態の持続』です。


この『特定条件下』っていうのがあるせいで『正義』のアルカナは一人しか使えませんでした。文字通り後にも先にもこいつ一人だけです。『正義』を使えたのは、マジで


『世界』や『審判』がチートと言うなら、『正義』はバグのような物です。“悲嘆”にはまぁ負けますね

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