『龍災』『衰』とベアルと笑いと感謝
ーー初めは、聞き間違いだと思った。
は は
は
は
は
は
は
は
は
は!!
『衰』の顔に初めて、驚きの表情が映る。動けぬまま落下しながら、『衰』は自身の体が震えていることに気がついた。
これまで全ての戦いを無傷でしかも、戦闘ともいえるような事をして来なかった『衰』だが、ここに来て人生初の“狂気”を感じ取った。
(コレが“人間”ダと、イッテいイノか?)
ベアルの事をおよそ人外のナニカと『衰』は判断する。ベアルにラリアットを極められる様な体勢で地面に落ちて行く。
ーー景色が縦に流れていき、伸ばされていく。徐々に地平線と空が混ざり合い、もう何が何か分からなくなってしまった。
すると、代わりにと言わんばかりに、ふと昔の事が溢れてくる。俗に言う走馬灯のような現象が『衰』だけで無くベアルにも似たような事が起きていた。
耳鳴りが爆ぜ、世界が引き伸ばされる。
上下も距離もなくなり、ただ意識だけが遠のいていく──。
『ハァ……『衰』、いつか死ぬ時どの様に死にたいですか?』
夜空に浮かぶ満遍の星を眺めていた時、不意にそんな質問をされた。
『衰』が座っていた芝生に、わざとらしく隣に座る人物。唯一【衰退者】の権能を受けて尚、平然とする者。
もう今は、行方を眩まし生死すら分かってない十二連星の一位、『死』との最後の会話。
自身は死なない癖に何を聞くかと、それに自分が死ぬ事を想像出来なかった当時は答えを出す事は無くただ黙って、そのまま『死』は何処かに行ってしまった。
何気のない、簡単な質問。人それぞれが答えを持ってるような、そんな質問。
それをただ、『衰』は文字通り時間が許す限り考え続けた。
不老であるアルカナの一部である自身は、何世紀も考えて……答えは出なかった。
特段、誇れるような何かをしたわけでは無く、ただ敵を殲滅して自身の平穏を脅かさんとする者を、毎日のようにチリに変え続けた。
だからこそ、分からなくなった。『死』が何か、何故人は死で何かを残そうとする?死んだ先に何がある?
“星”のアルカナから分離して十数世紀。長く生きすぎた故、命を軽く感じてしまう“死”に対しての偏見。
苦しんだ先に、耐え抜いた先に、食いしばった先に、待ち受けるは救いでも無い、無慈悲な死と言う“虚無”のみ。
永遠とも思える時間、何世紀もかけ考え続けた『死』とは何か……今はただ、そんな事どうでもいい程、落ちて日の光しか見えずとも、遠のいていく空は美しいと『衰』は思った。
「嗚呼……たのしかった!」
誰かに言ったわけでは無い、誰かが聞こえたわけでは無い。ただ彼が『死』について考えるのには時間が経ち過ぎただけだった。
やはり、『衰』の顔には満面の笑みが浮かんでいた。
グシャリッ!!………
「あー、危なかったぁ〜」
『衰』の潰れた亡骸が、ボロボロと崩れ去り謎の輝いている部分がベアルに吸い込まれるように、ベアルの体の中に吸い込まれた。
当然。ベアルも落下死したわけだが、【嫉妬の王】によって蘇生され何事もなかったかのようにその場に寝そべった。
そして、『衰』が潰れた後をふと横目で見て同じように空を見上げて……
「どういたしまして」
ただ一人に向かって、その言葉を贈った。
はい!今回の解説は『衰』や『病』『胎』などの十二連星についてです。
これらは、“星”のアルカナから分離した存在です。
さて、ここであなたは「アルカナなら、ベアルの攻撃とか無駄じゃね?」と思ったでしょう。でもそのアルカナの特権でもある、『アルカナ保持者、使用者は同じアルカナで無ければダメージを与えられ無い』ですが、これは“星”のアルカナの場合少し変わります。
“星”の場合、全ての分離した“星”を集めて元のアルカナとしての“星”に戻した場合に限りです。
つまり、十二連星の状態だと“星”の力を分散してるわけだから、無効化の適応外というわけで攻撃が通ると言う理屈です。




