『龍災』“竜人”
タイトルに“竜人”ってあるけど、特に関係無いです。ごめんなさい
“竜人”とは何か?
その問いをかけられた時、ルシファーはこう答えた。
ーー“出来損ない”と
魔境、五階から発生した『星』のアルカナの一端。『胎』は勢いは衰える事なく魔物を排出し続けている。
その光景を純白の羽を羽ばたかせ、ルシファーは魔法とかつての天使としての力を使う。
「こっちは、久しぶりだな……」
ーー天使族のみが扱える『神力』と呼ばれる異能がある。
この能力を一言で表すなら、“中和”である。天使たちの個人差はあれど共通しているのは、権能、スキルの効果関係なく一定のダメージを与えることができる。さらに、『神力』単体だけでなく、魔法やスキルと併用して扱うことも出来る。
だが、この『神力』には致命的な弱点があり、それは、一定のダメージが低くいという事だ。
本来なら敵にダメージを与えるところを、“中和”で使ってしまうため必然的に与えるダメージが低くなるのだ。まぁ、傲慢の王には関係無いが。
「消え失せろ……雑魚が」
一度、空を覆うように『一等星』を展開する。その後『一等星』を極限にまで“圧縮”する。見えなくなるまで。その後できた隙間に再度『一等星』を展開、“圧縮”し、魔法を隙間なく敷き詰める。
何度も繰り返し、やがて“圧縮”した『一等星』が空を覆っていた。最初の空を覆った魔法の弾幕と違うのは、上を見た時空に特に変化は無いのだ。
僅かに明るい。“圧縮”した魔法からほんの少し漏れる光が空を微かに明るくする。それしか違いが無かった。
「『一等星』【万雷】」
かの『魔術師』を名乗った男よりも、密度はかなり低い。それでも産み出さられる有象無象を殲滅するには過敏過ぎる技である。
最初の攻撃の時、ルシファーは『胎』を含めて、生み出された魔物に対して、同じように『一等星』を放った。
魔物を完全に消し飛ばす威力で放ったにも関わらず、残ったのはほとんど原型を保った魔物の遺体。
これから、少なからず『衰』の権能が『胎』と『胎』が産み出す魔物にも効果があると理解した。
そう思考し、ルシファーが考えたのは『一等星』と『神力』を複合したものを“圧縮”し威力を上げ、さらにできた隙間に何十個も同じ魔法を詰める。
繰り出される魔法が、ただ全体に降り注ぐのではなく雷のように一点に集まって、数千本が群れに降り注ぐ。『衰』の権能の効果を、【衰弱者】の効果を大幅に凌駕する“質量”での攻撃。
次々と魔物が焼かれ、チリになって行く。ただ残念なことに『胎』には余程分厚く【衰弱者】の効果がかかっているのか、軽傷しか与える事ができなかった。
「あそこは、やはり効果の密度が高いな。さて……」
軽傷程度しか与えられなかったのを見て、少し落胆するもすぐ次の行動に移る。
一帯の魔物を塵に変え、侵攻跡はあるが周囲に誰もいない更地にルシファーは羽を消して降り立つ。
産み出した魔物のほとんどを消し飛ばしたと言うのに、既に母体である『胎』の周囲には大量の魔物が『胎』を守るように群がっている。
ルシファーは静かに指を構え、呟いた。
「『一等星』」
さっき放った魔法、『一等星』。直線軌道を描く極光とは違い、『一等星』は曲がった軌道で相手を狙う。
そして、一時的に『神力』が使えなくなる事を条件に、天使の一部しか扱えない『神力』を極限にまで鍛え練り上げた者にしか発現しない。その名は……
「ーー神ぐ」
「そこまでだ」
掴まれた。いや、ただ掴まれただけなら何も問題は無い。だが掴まれて初めてその存在に気付いた事。
しばらく。情報の処理が間に合わず、その場に硬直してしまう。相手は、長さが不揃いな黒髪で肩からローブで体全体を覆っていて、年齢は二十四から二十五歳と思われる。
展開しかけた魔法をやめ、その人物から大きく距離を取る。
「成程……天使か。これは、珍しい」
重く、少し低い声で、堅苦しい口調で話す。手を握って離すを繰り返し、じっとこちらを見ている。
ルシファーは困惑していた。
(どうやってここまで、接近したというのか?そもそもこいつは……)
「まさかとは思うが……人間か?」
「あぁ、そうだ。色々あるが、『支配の王』それが一応、俺の名だ」
「『支配の王』だと?……ありえない」
その名を聞いた時、ルシファーの顔にはある一種の恐怖が湧いた。なんせ『支配の王』などという人間は……
「既に……死んでる、はずだろう?」
『支配の王』
そう呼ばれる王がいたのは、今から数百年も昔。名の通り、世界の国々のほとんどを支配下に置いた超大国の王。
そして……人間でありながら、数多の“王”を殺した者。その数は“悲嘆”ですら超えられない数だと言われている。
しかし、彼が持つスキルの危険性を危惧した天使達によって、彼の国は一夜にして滅んだとされる。
(ありえない)
ルシファーは精一杯頭を回すが、今置かれている状況の整理が中々つかない。
「ーー、俺の能力は『“王”のスキルを持つ者の攻撃を無効にする』と言う物だ」
口を開いたかと思えば、いきなり自身の能力を喋ってきた、ルシファーはまたポカンと口を開けている。
「ん?どうかしたのか?」
ドミニオンが首を傾げ、ルシファーに問いかける。その表情は堂々としていた。
「何故……急に、自身の能力を?」
それを聞くと、ドミニオンは何か合点がいった様子でこう答えた。
「かなり前から、お前の戦いを見ていてな。お前の手の内を知ってるのに、お前だけ知らないのは平等では無いからな」
「そんな事で……」
「いや、貴様舐めてるのか?」
先程まであった、呆れとほうけた様子は無くなり、一人の“王”として、代わりに殺気が溢れかえる。
「そんなつもりは無いのだが……まぁ仕方ない」
「我を、舐めるなよ?ニンゲン風情が」
“傲慢”と“支配”の二人の王の戦いの火蓋が切られた。




