『龍災』【墓標】
「なぁ、カフジエル【墓標剣】ってあるじゃん。アレってさ何なの?」
怠堕の国で、『龍災』に対する会議が終わった後。一度帰って来た時ふと、ベアルが口にした言葉。
カフジエルは悩むそぶりをした後、口を開いて答えた。
「【墓標剣】については私も聞き齧った程度の事しか知らないわよ?」
「おう。それでも全然ええよ」
「……そう」
唱えた言葉は、
曰く、その剣は『恋炎』『儀魂』『光刃』『禁錮』『閻魔』五つあると。
曰く、その剣に鞘は存在しないと。
曰く、その剣は人の体の一部であると。
曰く、五本のうち、三本は封印されていると。
曰く、その剣には……守征十二柱がいると。
曰く、ある人はそれを“呪い”と。ある人はそれを“証明”と。ある人はそれを“軌跡”と呼んだ……
「私に従え!『禁錮剣』!!」
戦場にて数百年の封印を経て、再び放たれた【墓標剣】の一振り。
『禁錮剣』に封じられたアルカナは、“力
”自身が望んだ力を際限なく取り込める。それがこの剣の能力である。
『雷帝の王』はその妖艶な刀を見て、すぐさま自身のスキル【雷鳴の慟哭】を使い、剣を構える。雷の速度で狙うはカフジエルの首元。
その剣はあっさりと空振った。
その時、はるか彼方で轟音が響いた。
その音は、カフジエルが地面に不時着した音だった。
不時着した地面は、大きく抉れ辺りには、グチャグチャになった肉片と内臓が互いに混ざり合い、原型を留めてなく、カフジエルの血がバケツをひっくり返したかのように散らばっていた。
それでも、手は『禁錮剣』を離さず、握り続け『禁錮剣』自身も一切の刃こぼれはおろか、傷一つ付いていなかった。
「……自滅?」
『雷帝の王』が首を傾げ、確認しに行ったその時
グシャ
その時、彼の背筋に雷とは違う、謎の怖気が通り過ぎた。
カフジエルの肉片が繋がり始めた、撒き散らしていた血液が体に戻って行く、それも驚異的なスピードで。
まるで、親を見つけて、嬉しそうな表情をして寄って来る子供のように戻る。肉が異音を奏でながら繋がり、内臓が何食わぬ顔で戻って行く。
「これは……ちょっとヤバいっすね」
念の為、もう一度言おう。
カフジエルが持っている【墓標剣】の一つ。『禁錮剣』は“自身が望んだ力を際限なく取り込める”
つまり、この時カフジエルが地面に激突し、肉片に変わる前に望んだ“力”が【再生能力】なら?
ぶつかる寸前。その時、彼女が『死にたくない』と思ったら?
際限なく再生し続ける。バラバラになった体が、血液が、内臓が、破れて塵に変わった服までもが、何事もなかったようにそこに在った。
「やっぱり失敗か……制御すらままならないわね」
自虐的に笑う。
笑ったのだ、何も変なことではない。
人は、願いが叶った時笑うもの、嬉しいものなのだ。だから剣は応えるのだ。
ーー人の笑顔が好きだから
持ち主が願えば、それは必ず現実になる。いかに非現実的なもの、非人道的なものでも叶えてしまうこの剣は、禁忌的な扱いを受けた。故に『禁錮剣』
「次は……出来るかしら?」
彼女はまた『禁錮剣』を構えて、刀身が揺らぐ。空間が捻じ曲がってるかのように。カフジエルはただ、真っ直ぐ。
ただ真っ直ぐとこちらを見つめていた。
ーーどこかで、道化師の清々しい笑い声が聞こえる。




