3000pv突破記念『黒鉄戦士の冒険録〜シラナイ異世界でがんばって、生き延びようと思います〜』
何話か、続けて書くのでご容赦ください。
ある意味IFルートです。
ーーそこはただ、真っ白な空間だった。
見渡す限りの“無”。風も音も無く、ただあるのは自分という感覚のみ。
テンプレ通りなら女神やら神様がいて、転生したのなんだのと話をするんだろう。
それが目の前にいるのは、本を読む男性一人だった。
簡素な椅子と机。座っている男の後ろには、十冊程度の本が置かれた小さな本棚。
「ん?あぁ君か、ちょっと待っててくれないかい……もう直ぐ読み終えるからさ」
こちらに気づいたと思えば、開口一番がコレである。
こちらに目もくれず、読む手は止まる事なくページを次々とめくり、やがて読み終えたのか本を閉じた。
「終わった?のか」
「ごめんね、待たせてしまって申し訳ない。やっぱり良いね、人が書いた物語は、その人その人と癖や世界観が楽しめる。でも、ここに来る本は珍しいからね、大切にしないと」
「あ、あのーそろそろ話をしたいのですけど……」
恐る恐る手を挙げて、このままでは永遠に話し続けるのではないかと思ったため、話を戻そうとする。
「……すまない。少し調子に乗りすぎたね」
「話を戻そう。君は何故ここに来たんだい?」
目の前の男にそう聞かれ、首を傾げる。
「貴方は神様なんじゃないんですか?」
そう聞き返した瞬間、彼の顔から表情が消える。
少し間を開けて彼は腹を抱え、大いに笑い出した。
「違う違う、僕はここに閉じ込められてるんだよ、神を殺した罪でね」
「だからおそらく、君は僕の事を神と勘違いしたのかな?逆だよ逆。僕は神の天敵?みたいな感じかな」
「神の天敵?」
「うん、そうだよ。僕はね、強すぎたんだよ、それこそ『世界』から消される程にね」
「そ、そんなにですか……」
「あぁ、そんなにだよ」
男は振り向き、机のほうに向かう。先程読み終えた本を手に取り、本棚に入れる。
「まぁ、ここに来たって事は、資格があるんだろうね。僕の“現し身”としての」
「“現し身”ですか?」
あまり聞きなれない単語に、戸惑いながらその言葉の意味を彼に問いただす。
「そのままの意味だね……今はもう精神的存在になった“六王”が現世で活動する為に必要な体かな?」
本の整理を終え、こちらを向いてそう答える。今度は全く別の表紙を見るに一番古そうな本を手に取っている。
「これで二人目だよ、僕の“現し身”は。なんせ僕の能力はかなり扱いが難しいし、“現し身”の相性云々より精神性とか血縁関係が問われるからね、僕の能力」
「そうなんですね……あのそれじゃあ、私の意思はどうなるんでしょうか?」
縮こまって、オドオドしながら手を挙げる。彼の体は今、子鹿のように足が震えている。
「んー、語弊されやすいけど、基本的に君が思ってるような乗っ取る行為は出来ないね。少し思考が引っ張られたりする程度かな?」
良かったと、安堵のため息を吐いた。それを見た目の前の男は顔をニコニコとして、近づいてくる。
「それじゃあ自己紹介しようか!僕の名前は怠堕の王だよ、よろしくね!」
「あ、あぁはい。よろしくお願いします」
差し伸ばされた手をしっかりと握り返す。その様子を見たベルフェゴールの体は徐々に薄れて行く。どうやら時間のようらしい。
「……それじゃあ、頑張って生き抜いてよね。そうそう、君に能力と目的を言ってなかったね」
ベルフェゴールの体が消えかかる瞬間、その言葉に耳を疑った。
「目的はね……ある女の子を守って欲しい。そして肝心の能力はーー」
「“死に戻り”だよ、ちょっと特別製だけどね」




