第一波 “災害”は待ってはくれない
“衰”と“胎”が顕現した影響により、“胎”の周辺には既存の魔物とは似ても似つかぬ“異形”の怪物達が“魔境”を埋め尽くす勢いで、進軍を開始する。
『龍災』発生から約十秒後。
転移魔法の閃光と共に、“傲慢の王”が最前線上空に姿を現した。
「やはり来るか……『一等星』」
“胎”が産み出す群れに上空から、一面の空を埋め尽くす程の極光が繰り出される。
全てを焼き尽くす極光が、容赦なく敵を撃ち抜き、無力化していく。そして、みるみるうちに敵の数を減らしていく。
だがここでルシファーは、ある違和感を感じる。
(何故、原型が残っているのだ?)
『一等星』と総称される魔法がある。
ある人物が使っていた技術を魔法化したもので、使い手の練度によって威力が大きく変化する。
あの瞬間、ルシファーは確実に敵を消し飛ばすつもりで『一等星』を放ったにも関わらず、死体が残っているのだ。
(無力化した事には変わらないが、嫌な予感がする)
ハッと、何かに気づいてすぐに念話魔法を発動する。
「オイ、暴食の王」
『何ですか?僕は今そっちに向かっていますけど?』
「あぁ、その事だが」
『何です?』
グーラに頼んでいた、約五百の兵士。その足跡が魔法ごしでもしっかりと聞こえる。
「ーー今すぐ地上に行け。カフジエル達が危ない」
地上、ルイラ皇国に居るベアルとカフジエル。
リシュナとラブカ達との交渉中に、それが起こった。
「失礼します!!」
兵士が会議室のドアを勢いよく開け、部屋に破裂音が鳴り響く。
「どう……なされたのですか?」
リシュナが困惑した様子で聞き返す。すると、入って来た兵士が口にしたのは……
「はいっ!!西の城門からの報告で、異常値の魔力を確認しました!恐らくですが『龍災』の第一波がこちらに真っ直ぐ進軍しているとの報告です!」
その報告を聞いた瞬間だった……
「ちょ〜っと失礼しやすよ?」
壁を突き破り、光と轟音を立てて机の上に立つ男。
「カフジエルッ!!!!」
ーー誰も反応出来なかった、その場からカフジエルが吹き飛ばされ、気づいた時には皇国の城門を越えて草原に打ち付けられていた。
「お前さんがおると、邪魔なもんなんでね。足止めさせていただきますよ?」
『雷帝の王』の拳が、雷の速度で振り抜かれる。そのままカフジエルは轟音と閃光に包まれてしまう……はずだった。
「ーー『希望強化』。軽いのよ、アンタの拳」
「およ?」
『雷帝の王』のパンチを片手で押さえており、そしてお返しと言わんばかりに、反対の手で『雷帝の王』の顔面にカウンターが入った。
「カフジエルッ!!!!」
手を伸ばし、カフジエルの手を掴もうとするが失敗し、そのまま連れ去られてしまった。
通ったであろう道は、溶けており街を貫通していた。
ベアル達が話していた部屋も、机と彼が入って来たと思う場所が溶けており、少し焦げている匂いが充満していた。
「クソッ!!」
「至急!カフジエル様と侵入者の追跡を!!他の『四卿』にも連絡を入れて下さい!」
リシュナの声が全員の意識を元に戻し、次の動きを始めた。
「……あの、リシュナさん?」
「えぇ、分かっています。同盟の事についてですが……」
「別に良いよ」
「へ?」
リシュナはほうけた顔でポッカリ開いた口から間抜けた声が出た。
「そもそも俺は、魔境で強欲の国の守護に回る予定だったんだけどさ、実は強欲の国は魔境の中で一番地上に近い所なんだってよ」
ベアルは椅子から立ち上がり、屈伸などの準備運動をし始めた。
「まぁ、魔境の方は何となくルシファーがどうにかしそうだし。俺は、多分こっちの方がいい」
最後に軽くジャンプして、準備運動を終わらせる。右手には青白く輝く魔剣が握られていた。
「それじゃあ……行ってくる」
『龍災』第一波、始動




