『塔』
遅れてすいません。皆さん体調には気をつけてください。
「……予想以上でしたわね。この男」
リシュナが疲労感が濃い表情で、そう呟いた。
フェルを封じ込むことに成功した二人は、重い足取りで片付けが終わった部屋を出た。
「そうですね、なんせ彼も一応守征二十一柱の一つを使用していますからね」
『愛』の四卿が淡々とした口調で語る。
「偵察のために送り込んだ『悪魔』をあの男は、殺すことができたので、どれかの能力は持っているのでしょう」
「少し待って下さい、その……アルカナ?を持っていると何が違うんですか?」
まったく聞き覚えのない言葉の羅列。アルカナという単語も今初めて聞いた言葉である。
「守征二十一柱の使用者と保持者はアルカナ以外の攻撃を受け付けないという特性を持っているのですよ」
その言葉にリシュナは驚きつつも、同時に疑問が浮かび上がる。
「それならどうして私の能力や、貴女の『呪言』が通じるの?」
思い出されるは先程の戦闘。右手が厄介だと事前に聞いていたため、スキルで対処したがそれでも今の話が本当だとすると、右手は消えることなく健在のままだったはず。
「えぇ、そうですよ。攻撃だけ通らないんです。貴女の力や私の『呪言』のような“概念的な行為”は攻撃ではありませんから」
「そう……ですか……」
自身ありげに話す彼女の姿には、確かに納得する理由も根拠もある。だがリシュナの胸には、謎の違和感がただうっすらと残っていた。
右腕は触れた相手の権能を破壊する。ならあの左腕には、何があるのか?リシュナの問いが明かされるのは、先の事である。
初めて見た感想は、無駄にデケェなこの建物だった。
「おい、カフジエル。こん中にフェルがいるんだよな?」
「え、えぇそのはずなんだけど……見つかるかなこれ」
巨大な城をのような教会の威容に、二人とも息を呑んだ。
意を決して中に入ろうとすると、いきなりドアが鈍い音を立てゆっくり開いた。
出て来たのは、二人の女性だった。片方は俺やカフジエルとあまり変わらないような見た目の子と、俺たちよりも年上のような外見で真っ白な軍服をきて、揃って出て来た。
その瞬間、空気が沈んだ。自然と肺の中身を全て吐き出してしまう程の重圧。
ベアルは臨戦態勢に入り、カフジエルは腰の三本の剣の内一本に手を伸ばす。そんな二人を見て疑問に思ったのか、同い年の少女がゆったりとした口調で話しかけて来た。
「あら、こんにちは……まさかそちらから来て下さるなんて、嬉しい限りですわね」
耳からするりと入って来た言葉の音色にベアルは、強い違和感と危機を。そしてなぜか既視感を感じていた。
「そちらのお姉さんは、剣を下ろしてください。ここでは戦う気はありませんので」
と、両手をヒラヒラと上げて戦う意志はないとアピールする。
それを見てもカフジエルは腰の一本を未だに手を置いて真っすぐ彼女をじっと捉えていた
ーーいつでも能力を発動させ、迎撃するために。
そしてカフジエルにやっていた目線を今度はベアルに向けると
「お兄さんは……今スキルを使おうとしましたね?再三申し上げますが、今の私に戦う気はありません。話し合いに来たのですよ、なので安心してください」
「悪いね、生憎今のあんたには、信用する要素がどこにも無いんだけど?それに、先ずは名乗れよそれが最初だろ?」
この謎のプレッシャーに耐えて、何とか反論をする。何をするにしても、彼女は怪し過ぎる。
「確かに、それはこちらが失礼しました。では改めて私の名前は、リシュナと申します。以後お見知り置きを」
その場に不穏な空気が漂っていた。




